株式会社SIGNING(サイニング、本社:東京都港区、代表取締役社長:牧貴洋、以下SIGNING)企画・プロデュースによるソーシャルイシューギャラリー「SIGNAL」では、贈与をテーマに人の「つながり」の価値を問うアート×体験展示「おくる と つながる」を、2024年3月21日(木)~3月30日(土)に開催いたします。

  • 「おくる と つながる」とは?

相手の顔を思い浮かべ、心を込めてものを贈る。その行為には、人と人を、心と心をつなぐ、とてもあたたかで人間的な営みが感じられます。

本展示では、そんな「おくる」に着目し、木村伊兵衛写真賞受賞の写真家新田樹氏とのコラボ展示「写真集『サハリン』の中に見る『贈与』」や、贈与体験エピソード・リサーチデータの展示、誰かにドリンクを一杯贈る「あちらのお客様からです」体験などを通して、加速するデジタライゼーションの影で失われがちな「つながり」の価値を問いかけます。

  • 写真展示「写真集『サハリン』の中に見る『贈与』」に寄せた、写真家・新田樹氏コメント

 日本統治時代に樺太とよばれたこの地には、1945年8月の日本敗戦時、約35万人の日本人と2万~4万3千人(諸説あるが正確な人数は把握されていない)の朝鮮人が取り残されていた。戦後ソ連領となったこの地から日本人の多くは引き揚げたが、朝鮮人たちとその配偶者である日本人は、その後数十年にわたりこの地を離れることはかなわなかった。(サハリン残留韓国・朝鮮人。以後カレイスキーと表記)

 

1996年3月。私は、未だ混乱の続くロシアを写真家として最初の仕事にしたいと思い旅していた。その途上での出会いがサハリンとの始まりだった。

 青く凍えた街の辻にろうそくが灯っている。木でこしらえた枠にはビニールが張られ、そのなかで生花がろうそくの炎に照らされ息をしていた。傍らには凍えた顔のおばあさんが座っている。

 当時、ユジノサハリンスクのバザール(市場)や街で花を売るカレイスキーのおばあさんたちの姿があった。私が日本から来たとわかると、厳しい生活の様子を日本の言葉で話してくれた。路上での短いやりとりを交わしただけでも、彼女たちの背景に日本が大きく関わったことが色濃く感じられて、私は漠然としながらも鋭利な後ろめたさを感じずにはいられなかった。だからだろうか、彼女たちの心に触れることができればと願った。

 私は街をうろつき、彼女たちの前に立つのだが、気持ちがこわばってしまい言葉が出てこなかった。なぜ彼女たちはこの地に残らざるをえなかったのか。それを知ることなしでは、彼女たちと正面から向き合う自信が持てなかった。あの時、私は一歩も踏み込めずにサハリンを後にした。それだけに今でも忘れられない出来事を思い出す。

 街を歩いている時のことだった。思いがけず日本の言葉が聞こえてきた。私の前を歩く二人のおばあさんが話しているようだった。

「日本の方ですか?」 それまでの旅の心細さに、私は思わず声をかけた。

「いいえ、私たちは戦争の前にここへ来た朝鮮人です」

 戦後から50年、この地で日本の言葉が日常的に使われていることに驚いた。それは単に話せる事とは違う何か、その後何度も繰り返される問いの始まりとなった。

 歴史が記憶の堆積物ならば、降り積もり埋もれてしまう。単純に割り切ることのできない思いを抱え生きる姿に今なら向き合えるのではないかと動き出したのは、それから14年後の2010年のことだった。

  • 写真家 プロフィール

新田樹

1967年福島県出身。ロシアサハリンに暮らすサハリン残留朝鮮・韓国・日本人の姿を収めた写真集「Sakhalin(サハリン)」と写真展「続サハリン」で、写真界の芥川賞とも呼ばれる木村伊兵衛写真賞と林忠彦賞を2023年3月にダブル受賞。

  • 展示企画者コメント

質の高いドキュメンタリーを撮影するには、写真の技術とは別に、被写体との距離の作り方が重要です。「サハリン」の制作過程を理解するにしたがい、私たちは写真家新田さんの中の人間関係構築スタイルの中の「贈与」哲学を感じました。

