新NISA(少額投資非課税制度)で人気銘柄のたばこ大手、JTが“爆弾”を抱え込んでいます。それは、グループの2割の利益を稼ぎ出すロシア事業です。ロシアウクライナ侵攻を受け、多くの企業がロシア市場の撤退に踏み切る一方、JTは事業を継続しています。“稼ぎ頭”の動向によって、JTの株価は大きな影響を受ける可能性があります。実は、投資にあたって企業で起こり得る固有イベントをチェックするのは重要です。『週刊ダイヤモンド』3月16日号の第1特集の『日本株 沸騰!』では、株価を動かす経済ニュースについて徹底解説するほか、世界3大投資家のジム・ロジャーズへの緊急インタビューや、株初心者向けの新NISA使い倒し術なども掲載しています。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

新NISAで人気銘柄のJT
子会社が「戦争支援者」に

 2024年にスタートした「新NISA(少額投資非課税制度)」で個人投資家に人気が高い個別銘柄の一つが、たばこ大手のJTだ。背景には、長期保有に向いた、安定的な高配当の存在がある。

 しかし、JTは大きな“爆弾”を抱え込んでいる。それは、JTの海外子会社が手掛けるロシア事業である。

 JTのロシア事業は37.4%(23年)もの市場シェアを占め、グループ利益の2割強をたたき出す“稼ぎ頭”だ。グローバル展開するJTにとって、ロシアは優位を築いている数少ない成長市場の一つといえる。

 そのロシア事業を巡り、ロシアの侵攻を受けているウクライナ政府は23年8月、JT子会社を「戦争支援者」のリストに加えた。ウクライナ政府は、JTがロシア事業を継続し、ロシアを経済的に支援していることを批判、事業の停止や撤退を迫っている。

 実際、子会社ロシアでの納税額は、20年にロシアの国家予算の総収入の1.4%を占めた。これは日本円で4000億円に上る。

「戦争支援者」のJTはロシア事業の方針は

 ロシアでの企業活動に対して国際社会の厳しい目がある中でも、JTはロシア事業を続けている。寺畠正道社長も継続スタンスに変更がない方針を強調している。

 稼ぎ頭の喪失を避けたいJTは今のところ玉虫色の態度でやり過ごそうとしているが、戦況の変化など事態が大きく動けば、ロシア事業の是非が再びやり玉に挙げられる可能性がある。撤退や事業停止に追い込まれれば、JTの業績に大打撃となる。

 日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新し、日本株が沸騰している。では、投資に当たって押さえるべきポイントとは何か。実は、企業の業績や投資指標に加え、株価を大きく動かす企業固有のイベントをチェックすることも重要だ。JTのケースでは、株価を大きく動かしかねないロシア事業の動向は注視が必要だ。

 イベントは企業によってさまざまだ。例えば、伊藤忠商事の岡藤正広会長や、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長といった名経営者の進退は株価に影響を与える可能性が大きい。

 業界再編やリストラ、事業売却、大型買収に加え、物言う株主の介入なども企業の株価を動かすことになる。

 ダイヤモンド編集部の総力取材で業界や企業の株価を動かす経済ニュースについて、明らかにしていく。

新NISA(少額投資非課税制度)で人気銘柄のたばこ大手、JTは“爆弾”を抱え込んでいる Photo:AFP=JIJI