60歳を目前にして30歳も年下のYouTuberとボクシングマッチを行うタイソン。その試合開催に疑問の声が噴出している。(C)Getty Images

 前代未聞のマッチメイクに波紋が広がっている。現地時間3月7日に米動画配信プラットフォーム『Netflix』が開催を発表したボクシングマッチだ。

 世界中に動画配信を展開する『Netflix』は、来る7月20日(現地時間)に米テキサス州アーリントンで、元プロボクシングヘビー級世界王者マイク・タイソン(米国)と、YouTuberでありながらプロボクサーでもあるジェイク・ポール(米国)が対戦すると発表したのである。

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 登録者数2000万人超えを誇る人気YouTuberであるジェイクは、過去にアンデウソン・シウバ(ブラジル)やネイト・ディアス(米国)といった総合格闘家とボクシングマッチを実施して9勝(6KO)1敗と好成績を記録。大物との対戦で莫大なるPPV収益を生み出してきた。彼にとって今回のタイソン戦は、ボクシングを利用したエキシビションの集大成とも言える。

 試合に競技性はない。言ってしまえば、話題性と収益以外に大儀のない一戦ではある。ゆえにボクシング界からは、こうした話題先行型のマッチメイクを問題視する声も上がっている。元世界6階級制覇王者のオスカー・デ・ラ・ホーヤ氏もそのうちの一人だ。

 現役時代に「ゴールデンボーイ」の異名を持った稀代の名手は、米YouTubeチャンネル『Fight Hype』で「もっと真剣にボクシングに取り組むべきだ」とジェイクの姿勢を危惧。60歳を目前にするタイソンについて警鐘を鳴らしている。

「これはいったい何だ? 単なる人気集めじゃないか。私はジェイク・ポールが正しい試合をして、世界タイトルへの正しい道を歩めば、そこに到達できると本当に感じているからこそ、残念ではある」

 また、デ・ラ・ホーヤ氏は、最盛期に圧倒的なカリスマを誇ったタイソンにも、複雑な想いを漏らしている。

タイソンはこれまでも“怪物”たちとリングを共にしてきている。だから、ジェイクは危険な相手なんかではない。彼はまだ6ラウンドから8ラウンドぐらいまでは戦えるだろうと思う。ただ、私はタイソンレガシーが心配なんだ。

 ジェイクは世界一になんかなるつもりはないし、タイソンを通じて莫大な金を稼ぐつもりだ。そして、タイソンを犠牲にすることで人気も得るだろう。私がそれを好むかって? いや、ノーだ。私はマイク・タイソンを愛しているからそう思うんだ」

 往年のスーパースターによるどこか寂し気な諫言は、繰り返される安直な興行開催に歯止めをかけるキッカケとなるだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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