森敬斗

生き馬の目を抜くプロ野球の世界。1年経つとその景色がガラッと変わってしまうことは、決して珍しくはない。そんな現状を目の当たりにしているのが、2019年のドラフト1位・ベイスターズ森敬斗だろう。

 

■2023年は不調が続いた森敬斗

森敬斗は2023年、オープン戦19戦のすべてでショートのポジションで使われ続け、そのまま開幕スタメンに名を連ねた。しかしオープン戦でも打率は.135と調子が上がらなかったこともあり、奪うよりも与えられた側面が色濃く感じられたのも事実だ。

それを裏付けるように、シーズンに入っても2戦で1安打と結果を残せず、わずか2試合でスタメンを剥奪された。4月下旬にはついにファームに落とされ、再び昇格したのは交流戦真っ只中の6月中旬だったが、そこでも結果を残せず、この月いっぱいで登録抹消の憂き目にあった。

嫌な流れは続くもので、7月には右手の負傷で手術を受けるなど、ツキにも見放された感もあった。結局昨シーズンは9試合出場に留まりわずか2安打、打率も.167と燦々たる1年になってしまった。

 

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■すっかり変わった“立場”

昨年の1年でショートのポジションではルーキーの林琢真が台頭し、中日ドラゴンズから移籍してきた実績十分の京田陽太も奮闘。ベテランの大和も元気な中、今年はさらにドラフト4位のルーキー石上泰輝が猛アピールを続けるなど、沖縄の春季キャンプではポジション争いが加熱。一方、森はB班(二軍)の奄美スタートとなり、一軍のオープン戦に呼ばれたのは3月5日と大きく差が開いていた。

目の色を変えて挑んだ5日のゲームでは、ヒットを放つも牽制死と四球を得たのちの走塁で、アウトカウントを間違えるなどのプレーもあり、三浦大輔監督から「トータルではマイナスです」と評価されるなど、空回り感も拭えなかった。

 

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■求められるのは“必死さ”

そんななか6日にはセカンドでスタメン出場と、ついに守り抜いていたショートからの配置転換も経験。8日もスタメンとチャンスをもらい、3四球、1盗塁と徐々にではあるがアピールを続けた。

これには石井琢朗コーチも「ヒットを3本打つのもフォアボールを3つ取るのも、出塁することは同じ。ヒットを打つことだけが結果じゃない」と、高評価を与えた。森本人も「やっぱり出塁ですね」と、一軍で生き残る術を熟知。その先の盗塁にも「走力はウリなので、しっかりアピールしていきたい」と意気込んだ。

またセカンドの守備には「昨年の12月くらいからですかね。それまではやっていなかったんで難しいです。普通に捕って一塁に投げるのはショートのほうが難しいんですけど、まだゲッツースローもしていないですし、ピポットもやっていないので、これからですね」と、今後も研鑽を積むと公言。それには「出られるチャンスがあれば、どんな形でも出たいので」との熱い思いがこもっていた。

三浦監督も「いいものを持っている」と、そのポテンシャルを認める22歳の森敬斗。華やかなプレーに“必死さ”が加わったとき、プロスペクトはついに覚醒する。

 

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■執筆者プロフィール

萩原孝弘:1971年生まれ。生まれも育ちも横浜の生粋のハマっ子で、大洋が横浜に移転して以来、一貫してホエールズ〜ベイスターズファン。

23年のオフィシャルイヤーブックもライターとして参加した。あくまでもファン目線で、独自のインタビューコラムや記事を各媒体で執筆中。

【DeNA】セカンドにも挑戦中の森敬斗に備わった新武器 「チャンスがあればどんな形でも出たい」