2019年、住吉会二次団体「幸平一家」下部組織の事務所を家宅捜索した警視庁捜査員
2019年、住吉会二次団体「幸平一家」下部組織の事務所を家宅捜索した警視庁捜査員

指定暴力団・住吉会傘下で、大規模な「内部抗争」が起きていたことが明らかになった。警視庁暴力団対策課は2月15日までに、住吉会2次団体「幸平一家」の傘下組織組長や、別の2次団体「村田会」の傘下組織組員など、12人を組織犯罪処罰法違反(組織的建造物損壊)や暴力行為法違反(集団的器物損壊)などの疑いで逮捕した。

【写真】集団乱闘事件が起きた河川敷

両組織による応酬合戦は昨年10月に巻き起こっていた。まず、都内にある村田会の事務所や周辺に停まっていた車の窓ガラスが、植木鉢やコンクリートブロック消火器などを投げつけられて破壊された。するとその直後、中越組の関係先の住宅に車が突っ込み、シャッターが破壊されるなど、双方を対象とする攻撃が計4件起きている。発端は、六本木で発生した両組織の組員らによる喧嘩が発端だとされている。

「さらに翌11月には、東京都立川市の河川敷で、10人規模の集団乱闘事件があり、ネパール人の男性が意識不明となったほか、2人が腹を刺されて重傷を負いました。警察は乱闘に関わった10~20代の男10人を殺人未遂容疑などで逮捕しています。

10月の抗争の余波によるものとみられ、同門同士のイザコザというレベルを超えて内部抗争の様相を呈していました。結局は、住吉会の大物幹部が仲裁に入って手打ちとなったそうですが、互いに遺恨は燻(くすぶ)っているとみられ、いつ衝突が再発してもおかしくない」(全国紙社会部デスク

11月の集団乱闘事件の現場となった多摩川の河川敷(右岸)
11月の集団乱闘事件の現場となった多摩川の河川敷(右岸)

■関東連合OBを呼集

合わせて20人以上の逮捕者を出す派手な出入りとなった一連の騒動。当事者である中越組の組長は、関東連合OBとしても名を馳せる。

「中越組の組長は、六本木クラブ襲撃事件の首謀者として国際指名手配となっている関東連合リーダーの見立真一容疑者と同級生で、関東連合を暴走族から闇社会の一大勢力へと深化させた主要人物の一人。OBたちが組織に属さずに半グレとして活動する中、組長は20代のころから渡世に身を投じ、堅気のように振る舞って喧嘩や犯罪を繰り返すかつての仲間の背後で、住吉会の代紋を光らせることでバックアップしました。

そして、市川海老蔵暴行事件や六本木クラブ事件で関東連合の悪名が世間に轟いたことで、警察や行政当局の監視が厳しくなりました。元メンバーら半グレたちは、銀行の取引停止や不動産契約がままなくなるなど表社会での経済活動に少々をきたし、堅気を装うメリットがなくなったので、中越組や、組長が所属する堺組などに結集している状況です。

加入前から株式投資、飲食業などで財を成している者が多いし、ネームバリューに惹かれた若者に対するリクルートも活発で、拠点の歌舞伎町では一大勢力となりつつあります」(首都圏暴力団事情に詳しいA氏)

■少年時代からの"先行者利益"

勢いに乗じて、住吉会の同門との内輪もめもひっきりなしのようだ。

「中越組は序列的には4次団体ではあるが、2次団体の組員とも平気で渡り合う。住吉会の東京近郊出身の30~40代の組員だと、少年時代に関東連合にシメられている者が多く、シノギがバッティングしたりして揉めた際にも、当時の因縁を引きずっていまも頭があがらなかったりする。こうして、ヤクザへと移行した元半グレたちが、渡世の世界でも着実に力を付けている」(捜査関係者)

かたや、今回の対立相手である村田会も名の知られた組織だ。

「構成員が、現役ヤクザであることを明かしながらYouTubeの個人チャンネルを設け、一つの動画で優に10万回以上の再生回数を超えるほど人気を博しました。動画撮影には、同僚の組員も関わっていて、組織として活動をサポートしていたことがうかがえました。

ただ、目立ちすぎたことが仇となって当局の厳しい取り締まりを受け、覚せい剤取締法銃刀法違反罪で実刑判決を受けて社会不在を余儀なくされています。なにかと組員の高齢化が指摘される稼業ですが、今回の中越組と村田会の内部抗争は、元半グレユーチューバーという、現代風の属性をまとったヤクザの喧嘩でもあります」(捜査関係者)

社会の厳しい目を受けて、その形態が様変わりしつつあるヤクザ業界。しかし、喧嘩という根底だけは揺るがないようだ。

文/大木健一 写真/時事通信 photo-ac.com

2019年、住吉会二次団体「幸平一家」下部組織の事務所を家宅捜索した警視庁捜査員