阿部監督のチーム操縦術が注目を集めている(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 し烈な外野手争いがくり広げられている巨人でまたも期待の若手が存在感を示し始めた。

 3月12日に行われたソフトバンク戦(鹿児島)に「6番・右翼」で先発出場した萩尾匡也は1点ビハインドで迎えた4回2死一塁の打席。相手先発・石川柊太の内角高めのパワーカーブをしっかり捉え、ライナー性の弾道で左翼スタンドに放り込んだ。これがオープン戦1号となる2ランをマーク。萩尾は9日のオリックス戦でも5回二死満塁の場面で代打で出場、2点適時打をマークして勝負強さを示していた。

【関連記事】巨人に好循環!2年目・萩尾匡也のオープン戦初本塁打で”外野手争い”がさらに過熱

 今季の外野のレギュラー争いはし烈を極める。松原聖弥オープン戦打率は・500、ドラフト3位ルーキー佐々木俊輔日立製作所)は・429(ともに12日現在)と好調をキープ、さらに昨年10本塁打をマークした秋広優人、調子をあげてきた丸佳浩、新外国人のルーグネッド・オドーアも控える。二軍では昨年のドラフト1位ルーキー浅野翔吾も打ちまくるなど、限られた椅子を目指して、誰もが懸命にアピールを続けている。

 投手陣も負けてはいない。育成から支配下登録された京本真や練習参加制で1軍合流中の左腕、横川凱は12日のソフトバンク戦に7回からオープン戦2度目の登板。1回打者3人に対し、13球で無安打無失点と先のオリックス戦に続き、好投でアピールを続けている。 

 チームではルーキーたちの躍動した姿も注目を集めている。ドラフト1位、本格派右腕の西舘勇陽中央大)、同3位の佐々木、内野のユーティリティとして期待を集めるドラフト4位の泉口友汰NTT西日本)、リリーフ左腕として安定した成績を残す同5位の又木鉄平(日本生命)といずれもそれぞれのポジションで存在感を示しており、異例のルーキー4人の開幕1軍入りが視野に入る。

 また、ここまで期待の若手が出てくる背景には青年指揮官たくみな操縦術も見え隠れする。

 まず選手の選別基準が明確であること。現在遠征中のオープン戦においては、2軍からの参加制という形を取り、結果を残し続けている選手に対しては、1軍昇格の道が残されている。一方で、チームが求める意図に添えなかった選手は即2軍に送り返されるなど、シビアな道が待っている。

 12日のソフトバンク戦では6回から登板したリリーバー、直江大輔が顕著な例となった。先頭の栗原陵矢へは初球から3球連続ボールでフルカウントに持ち込むも、結局は四球で歩かせ、続く柳田悠岐には左前打、二死二塁からは昨年まで巨人に在籍したアダム・ウォーカーに特大の逆転2ランを浴びる結果に。昨年四球禍に悩まされたチームにおいては投手陣の底上げのためにも、ゾーン勝負を徹底させており、「困ったらストライク」をチームルールとする中、"逃げの投球"を見せた右腕は速攻、2軍落ちが決まった。

 一方で、ここまでなかなか力を発揮できなかった選手たちへの目配りも忘れない。現在、ポスト守護神として好投を続け、注目を集める5年目右腕の堀田賢慎や、昨年はノーヒットに終わった外野手の松原、昨年は1軍で実績を残せなかった萩尾に対しても1軍キャンプスタートとするなど、しっかりチャンスを与える姿勢も示している。必死に取り組む選手には”見ているぞ”とメッセージを送ることで、選手たちのモチベーションの高さにつなげている。

 昨年まで2年連続4位に終わったチームでは、選手個々の能力の高さは認められながら、チームとしての統一性、爆発力に欠けた面は否めなかった。

 4季ぶりのV奪回に臨む今季、文字通り「全員野球」で新風を吹かせるか。ルーキー監督がいかにチームを前に進めていくのか、今後も話題を集めそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

なぜ阿部巨人ではここまで「期待の若手」が出てくるのか 注目集める令和のブラッシュアップ術