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 16世紀のスペイン探検家、フランシスコ・バスケス・デ・コロナドが率いた伝説の遠征隊が残していった可能性のある黒曜石の刃物が発見された。

 アメリカ、テキサス州回廊地帯で発見されたとみられる緑がかった黒曜石の刃は、コロナド遠征隊の謎に包まれたルートを解明する鍵となるかもしれない。

【画像】 メキシコ原産の黒曜石でできた刃物

 この鋭利な道具の由来はよくわかっていないが、使われている黒曜石の化学分析から、この遠征に参加していた多くの先住民が原料を入手していた中央メキシコのシエラ・デ・パチューカ山脈産のものであることがはっきりした。

 コロナドと同行していた先住民メキシコでこの刃を作り、その後テキサス州で廃棄した可能性がある。ここからコロナド隊がテキサス州を通過した正確なルートを特定するのに役立つかもしれない。

1541年にコロナドがテキサス州回廊地帯を通過した正確なルートははっきりしていないが、現在はマクリーン、またはその近くを通過したと理解されている

 と『NorthTexas Archeological Society』誌に発表された論文にはこう書かれている。

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テキサス州回廊地帯で発見された可能性のある黒曜石の刃物 / image credit:

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 この長さ6.5cmの黒曜石の刃物はロイド・アーウィン氏(1920~1992年)が持っていたものだ。

 彼はマクリーンの北にある家族の牧場で、少年の頃から先住民や歴史的な遺物を収集していた。しかし彼はこの刃に関してなんのメモも残していないため、いつどこでこれを手に入れたのかは不明だ。

 おそらく彼のほかの遺物コレクションと同じように、マクリーン近くのテキサス州回廊地帯で見つけた可能性が高い。

黄金の七都市を探すために派遣されたコロナド遠征隊

 言い伝えによると、フランシスコ・バスケス・デ・コロナド率いるコロナド遠征隊は、伝説だった黄金のシボラの七都市を探すようスペイン王から派遣されたという。

 今日、遠征を命じたのは、新スペイン(現在のメキシコ)の総督アントニオ・デ・メンドーサだったと歴史家たちは指摘している。

 約300人のスペイン人兵士と数百人の先住民の同盟者、ネイティヴ・アメリカンなど少なくとも2800人でで構成された遠征隊は1540年から1542年まで、メキシコ、テキサス、ニューメキシコアリゾナオクラホマ、カンサスを探索した。

 だが、コロナドたちは現在のカンサス州へまで行って、結局、成果なく戻ってきた。

 実際には、メンドーサはコロナドにアジアへのルート探す任務を与えていた可能性があると、ニューメキシコ大学の研究員であるリチャード・フリント氏とシャーリー・クッシング・フリント氏夫妻は語る。

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コロナド隊の遠征経路が再現されたグレートプレーンズ南部の地図 / image credit:SMU

コロナド隊がテキサス州回廊地帯を通った可能性を示すもの

 黒曜石の刃は脆いため、よく廃棄されたという。そして見つかった刃は、もともとは柄のついたナイフかカミソリの刃とみられ、これを持参した隊員によって北へと運ばれたと考えられている。

 質素で小さなこの遺物は、コロナド隊がテキサス州回廊地帯を通ったという説得力のある証拠の要件をすべて満たしていると、研究共著者で南メソジスト大学の人類学者マシュー・ブーランジェ氏は述べている。

 ブーランジェ氏は、ロイド・アーウィンの義理の娘シャーリーアーウィンと共にこの研究を行った。

 物体の元素組成を決定する非侵襲技術、蛍光X線(XRF)分光分析によって、この刃はメキシコシティの北東90kmのところにある、メキシコ中部のシエラ・デ・パチューカ産の黒曜石で作られていることが明らかになった。

 メキシコ先住民であり、ナワトル語を話すナワ族などは、古くから黒曜石で道具を作っていたが、スペイン人の植民地になった後、その原料は鉄になった。

 当時、中央メキシコ先住民とテキサス州回廊地帯の間に交易ネットワークがあったという証拠はないため、この刃は交易ではなく、エントラーダ、つまりスペイン人による新天地への遠征によってテキサスに伝わったことがうかがえると専門家は指摘する。

 16~17世紀には、この地域へ遠征はほかにもあったが、コロナド隊の規模が最大で、多くの兵士も擁していたため、こうした黒曜石の刃を携帯していた可能性は高い。

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コロナド遠征隊 / image credit:public domain/wikimedia

 しかし、刃の起源がはっきりしないことを考えると、確かにこれがコロナド隊のものだったかどうかは断言できない。

もし本当にマクリーンで発見されたものであれば、遠征隊がとったルートはあの回廊地帯だという考えを裏付けるのに役立ちます。これはいい傾向です。証拠の刃はほかには見つかっていませんから

またフリント氏らはこう語る。

必ずしも同じ種類のものでなくても、コロナド遠征隊に関連する可能性のあるものがほかにも出てくれば、この発見はより説得力が増すでしょう。

これは、コロナド隊が数百年前にこのルートを通過したというしっかりした証拠を提供してくれる可能性があります

References:Central Mexican origin for an obsidian prismatic blade from the Texas Panhandle / Artifact Could be Linked to Spanish Explorer Coronado's Expedition Across Texas Panhandle / Obsidian blade could be from Coronado expedition fabled to be looking for 'Cities of Gold' | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo

 
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黄金の都市を探していたコロナド遠征隊のものと思われる黒曜石の刃を発見