カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

 このドローンに狙われたら否応なく地獄のサバイバルゲームに巻き込まれることとなる。顔認証技術でターゲットに指定されると、上空から忍び寄り、気が付いた時にはさっくりと暗殺されてしまうのだから。

 そんな凄腕のアサシンのようなAIドローンが、あるエンジニアによってわずか数時間で開発された。

 その人物は、このような恐ろしいドローンでも、専門知識があれば簡単に作れてしまうという事実を伝えるために実験的に作り、この脅威を未然に防ぐ対策が社会でほぼなされていないことに警告を鳴らしている。

【画像】 狙った人物を追跡し暗殺可能なドローンを数時間で開発

 起業家でエンジニアのルイス・ウェヌス氏は、あくまでも実験(お遊び)とした上で、特定の人を追跡する人工知能(AI)を小型ドローンに組み込んだと、3月2日にX(旧ツイッター)に投稿した。

 それはおもちゃのように小さなドローンだが、ちょっと手を加えれば、簡単に爆発物を搭載できることができる。

 そこでウェヌス氏は、やはりエンジニアであるロバート・ルコスコ氏と協力し、ドローンに物体検出モデルや顔認証モデルを組み込み、10m以内にいる特定の人物を見つけ、その人に接近できるようにした。

 つまりは、その気になれば、このドローンで特定の人物や標的を攻撃できるということだ。しかも、開発にかかったのはほんの数時間だけだ。

文字通り、ほんの数時間で組み立てた。その恐ろしさにびびったよ

これに少量の爆薬を抱えさせて、100機飛び回らせることだってわけない。イベントや公共の場では爆弾や銃がチェックされるが、ドローンについては何も対策されていない(ウェヌス氏)
1

オープンソース主義だがこのコードは公表しない

 ウェヌス氏は「オープンソース絶対主義者」を自称しており、コードやソフトウェアをオープンソースで共有することを信条としている。

 また「技術的加速主義者」も自認する。これは、例えデメリットがあったとしても、メリットはそれを必ず上回るため、AI研究を進めるべきだという考え方だ。

 そんな彼でも今回のAIドローンに関連するコードは、一切公開するつもりがないという。

危険なAIドローン対策が早急に必要

 ウェヌス氏は、近い将来、この類の技術でテロ攻撃が行われる恐れがあると警鐘を鳴らしている。

 実際のところ、こうしたシステムを開発するには、専門的な知識が必要だ。それでもAIがプログラミングを補助してくれるおかげで、そのハードルはどんどん下がっていると指摘する。

・合わせて読みたい→AIドローンがシミュレーション実験で人間の操縦者を殺害した疑惑が浮上、米空軍はこれを否定

 ウェヌス氏の実験は、公共の場に集まる人々を危険なドローンから守るため、社会は早急に対策を練る必要があることを示している。

 鳥やドローンのレーダーシステムを開発するRobin Radar社によれば、ただ公共の場を飛行するドローンを検出するだけなら、カメラ・音響センサー・レーダーなどを利用すればいいという。

 だが実際にドローンの飛行を防ぐには、電波ジャマー・GPSスプーファー・ネットガン・高エネルギーレーザーといった民間ではあまり一般的ではないシステムが必要になる。

 ドローンが兵器として優秀であることなら、ロシアウクライナ戦争など、すでに実際に戦場で証明されている。

 それが、なんの備えもない私たちの生活の場で使われたら? その恐ろしさはすぐに想像できるはずだ。

References:AI drone that could hunt and kill people built in just hours by scientist 'for a game' | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

狙った人間は逃さない。顔認証で追跡し暗殺できるAIドローンをわずか数時間で開発