2023年4月にTVアニメ『神無き世界のカミサマ活動』のシアン役で声優デビューを果たし、同作のオープニングテーマ「I wish」でソロアーティストとしての活動もスタートさせた、来栖りん。3月12日(火)に2nd写真集『step by step』の発売を控える中、あらためて新しい世界での1年目を振り返ってもらおう。

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「とにかく初めて経験することばかりでしたし、自分が声優、そしてソロアーティストとしてデビューをすることについても、当初はいまいち実感がない状態でした。でも、いざ『神無き世界のカミサマ活動』の放送が始まったら、オープニングではアニメーションと一緒に私の歌が流れてくるし、劇中では自分が初めて挑戦した声の演技でキャラクターが動いている。そこで、自分はソロアーティストとしてスタートしたんだ、声優デビューしたんだと実感できました。本当にすごくうれしかったですし、自分はもともとアニメが大好きなので衝撃的な感覚もありました。『うわ! 大好きなアニメの世界で私の声が、私の歌が流れてる』って(笑)」

■ここで勝負したいって決めた場所で褒めていただいたことに、何とも言えない喜びがありました

かつては、“アイドルグループのセンターとして活躍していた。

「アイドルは好きでやっていたんですけど、グループが解散することになって、どうしようかって考えたときに、アイドル時代もその前も、本当に幼い頃から支えられてきたアニメやゲームの世界に興味を惹かれたんです。そして今、こうして声のお仕事をさせていただくようになって。でも、今はまだ自分の努力も実力も追いついていないなと思うことも多くて、お仕事に対する恐怖心やプレッシャーもあります。だから、そういう気持ちをなくしていって、いろんな意味で地に足をつけないといけないです。いつまでもワタワタしていられないですし、自信を持って自分が演じるキャラクターをお届けしないといけないですから。正直、周りから『元アイドルが声優?』という目で見られることもあります。これからは、その先入観を覆していけるように。むしろ、『アイドルだったのに、声の演技もこんなにできるんだね』と言ってもらえるように、必死に頑張っていくしかないです」

そんな彼女にとって、声で演じる世界はとてもやさしく、なおかつ自身にとってプラスに働くことが非常に多いようだ。

「まず、いろんなスタッフさんがこんなに丁寧に教えてくれるものなんだなと思いました。それがすごくうれしいし、ありがたいです。そして何よりうれしかったのは、ゲームアプリの『ワールドダイスター 夢のステラリウム』に倫子役で出演させていただいたとき、SNSで『倫子ちゃんがいいけどCVは誰?』とか『倫子ちゃん、来栖りんさんなの? めっちゃいい!』という投稿を見つけたときでした。声から見つけていただくことが初めてで、自分がここで勝負したいって決めた場所で褒めていただいたことに、何とも言えない喜びがありました。これからもそういう声をいただく機会を増やせたら自信につながると思うし、そんな機会を増やすためにもいただくお仕事に決してあぐらをかかず、しっかり頑張って実力をつけていかないとまずいなって、気が引き締まりましたね」

■お芝居を深く学ぶことが今の目標です

声優/ソロアーティストとして活動を始めたことで、メンタルにも変化があった。

「メンタルが少しは強くなったかなと思っています。もともとは、ものすごく弱いんですけどね(笑)。前は、10のうち9がお褒めの言葉で1が批判でも、1の批判にばっかり目が行きがちだったんです。それはたぶん、アイドルとしてキャリアを重ねて、評価もいただいているプライドがあったから。でも、今は声優としてもソロアーティストとしても新人も新人。できないってわかっているからこそ、マイナスの意見も養分として受け入れられます。お芝居に率直な意見をいただいて、『違和感があった』と言われると、素直に『違和感があったのはどうしてだろう?』と考えて、もっと学ぼうという気持ちになります」

プライベートでも変化があったと彼女は話す。

「今のお仕事に関することに時間を使うことが増えました。先輩の作品を見るとか、配信を見てどんなお喋りをしているんだろうとチェックしたりとか。もともと好きな世界なので、そうやってプライベートの時間を使ってもまったく苦ではないです。むしろ、プライベートの時間も楽しく過ごせているなと思います。あとは、同じ事務所の坂倉花ちゃんと一緒にご飯に行って、いろんな話をしたり。悩みを言い合ったりもしますけど、彼女は頑張り屋さんなので、帰り道に『頑張ります!』とか言われると、私も頑張らないとなって思えます。性格的にも同じ思いを共有する人が近くにいないとダメなんですよね。一緒に頑張る人がいると支えになるし、もっと頑張ろうって思います」

新しい世界に飛び込んで1年目の来栖りんは、もちろん大きな夢をその胸に抱いている。

「すごく大きな夢は、アニメで主演を務めさせていただくこと。ゲームも好きなので、自分が好きなゲームのボイスをやってみたいなとも思います。でも、1番大きな夢というか目標は、お芝居を深く学ぶことです。例えば、『リコリス・リコイル』の(錦木)千束ちゃんって、ひとつのセリフを聞いただけで千束ちゃんだってわかる特徴があって、この声優さんにしかできない演技だなって思うんですよ。そういう声優さんになりたいので、私にしかできない表現ができるようになりたいんです」

(取材・文/大久保和則)

アイドルから声優・ソロアーティストの道を歩み始めた来栖りん/撮影/梁瀬玉実