世界の戦闘機は全長が20m~14m程度と、大きさはさまざま。敵を撃墜する目的は皆同じなのに、どうして大きさが異なるのでしょうか。また、大小で有利・不利などはあるのでしょうか。

Su-30MKMと「グリペンC」では7mもの差が

現代の世界の戦闘機には、全長が20mを超える大型のものから、14m程度の小型まで大小様々あります。同じように「敵国の機体を撃墜する」という目的で開発されたにもかかわらず、なぜ大きさが異なるのでしょうか、そして、どちらが強いのでしょうか。

2024年2月開催のシンガポール航空ショーで展示されたのは、現地シンガポール空軍のF-15SGとF-16C/Dブロック52、米空軍のF-35Aに加えて、マレーシア空軍のスホーイSu-30MKMとタイ空軍のサーブグリペンC」でした。

このうち、隣り合わせだったSu-30MKMとグリペンCは、前者の全長が21.93m、後者は14.1mと違いは明瞭で、サイズには35%近い差があります。ともに、空対空戦闘や空対艦攻撃など複数の役目を受け持つとされているにもかかわらず、大きさの違いは一目で分かりました。

なぜこれほど大きさが異なるのでしょうか。

各国の戦闘機開発の歴史を見ると、一般に敵国上空での制空権確保を主目的にすれば燃料や武装をたくさん積むため機体は大柄になり、自国領空を守る迎撃が主任務なら、逆に燃料搭載量も減り小型にできます。

「戦闘機のサイズ」国によって傾向アリ?それぞれの強みとは

そして、開発予算が限られていれば、小型を選択するのが一般的です。このため、かつての冷戦下における戦闘機導入状況を見ると、軍事費を多く支出した米国・旧ソ連戦闘機は大型に、東西両陣営の傘下だった国では小型になる傾向がありました。

大型の戦闘機の方がミサイルも多く積めて有利と思われる反面、相手を直接見る格闘戦では、大きいゆえに見つけられやすいといわれています。実際、航空ショーの会場で話したシンガポール空軍関係者によると、かつて同国空軍が使っていた小型戦闘機F-5Sを指して、「F-15SGよりサイズが小さいのは有利だ」と話していました。

なお、過去にはタイ空軍のグリペンCが、大型のSU-30MKMと同シリーズで中国空軍が使うSu-27戦闘機を破ったこともあります。しかし、これは相手を直接見ずに、レーダーを使った目視外の模擬演習ということでした。

このため、あるグリペンの操縦士は、決して「見つけにくい」ことを楽観視していません。「相手となったSu-27は電子装備が古いレガシー(旧式機)だった」と前置きしたうえで、現代の空中戦は、相手のレーダー電波を妨害したりステルス機能で被発見率を減らしたりして「電子戦の環境を整える」とし、そのうえで“懐に飛び込まれた”接近戦で「機体の小ささは見つけられにくく、自分たちを有利に導く」ものとしました。

現代はこのように電子戦の重要性が非常に高いのですが、それでも勝利へ万全の態勢を期すために、各国は、戦闘機同士の相手を直接見る空中戦の訓練も欠かしていないともいえるでしょう。

※誤字を修正しました(3月14日19時23分)

左はF-15SG、右はF-16D。いずれもシンガポール空軍機(相良静造撮影)。