JR中央線快速では2024年度末を目標に、現行の電車へグリーン車を2両増結し12両編成で運行すべく準備が進められています。12両化によりどんな変化があるのか、工事中の段階でも少しずつ明らかになってきました。

Suicaグリーン料金で50km圏内の区間は

JR中央線快速電車へのグリーン車導入の準備が目立つようになってきました。当初のJR東日本の発表では、2020年度から導入される予定でしたが、様々な工程調整などにより延期が繰り返され、導入見込みは2024年度末となっています。2023年夏からはグリーン車を組み込んだ編成の試運転も始まっています。

今回は利用者の目線で、グリーン車導入で変わることを見ていきたいと思います。

まずは定員の増加に関して。グリーン車(2階建て)は4、5号車に組み込まれ、現在の10両編成が12両編成となります。この2両(サロE233、サロE232)の合計座席数は180。現在の定員が約1500名(E233系の例)と考えると、ラッシュ時、1列車に2000人以上乗っている時では1割弱の混雑緩和となるわけです。

料金はどうでしょうか。2024年3月16日(土)に普通列車グリーン料金が改訂されます。Suicaグリーン料金なら50kmまでが750円(通常1010円)、100kmまでが1000円(同・1260円)です。

この料金体系が変わらないとすると、中央線快速線電車が乗り入れる青梅線(立川~青梅)を含め、50km以下料金の区間は東京~西八王子・羽村間、新宿~高尾・青梅間となります。

つまり中央線快速電車が走る大半の区間が50km圏といえるでしょう。また、東京~大月間は87.8kmなので、中央線快速電車の車両が走るすべての区間が100km以内となっています。そして12両化にあたり、多くの駅でホームの延伸工事が行われており、グリーン車導入後の状況が明らかになってきました。

駅の階段とグリーン車の停車位置の関係

注意しなければならない例として、御茶ノ水駅が挙げられます。現在は中央線快速総武線各駅停車両方の電車が10両編成なので、同じホームの向かいどうしでスムーズに乗り換えできます。ところが中央線快速電車のみ12両化されるので、同じホームの中央線快速の番線側だけ新宿方面に延伸工事がなされています。

グリーン車導入後、中央線快速から千葉方面の総武線各駅停車へ乗り換える際、後ろの2両に乗車していると、進行方向に1~2両分歩かねばならなくなります。延伸部分のホームの幅は狭く、急いでいる時など注意が必要でしょう。

一方、便利になるのは中央線快速電車新宿駅ホームです。現在、最も四ツ谷寄りの新南口階段でホームに降り立つと、上下線のホームとも停車している電車の前端または後端まで約50m離れています。ホームを延々と歩くのは、電車がすでに到着している時など急いでいる人にはかなりのストレスです。12両編成に長くなれば、電車が階段を下りてすぐの位置まで来るので、こうした事態は解消できます。

このほか駅ごとに気になるのは、「階段からホームに出たところがちょうどグリーン車の停車位置で、普通車のドアまで遠い」という不便な例が生まれるかどうかです。

それを知る手がかりになるものが2024年3月上旬現在、中央線快速の一部のホームに、まるで謎解きのように存在します。車両のドア位置を示す足元にある黄色の点字ブロックです。

たとえば中野~西荻窪間、武蔵境~武蔵小金井間の各駅や西国分寺駅などでは、車両のドア位置を示す点字ブロックが、すでにグリーン車2両連結の12両編成用として設置されています。グリーン車は1車両にドアが2つ(普通車は4つ)のため、ドア位置を示す点字ブロックの間隔が長いのですぐ分かります

ちなみに中央線快速電車とドア位置が異なる列車(特急「あずさ」など)が停車する駅のホームでは、今のところドア位置を示す点字ブロックは設置されていません。

富士山が再び見えるようになる駅とは

ドア位置を示す点字ブロックがあるホームで確認した限りでは、高円寺駅の上りで、ホームへの階段の位置がグリーン車2両の真ん中付近にあたっています。ただしこの階段は、ホームから改札への下りエスカレーターが併設されており、多くの乗客は別にある上りエスカレーター併設の階段を利用してホームへ向かっているので、この下りエスカレータに併設の階段を利用してホームへ向かう利用者は比較的少ないです。

そのほかの駅でも、階段の位置にグリーン車の車両端付近が停まる例はありますが、普通車のドアまでは近いものでした。

なお吉祥寺駅は、ドア位置を示す点字ブロックはありませんでしたが、新宿寄りのホーム端を延長していることから類推すると、高円寺駅と同様の状況になりそうです。

このほか青梅線東青梅駅では、線路用地の制約上ホームを延伸するにあたり、それまで1面2線だったホームが1面1線へと変更されています。これは柔軟なダイヤ設定の制約となるため、不便になりかねない例といえます。

一方、嬉しい例では国立駅が挙げられます。2010(平成22)年に上りホームが高架化された際、立川側のホーム端付近から富士山がよく見えるようになり、夕焼け空にシルエットとして優美に浮かぶ様子を撮る人が多くいました。それが近年、下りホームにできた壁などで遮られ、よく見えなくなっていたのですが、延長部分のホームから再び富士山がよく見えるようになりました。

国立駅ホームからは富士山のほか、雲取山(2017m:日本百名山 東京都最高峰)、丹沢山(1567m:日本百名山)、大山(1252m:関東百名山)といった名峰群が見渡せます。

グリーン車の2階からの車窓は普通車とはまた異なった味わいがあるでしょうから、早く乗車してみたいものです。

国分寺~西国分寺間を行くグリーン車を組み込んだ試運転電車(2024年2月、内田宗治撮影)。