2002年のサッカーW杯日韓大会で日本代表を率いてグループリーグ突破を果たし、日本サッカーの新たな歴史を作ったフィリップ・トルシエ監督。彼が再び注目されたのは、1月に行われたアジアカップカタール大会でのこと。日本が初戦で戦ったベトナムの監督を務め、かつての日本のようによく組織されたサッカーで、サムライブルーを苦しめた。

 そんなトルシエ監督と大ゲンカをした城彰二氏が、自身のYouTubeチャンネルで「赤鬼」の素顔を明らかにした。城氏が真っ先に挙げたトルシエ監督の印象は、

「ひと言で言うと、傲慢」

 トルシエ監督は日本を勝たせたい、強くしたいという思いが強く、若くて熱量もあった。だからそう思わせたのではないかと、城氏は考えているのだ。

「今ならパワハラだよね。訴えるか。今から訴えるか」

 本気とも冗談ともつかない口調で、当時を振り返った。

 城氏はトルシエ監督のセンセーショナルな言動に腹を立て、一方的に意見を伝えて取っ組み合いをしたことがある。だが意見を言い合ったことでわだかまりはなくなり、それからはむしろ仲良しになったという。

 選手のことを気遣う一面を持っていたとも、城氏は言う。2000年、トルシエジャパンモロッコで行われたハッサン二世国王杯に出場。城氏は初戦のフランス戦に出場することになっていたが、急きょ2戦目のジャマイカ戦から出ると、トルシエ監督が変更。理由は1998年のW杯フランス大会のリベンジだ。

 ジャマイカ戦で結果を残して、自身の名誉を回復するよう言われたのだ。そのジャマイカ戦で、城氏は2ゴール。試合は4-0で快勝した。

「2点取ったらトルシエ監督は『取り返したな。あれを取り返したんだから、お前はそれだけ成長している』って言ってくれた。あの人は人に対して優しいし、思いやりがある。メディアが伝える人間性とは違っていた」

 城氏はトルシエ監督の思い出を、遠い目で振り返ったのである。

 ただし、こんなエピソードも明かしている。

トルシエは失敗もある。琉球などいろんなチームに行ったけど、お金だけいっぱいもらって帰ってしまった。それをトルシエに言ったら、黙っていた(笑)」

 様々な問題を起こし、話題を提供したトルシエ監督だが、

「彼は日本のことが好きだし、日本サッカーを発展させたいという思いを持っていた人だから、歴代の監督の中でもすごくいい監督じゃないかなと思う」

 そう結論づけたのである。また日本のどこかで指揮を執る日が来るかもしれない。

(鈴木誠)

アサ芸プラス