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 残念なことに刑務所から釈放された前科者が、再犯で再び刑務所に戻る可能性は少なくない。特に犯罪が多発する地域では、出所後に厚生員などによるケアがなされていないため、お金に困ってまた犯罪を繰り返すことが起きがちだ。

 アメリカ・ニューヨーク州では、州刑務所を出た前科者たちの再犯防止を目的として、安定した生活につなげるための支援費用を増額する新法案を検討中だ。

 これが可決されれば、わずか半年の服役でも、受刑者たちは生活費として2600ドル(約38万円)の支援金を手にすることになるという。

【画像】 前科者の自立をうながすため、生活支援金を支給する法案

Bill proposal to pay inmates $2,600 after release

 ニューヨーク刑務所の受刑者は、同州オールバニで提出された新法案により、わずか半年の服役でも、生活費として2600ドル(約38万円)の支援金を手にすることが可能になるかもしれない。

 雇用機会センターによると、ビッグ・アップル選出の民主党議員ケビン・パーカー上院議員と共同提案者エディ・ギブス下院議員が提案するこの法案は、前科者に支給される「ゲート・マネー」の額を現在の40ドル(約5900円)から増額し、住居費、交通費、その他の費用に充てるというものだそうだ。

 現在、釈放時に支給されている40ドルは、獄中で差し押さえられた収入からのものだという。

 ギブス下院議員は、声明で次のように述べた。

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毎年、何千人もの受刑者が、着の身着のままで地域社会に戻ってきます。

これは単なる経済的支援ではありません。尊厳と安定、そして再犯の可能性を減らすためです。

この支援を提供することで、個人を援助するだけでなく地域社会の安全と繁栄に投資することになるのです。

この法が施行されれば、彼らに再犯の流れを変え社会復帰を成功させる道を開き、すべてのニューヨーカーが2度目のチャンスを得られるようにすることができるのです。

 元収監者に毎月425ドル(約63000円)を支給することを意味するこの法案を支援している、雇用機会センターのサムラ・ハイダー氏は、こうした取り組みが再犯を減らすことにつながると話している。

支援金額を増やして少し余裕を持たせることで、前科者たちを求職活動に専念させ、地域社会に再適応させることができます。

法案には賛否両論の声

 ジョージ・ボレッロ上院議員は、現時点では州は他の法案を優先すべきだと、この法案に異議を唱えている。

現金報酬の増額は、ニューヨークの与党民主党が続けている犯罪者への甘やかしのもう一つの例です。

私の同僚たちは、前科者たちが境遇の犠牲者だと考えているようですが、違うでしょう。

彼らはニューヨーク州で罪を犯すことを選んだのです。ニューヨークでは、犯罪は文字通り金になります。

刑務所を出るときにポケットにいくら入っているかが心配なら、最初から刑務所に入るようなことをしなければいいのです。

これでは、被害者や法を守る市民よりも、犯罪者を優先し続けているようなものです。

 刑務所での服役歴がある地域社会代替センターのイスマエル・ディアスジュニアさんは、「現在の40ドルでは社会復帰の助けにはならない」と話している。

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この40ドルという金額は50年以上も前から支給されているものです。50年前の40ドルは、今よりずっと価値があったのです
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ギブス議員自身も前科者だった

 実は、ギブス下院議員(53歳)は獄中生活を知っている。

 10代の頃、強盗に襲われたときに、正当防衛で銃を撃ったと主張したにもかかわらず、過失致死罪で3年以上服役した。

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 2022年1月18日、彼は服役経験のある州議会議員として特別選挙で初めて選出され、地元の公営住宅でシングルマザーとともに育ったのと同じイーストハーレム地区を代表している。

 ギブス下院議員は次のように主張している。

この経済状況では、その金額では食料品を買ったり、就職面接用の服を買ったりするのがやっとです。

釈放後の最初の72時間は、社会復帰の成功を左右する重要な時間です。

数か月の間に最大2550ドル(約38万円)まで増額することで、人々が潜在能力を最大限に発揮する機会を与えることができます。

これは単なる社会正義の法案ではなく、公共の安全のための法案です。

再犯を減らし、すべての人の安定と尊厳を確保したいのであれば、社会復帰する人々に真の支援を提供し始める必要があると思います。

 パーカー/ギブス法案では、受刑者は月425ドルを最長6か月間受け取ることになり、この金額が法制化された場合、毎年インフレ調整されることになる。

 しかし、現時点ではこの法案には支払い方法は明記されておらず、この資金がどのように使われるかを追跡するシステムもない。

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ゲートマネー・プログラムの一環として支援

 この法案は、「ゲートマネー・プログラム」という項目を追加することで、州の矯正法を改正しようとするものだ。

 このプログラムでは、借金を返済して矯正施設から釈放された受刑者は、6か月間で2550ドルを得ることができ、毎月分割して支払われる。

 この計画に必要な費用として、州一般会計から2500万ドル(約36億7600万円)を確保するよう議員たちは求めている。

 法案を支援している雇用機会センターのサム・シェーファー最高経営責任者(CEO)は、声明で次のように述べた。

一日分の食費にも満たない支給金額ではどうにもなりません。

時代遅れの "門前払い "の概念を、必要不可欠なニーズに対応するダイナミックな基金に置き換えることで、私たちは収監から帰宅するニューヨーカーの未来に投資するだけでなく、より安全で生産的な地域社会の創造を促進することができるのです。

私たちは、このアプローチが有効であることを知っています。

 ちなみに、擁護団体Center for Community Alternativesによると、工場などの売店や刑務所内の他の場所で働く受刑者の時給は、通常65セント(約95円)以下だそうだ。

 支給金額を増やすことで、果たして前科者の再犯防止のためとなるかどうか。現在も議論が繰り広げられている。

References:New York bill would offer $2,600 to inmates for support after prison/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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ニューヨーク州が出所後の受刑者に約40万円を支給する法案を検討、再犯防止のため