四半世紀ぶりとなる山形新幹線向けの新型車両E8系秋田新幹線用のE6系のカラーリング違いにも思えますが、実は大きな差があります。内外ともに変わっており、なかには快適性に直結する部分もありました。

先頭形状を変えることで定員アップ!

2024年3月16日(土)のダイヤ改正で、新型E8系山形新幹線において営業運転をスタートさせます。

このE8系、基本的には秋田新幹線E6系を踏襲した設計です。しかし、E6系とは大きく異なる部分も多々あります。なかでも最大の相違点と言えるのが、「鼻先」の長さでしょう。この部分が13mから9mに短くなっています。

これはE6系E8系の「最高速度の違い」ゆえと言われています。前者は320km/hなのに対し、後者は300km/hと低く、この速度域ならそこまでのロングノーズである必要はないと判断された結果、短くなっています。そのぶん客室部分が拡充されており、E6系の定員が330人である一方、E8系では355人に増加しており、速達性と輸送力を両立させています。

運転席の三面張りの窓の正面部分は、E8系と比べて横幅が若干狭くなっているものの、これは視界を遮るほどではないため、運転に影響するようなことはないとか。また、車体断面は、先頭以外をE6系と同じにすることで、設計・製造コストを抑えているそうです。

側面に目を転じると、先頭車の客室ドアの位置にも違いがあることが判ります。具体的には、E6系は後ろの連結部近くに客席ドアがあったのですが、それが「運転室ドアの真横」に移設されています。

このように位置変更したのには、火災など緊急時の逃げ道を確保しやすくするのが理由とのことでした。

なお、カラーリングは現在のE3系と同じ配色を継承。上半分が紫色「おしどりパープル」、下半分が白色「蔵王ビアンコ」、真ん中にオレンジの帯「紅花イエロー」となっています。

コンセント位置を変えてトラブルも回避

座席は、普通車が上から黄色から紅色のグラデーショングリーン車が青緑色、床には最上川をイメージしたデザインが施されています。

車内の印象もE6系に似ていますが、車内設備で目につく大きな変化が、コンセントが「肘掛けの付け根」にあるという点でしょう。既存の新幹線車両では前の座席の足元や壁下、あるいはJR東海N700Sでは肘掛けの先端に付いていました。

E8系でコンセント位置を変えたのは、これまでの場所だと、乗客がコードに足をひっかけるという課題があったからだとか。当初は肘掛けの下裏に設置する案もあったそうですが、万一の破損で感電するおそれがあると考え、付け根の位置に変更したそうです。

ほかにも、最新のバリアフリー基準に対応して車いすスペースも当初から確保されています。

また、目立たない部分ながら着雪防止として台車ヒーターを採用。一方、モーターを制御するVVVFインバーターは最新技術のSiC(炭化ケイ素)半導体ではなく、従来のIGBT素子が使われています。この点もE6系と同じにすることで設計・製造コストを抑えていますが、E6系で採用された、カーブ通過時に車体を横へ傾ける「車体傾斜装置」は採用されていません。

山形新幹線の新形式車両としては、1999(平成11)年のE3系からじつに25年ぶりの登場となる、新型E8系。ちなみに、最高速度が引き上げられたことで、東京~山形・新庄間の所要時間が4分短くなるほか、「つばさ」と併結する東北新幹線やまびこ」の車両がE2系からE5系に変更されます。

山形新幹線の新型E8系電車(乗りものニュース編集部撮影)。