現在社会問題となっている「ヤングケアラー」の実話をフィクションとして描いた、水谷緑(@mizutanimidori)さんの漫画「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(文藝春秋)が話題だ。家族・親族の介護や面倒に忙殺されている子どもたちのリアルな日常に迫った本作は、地域社会からも見えづらいこの問題を考える上で重要な作品と言える。本作について、作者の水谷緑さんに話を伺った。

【漫画】親の介護をする「ヤングケアラー」を読む

■「ヤングケアラーの方の話は、自分が家族を作っていく上で参考になることも多かった」

ヤングケアラー」を題材に漫画を描いたきっかけについて、水谷さんは「編集さんが『精神障がいのある親に育てられた子どもの語り』という本を読んで感銘を受け、私に提案してくださいました。精神疾患の取材を5年ほどしていましたが、精神疾患を持つ人の子供のことを考えたことはなかったな、と思いました。

最初は自分が子供を出産したばかりということもあり、子供が可哀想な話を聞いたり描いたりするのは気が進みませんでした。でも実際に話を聞いてみると、ヤングケアラーの方々は魅力的で精神年齢が高く、達観した方が多いです。話を聞くと自分が家族を作っていく上で参考になることも多く、興味を持つようになりました。

『家族の絆』推しのエンタメが嫌いな元ヤングケアラーの人が多かったですが、そういう方のお話を聞いてると、自分が持っていた『家族とはこういうもの』という思い込みが解体されて、親との関係、子供との関係などを根本から冷静に考えることができ、視点が増えて面白く、落ち着く感じがしました」と明かす。

実際に当事者の方々へ取材をしたそうで、「10人程度の方にオンラインや対面、メールで何度もお聞きしました。ご協力いただきとてもありがたかったです。取材は20代〜50代の方で、子供の頃ヤングケアラーだった方にお聞きしました。カウンセリングを受けたり、本を読んだりしていて、自分のことを振り返って言語化できる方が多かったです」と振り返る。

自分の家庭環境を「当たり前」だと思ってしまい、自分がヤングケアラーだと気付かない場合もあるそう。そんな時、当事者はどのように助けを求めれば良いのだろうか。水谷さんは「困っていることに気づかないことが大半だと思うので難しいと思いますが、子供でも大人でも『自分には権利(力)がある』(自分は自分が話したいことを話し、やりたいことをやることが許されている、むしろすべき)という意識を持ってる方は違うなと思います」

助けを求める発想につながります。若い人でしたらまずは、普段自分が使ってるツール(SNS)で自分と似たような境遇の人や、支援団体を見つけるといいのではと思います。力になりたいと思ってる人はたくさんいます」と、当事者へ向けたメッセージを送ってくれた。

取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)

統合失調症を患う母を支える小学3年生の過酷な日常とは/「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(C)水谷緑/文藝春秋