いつの時代にも、学校トラブルは絶えない。誰もが中学校生活を経験しているはずだが、“今”の中学校でどんな問題が起きているのか、把握している大人は意外と少ない。

筆者(綾部まと)は新卒でメガバンクの法人営業部門に入行し、都内の学校法人を担当した。その取引先は中高一貫の学校法人で、当行が主力銀行だった。深い付き合いをする中で当時の銀行担当者から、現代の学校トラブルについて教えてもらってきた。

YouTubeやSNS、多様性が生むトラブルである。筆者を始めとした大人が学生だった頃には、考えられなかったものばかりだった。そんな令和の学校トラブルの中から、中学生に焦点を当ててご紹介する。

もちろん、筆者の担当した一部の学校法人に教えてもらったもので、全ての中学校がそうとは限らないことを前置きしたうえだが、お子さんがいる読者の方は手遅れになる前に、事実としてぜひ知っておいてほしい。

◆令和の学校トラブル①「迷惑系YouTuberの真似をする」

迷惑系YouTuberの流行により、学校でも迷惑行為が増えているという。窓ガラスが割られたり、流血沙汰になるほど激しいレベルではないものの、多くの教師が頭を悩ませているのは「トイレを水浸しにされる」行為らしい。

トイレを掃除すれば済むので、大きな問題になりにくい。窓ガラスと違って音が立たないため、誰がやったか犯人も特定しづらく、しょっちゅうビチャビチャになっているのだという。

◆他の生徒の自転車で帰る迷惑行為も…

他の迷惑行為として「他の生徒の自転車に、勝手に乗って帰る」というものがあるらしい。こんな話があった。風紀係の教師が、自分のものでない自転車に乗って帰ろうとした生徒を発見した。職員室でお説教をしたところ「ごめんなさい、もうしません」と深く反省しているように見えたので、そのまま下校させた。しかし帰りには、また別の生徒の自転車に乗って行ってしまったという。

これだけのエピソードなら、今も昔も変わらない。しかし、どうやらこの一連の流れをSNSで書くことによって『勇者』『英雄』と崇められることを期待しての犯行だったようだ。「迷惑行為をする奴が偉い、かっこいい」という風潮が、じわじわと学生の間に広がっている。風紀も何も、あったものじゃない。

◆令和の学校トラブル②「修学旅行先の写真をSNSにアップ」

スマホを禁止している中学校は多い。所持は可能でも、授業中は電源を切っておくことがマストであったり、朝礼時に回収する学校もある。しかし、いつの時代も決まりを破る学生がいるものだ。特に修学旅行中は気が緩みやすく、没収される生徒が多いらしい。なぜバレてしまうのだろうか?

それは修学旅行で、必ず写真や動画をSNSにアップする生徒がいるからだ。特に多いのが、宿泊先の部屋を撮影して「部屋きれーーい!」「ホテル広ーーい!」という投稿。感動のあまり、つい写真をあげてしまうのだという。

これらは悲しいかな、必ず見つかることになる。どのクラスにもSNSをパトロールしている親がいるからだ。彼らはタグ付けされたホテルや投稿された位置情報から、教師に通報する機会を伺っている。

◆意外にも感動は仲間内だけでシェアする中学生

「中学生なんて、普段から教室で踊っている動画をTik Tokにあげているのでは?」と思う人もいるだろう。実際には教室で踊る生徒なんて、ほとんどいないらしい。Tik Tokでは制服を着ている女の子が多いから、印象に残りやすいだけなのかもしれない。

今の女子中学生は写真や動画を撮り合うことはあっても、大半はInstagramの限定ストーリーやLINEグループなど、仲間内で共有するだけである。意外と「感動したものをアップする」という、本来のSNSの目的に沿った使い方をしているのだ。

◆令和の学校トラブル③「人種や国籍いじり」

グローバル化が進み、人種や国籍の違う生徒が増えてきた。子供の適応能力とはすごいもので、意外と子供同士のトラブルは少ない。じつは、増えているのは、親同士のトラブルだ。

ある男子生徒がクラスメイトへ、下駄箱で殴る蹴るの暴行を加えた時のこと。クラスメイトの彼は「なんだよお前! 肌が茶色いくせに!」とつい口に出してしまった。その言葉が運動場にいた教師の耳に入り、先ほどまで暴力を受けていたはずの彼は、一気に加害者に逆転。担任の教師から厳しい指導が入った。

本来なら喧嘩両成敗で、暴行を加えた男子生徒も怒られてもいいはずである。しかし彼は先程の一言で被害者となり、暴力に関してはお咎めなしであったらしい。

◆生徒は意外とあっけらかん、親同士の戦いに移行

男子という生き物は意外とあっけらかんとしていて、翌日には仲良くゲームをしていたりする。彼らにとっては国籍も人種も関係なく、喧嘩なんてよくあるからだ。しかし親はそうはいかない。

このような人権問題は、必ず先生の口から親に伝わる。先生は必ずしも一部始終を説明するわけではないので、差別を受けた親は「あいつは許せない。家でどんな教育をしているんだ」と激怒する。相手の親に長文の手紙を出し、家に来させて土下座を強制することもあるのだという。しかし謝罪を強制された親が、必ずしも納得するわけではない。親同士で冷戦が始まることもある。子供にとっては、確かに多様性を学ぶ良い機会なのだが……。

——時代の変化とともに、学校のトラブルも変化している。かつては親密だった親同士の関係も、共働き世帯やコロナによる行事の削減の影響により、希薄になってきている。可能な限り教師や親同士でコミュニケーションを取って、トラブルを未然に防ぎたいものである。

<文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

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