吉田修一の同名小説を、福士蒼汰松本まりかのW主演で、『MOTHER マザー』(20)の大森立嗣が監督、脚本を手掛けて映画化した『湖の女たち』(5月17日公開)。このたび福士と松本が実際に水中で撮影したポスタービジュアルと、濃密でスリリングなアンサンブルを予感させる予告編が解禁された。

【写真を見る】福士蒼汰と松本まりかの艶めかしい雰囲気が印象的なビジュアル

第35回モスクワ国際映画祭で日本映画48年ぶりとなる審査員特別賞の快挙をはじめ、数々の国内映画賞を受賞した映画『さよなら渓谷』(13)の原作&監督による再タッグが実現した『湖の女たち』は、全編にわたって観る者の理性と感性を激しく揺さぶり、比類なき衝撃的な映画体験をもたらすヒューマンミステリーだ。

介護施設での殺害事件を発端に、想像もつかない方向へとうねり出す物語は、重層的な構造と壮大なスケール感で観る者を圧倒する。事件が混迷を極めるなかで、身も心もさらけ出す難役に挑んだのは、刑事の濱中圭介役を演じた福士と、事件が起きた施設の介護士、豊田佳代役を演じた松本だ。圭介と佳代の、一心不乱に互いを求めてむさぼり合うその姿は、闇夜の湖畔で艶めかしい“生”の輝きを放つ。いままでに見たことのない福士のよどんだ視線、松本によるむき出しの心が「いま、世界は美しいのだろうか」という問いの答えとなり、見るものの心に突き刺さる。

100歳の老人の殺人事件から物語が始まる本作は、福士演じる圭介と松本演じる佳代が、刑事と容疑者という立場でありながら抗えない関係に溺れ、人間の内なる欲望に目覚めるとともに、過去から隠蔽されてきた恐るべき真実を引きずり出していく。解禁されたポスタービジュアルは、福士と松本が演じる圭介と佳代の「理屈では説明できない抗えない力」で引き寄せられ、溺れていく関係を表現するため、実際にプールに入って水中で撮影し、『湖の女たち』の作品性を俳優たち自らが体現した。まるで湖に沈んでいくように水中に漂う姿が印象的に映しだされている。

あわせて解禁となった本予告は、刑事の圭介と介護士の佳代のただならぬ場面から始まる。佳代の絞り出すような「私がやりました」という声とともに、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」パルティータ第2番ニ短調に含まれる「シャコンヌ」の切り裂くような旋律が流れ出す。圭介と伊佐美(浅野忠信)の執拗な取調べに「うちはやってないんや」と泣き叫ぶ介護⼠の松本(財前直⾒)、そして危うい関係を深めていく圭介と佳代の姿が次々と映し出される。「こんな人生望んでたんと違うよな」という圭介のセリフは一体誰に向かって問うているのか。

一方、事件を追う週刊誌記者の池田(福地桃⼦)が事件の背景に旧⽇本軍731部隊の存在があったことを知り、佳代の働く介護施設で亡くなった100歳の老人の妻、松江(三田佳子)と対峙する様子も描かれ、「いま、世界は美しいのだろうか―」と観客に問いかけるような言葉とともに静かな湖畔が映し出される。断片的な映像の数々から豪華俳優陣の熱演によるこのうえなく濃密でスリリングなアンサンブルが楽しみな予告編が完成した。

過去から引き摺り出される事実は、どんな答えを導き出すのか。そして厳かに静まりかえった湖のほとりで、後戻りできない関係に堕ちていく圭介と佳代の行く末は?観る者を圧倒する壮大なヒューマンミステリー『湖の女たち』に引き続き注目したい。

文/山崎伸子

福士蒼汰と松本まりかが抗えない関係に“溺れる”映画『湖の女たち』のポスタービジュアル/[c]2024 映画「湖の女たち」製作委員会