昨年夏、英国人史上最高額の1億500万ポンド(約198億円)でアーセナルへやって来たイングランド代表MFデクラン・ライスは、ここまで期待を上回るパフォーマンスを披露し、既にミケル・アルテタ監督率いるチームに欠かせぬ存在となっている。

 アンカーや左インサイドハーフ(IH)として起用されているライスは、ここまで公式戦38試合に出場し6ゴール7アシストをマーク。屈強なフィジカルと豊富な運動量に裏打ちされたボール奪取力でチームを支えるだけでなく、得点やチャンスシーンに絡む動きも見せている。昨シーズンまでスイス代表MFグラニト・ジャカ(現:レヴァークーゼン)が担っていた敵陣ボックス内への動き出しも徐々に増加。直近2試合で決めた2ゴールは、いずれも右サイドからの折り返しにボックス内で合わせたものとなっている。

 かつてリヴァプールで長く活躍した元イングランド代表DFジェイミー・キャラガー氏は、イギリスメディア『スカイスポーツ』にて、攻守両面で存在感を放つ今シーズンのライスについて言及。「デクラン・ライスはオールラウンダーへの回帰を象徴していると思う」と前置きした上で、「最近の傾向では、彼はホールディングMF、彼は“8番”、彼は“10番”と定義されることが多い。しかし、彼は基本的にすべての役割をこなせるんだ。彼を起用したミケル・アルテタにも賛辞を送りたい」と、同選手の“万能性”を称賛している。

 また、アーセナルの“レジェンド”としても知られる元イングランド代表FWイアン・ライト氏は、ライスが攻撃面で存在感を放っている背景に、イタリア代表MFジョルジーニョの存在があると指摘。ライスのIHでの起用について「あのポジションでのライスを本当に気に入っている。ウェストハムでトマーシュ・ソウチェクがボールを保持していた時と同様で、左サイドを押し上げることができている」と語りつつ、次のように言葉を続けた。

「ジョルジーニョの不在時には彼は“6番”としてプレーし、上手くやっていたと思う。しかし、ボックス内に侵入して得点を決めることは、明らかに彼の強みだ。我々はそれを知っているし、ウェストハムでそれをやっているのを見た。ジョルジーニョのような試合をコントロールできる選手がいて、同じく試合をコントロールできるマルティン・ウーデゴーアと共にプレーさせる。そうすれば、デクランはゴール前に走り込み、ゴールを決める能力を得ることができるんだ」

 ライト氏が言及した通り、ジョルジーニョと併用された際のライスは、より広範囲に動き回り、得点力やボール奪取力といった特徴をより一層発揮できている印象だ。実際にゴールネットを揺らした直近のシェフィールド・ユナイテッド戦とブレントフォード戦では、アンカー起用されたジョルジーニョが中盤の底で攻守に渡ってバランスを取っている。

 加えて、ライト氏は「ダビド・ラヤ、デクラン・ライス、カイ・ハフェルツ。この3人との契約は大きな違いを生み出している」とも語り、ライスと共に昨年夏に加入したスペイン代表GKとドイツ代表FWのパフォーマンスにも賛辞を送っている。

アーセナルの中盤で存在感を放つ(左)ジョルジーニョと(右)ライス [写真]=Getty Images