単なるパトカーとは違う! 警察が運用する「移動交番車」ってどんなクルマ?

この記事をまとめると

■全国で150台ほどの配備がされている「移動交番車」

■交番と同様の働きを担うために様々なボディタイプが配備されている

■最近ではドバイの警察でも「移動交番車」が導入されている

形をクルマに変えただけのガチ交番機能をもつ!

「移動交番車」という言葉を聞いたことがありますか? 建物を構える交番とは違って、車両に警察官が乗車し、机や椅子、資料などを積載して団地などの人口急増地や、繁華街、事件や事故の多発地域に出動し、交番と同様のさまざまな活動を行うというものです。じつはその歴史は古く、戦後すぐにまで遡り、昭和40年の時点では全国で150台ほどの移動交番車が活躍していたのだとか。

 近年、再びその必要性が見直されて増えてきているそうですが、ちょっとユニークな移動交番車もちらほら。ここでご紹介したいと思います。

 まずは、2009年に25年ぶりに移動交番車を復活させたという千葉県警では、2022年には全国最多となる60台の移動交番車が活躍しています。ワンボックス車やマイクロバス車があり、ボディには海をイメージさせるブルーに水色で、CHIBA POLICEと大きなロゴが印象的。

千葉県警の移動交番車

 実際に見かけたのは日産のキャラバンがベースとなっているようでしたが、フロントのエンブレムは警察庁のマークに変わっていました。ルーフに赤色灯が付いているのはパトカーと同じですが、駐車するとなかからテーブルや椅子が出てきて、タープによる日除け・雨よけの装備も。車内にもテーブルと椅子があり、落とし物や被害など各種届出を受理したり、困り事や相談の対応もしています。こうしたワンボックス車やマイクロバス車をベースとした移動交番車は、宮崎県石川県香川県など全国の多くの警察署で導入が進んでいます。

香川県警察の移動交番車

 続いては、日本初のキャンピングカー型移動交番車として2004年に熊本県警に配備されたのが、ダイナエースがベースとなったキャンピングカー。カラーはパトカーと同様の白黒ツートーンですが、熊本だけに!? 熊のイラストが外観のポイントとなっています。助手席側にはサイドオーニングがあり、日除け、雨よけができるほか、キッチンやトイレがあるため、警察官が24時間体制で常駐できるところも特徴となっています。被災地や災害現場での治安維持活動を行うことも重要な任務だそう。

 さらに、キャンピングカーの次にはトレーラーハウス型移動交番車も出現。これは2019年に10日間の期間限定で代々木公園原宿門前に設置されたもので、翌年に開催予定だった東京オリンピックパラリンピックを見据えた試験的運用でした。黒を基調とした外観がシックなトレーラーハウスで、ドアの前にはウッドスロープと階段が設置され、出入りがしやすくなっていました。なかはスッキリとした印象で、窓ガラスもあるため明るい雰囲気。通常の交番としての業務ができるようになっていました。

日本のメーカーとドバイ警察が共同で運用する超ハイテク車も!

 そして移動交番は海外にも進出!? 愛知県の三笠製作所は、なんとドバイ警察との共同プロジェクトとして、アンドロイドで操作できる「走るスマートフォン」とも言える最先端の移動交番車を実証実験中。外観は前後どちらにも進めそうな電車のようなボディで、自動開閉のドアには車椅子でも乗り降りができるようスロープが付いているのが特徴です。

三笠製作所が製作したドバイ警察の移動交番車

 これは「SPS-AMV」(Smart Police Station-Autonomous Mobile Vehicle)というもので、2018年に1号機が納車され、2023年に2号機が納車されて実証実験を続けています。その名のとおり、移動遠隔自動運転の無人交番で、警察行政サービス端末を搭載。本格稼働すれば、スマホで希望の場所まで呼び出すことができ、住民に各種支払いサービスや住民票の出力、遺失物の届出など約30のサービスを提供できるとのこと。また、ドバイ警察と通信して犯罪や交通違反を検知・通報する前後360度カメラシステム機能が搭載されるといいます。これはすごいことになりそうですね。

 ということで、警察官の手が行き届きにくかった地域や場面に、よりきめ細やかな対応を可能とする移動交番車。これからも需要が増えていきそうです。

単なるパトカーとは違う! 警察が運用する「移動交番車」ってどんなクルマ?