パナマ運河・貨物船

太平洋と大西洋をつなぐ重要な海上交通路パナマ運河が、かつてない水不足で危機状態にあるという。110年間の歴史の中で、2番目に乾燥した年に当たるとして危惧されている。『BBC』がレポートした。

 

■乾季の水不足が深刻化

アメリカ大陸で有名な水路の一つであるパナマ運河の水位が、急速に低下しているという。パナマ運河は淡水湖であるガトゥン湖から水が供給されており、その湖の水位が危機的なほど低下しているのが原因だ。

現在、運河の水位は通常よりも5フィート(約1.5メートル)低下しており、スムーズな運営への影響が懸念されている。

その原因のひとつとして、2023年10月は記録的な乾燥月になり、通常の降水量の41%も少ない降水量しか記録されなかった。この干ばつにより、貨物流通に年間約2,700億ドル(約40兆円)ものダメージを与えると予想されている。

雨不足とエルニーニョ現象が重なったことで、運河110年の歴史の中で2番目に乾燥した年になっているのだ。

 

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■水の節約対策

パナマ運河は、ガトゥン湖とアラフェラ湖から供給される水域の上にある閘門を操作し、船舶を通過させている。船舶通過には、約5,000万ガロン(約2億リットル)の水を使用し、2016年に建設されたネオパナマックス閘門により、その水の60%を節水できているという。

ただし古い閘門も稼働しており、それらの改修は大規模なプロジェクトになると予想される。

現行は1つの閘門のチャンバー(閘室)から別のチャンバーへの水の再利用を行い、1日の通過数に相当する水を節約している。パナマ運河庁はさらなる水源確保のため、運河の貯水池建設を検討しているそうだ。

これは近くのインディオ川をダムでせき止め、その淡水を運河の貯水池ガトゥン湖に導水する計画で、完成すると船舶の通航量が1日あたり12~15隻増加できる見込みだという。

 

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■飲料水確保にも苦慮

パナマ運河に導入されている湖は、国民の飲料水の水源にもなっており、最近の雨不足による塩分濃度の上昇が問題視されている。パナマ運河庁は、海水を飲料水にするための淡水化システムの導入も検討しているが、それには高コストな上に膨大なエネルギーを要するという。

他にも検討されているのが、1940年代から存在するという雲を人工的に作り雨を降らせるという方法。しかしいずれも莫大な資金投資になるため、船舶や輸送コストを押し上げることになってしまうそうだ。

地元の船舶会社によると、パナマ運河の混乱が原因で、テキスタイルから食品まで200万トンの貨物の出荷が遅れている。パナマ運河を通る貿易量はピーク時から49%減少しており、今後ますます不安定になると予測されている。

パナマ運河が水不足で危機状態に 110年の歴史上2番目に乾燥の年