  • 本展示に寄せたマーケター・伊藤幹 コメント

つながり。それは、人間を幸福たらしめる根源的欲求の一つでありながら、近年加速するデジタライゼーションの影で、失われつつあるものでもあります。

そんな「つながり」を見直すきっかけとして、文化人類学領域のテーマである「贈与」に着目しました。

ものを贈る。相手の顔を思い浮かべながら選び、心を込めて贈るその行為は、人と人を、心と心をつなぐ、とてもあたたかで人間的な営みです。

本展示は、博報堂とSIGNINGによる共同プロジェクト「HAKUHODO HUMANOMICS STUDIO」が取り組む、贈与がつくる人と人のつながりに関する研究活動「オクリレーションレポート」の一環として行う、贈与が引き出す人間のあたたかさと良心をアート×体験のアプローチで問う社会実験的取り組みです。

日常的に行われるものであり、いざ意識してみるとちょっとだけ勇気のいる「おくる」。

それは、形のある物かもしれないし、感謝の言葉や相手のための時間など、形のないものかもしれません。

本展示を通して、贈るものそのものではなく、そこに込められた思いに価値を置く「贈与」の概念に触れながら、そこにある人間らしさや温かさ、人と人とのつながりを感じてもらえたら嬉しいです。

  • マーケター プロフィール

伊藤幹

「オクリレーション・レポート」編集長、株式会社博報堂 マーケティングディレクター。コミュニケーション戦略、事業開発、ソーシャルプロジェクト企画など幅広い領域のプラニングに従事。 ウェルビーイングをテーマに活動し、2022年「ウェルビーイング・アワード」を企画・立ち上げ。

  • 贈与展 概要

・期間:2024年3月21日(木)~ 3月30日(土)

・開館時間:火~金曜日 11:00-23:00 カフェ&ギャラリー(18:00以降はバータイムになります)

      土曜日   11:00-18:00 カフェ&ギャラリー

      ※日・月・祝日は休み

・入場料:無料

・所在地:東京都港区虎ノ門1丁目2-11 The ParkRex TORANOMON 1F

・アクセス : 東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 A2出口から徒歩5分

      東京メトロ銀座線 虎ノ門駅 2a出口から徒歩3分

・電話番号:03‐6205‐8220

  • 「HAKUHODO HUMANOMICS STUDIO」紹介

「HAKUHODO HUMANOMICS STUDIO」は、博報堂 とSIGNING の共同プロジェクトとして、2023年4月に始動しました。企業間の競争が性能や機能から人の体験価値にシフトしていく中で、企業経営や経済活動を人間らしさの観点から捉え直し、よりよい企業、より豊かで望ましい社会の実現を目指そうとする考え方を
「Human + economics = Humanomics (ヒューマノミクス)」と捉え、Humanomicsのコンセプトのもと、
レポート等の情報発信に加え、経営へのコンサルティング、事業・サービス開発等の支援を行っております。

URL: https://www.hakuhodo.co.jp/humanomics-studio/

ソーシャルイシューギャラリー「SIGNAL」は、来場者が情報のインプットとアウトプットの両方を担うところが特徴です。アート展示を鑑賞し、顕在化していない社会課題と向き合う機会提供だけにとどまりません。社会課題を表現したアートを鑑賞することで湧き上がる来場者の想いがアンケートによりアウトプットされ、そのアウトプットの集合体を当社が様々な角度で”兆し”として取り扱い、社会課題解決のアイディアに昇華させていく、という仕組みです。アンケートで得た定量データをもとに、社会課題に関するレポートや対話型のイベント、企業・団体・大学との共同プロジェクトも実施予定です。リアルな実地調査による取り組みを通じ、未発見の社会の課題や兆しの発見を目指し、大小隔たりのない社会課題解決に邁進してまいります。

  • 会社概要

SIGNINGは、「ビジネスの課題」と「社会の課題」を同時解決するソリューションを提供するソーシャルビジネススタジオです。現代のビジネス環境は、テクノロジーの進化や世界情勢の激変により、めまぐるしい変化にさらされています。そのような環境下で、多くの企業が、先の予測できない環境下で、既存のビジネスモデルや競争ルールにとらわれない、新たな成長領域の開拓を迫られています。また、こうした変化の激しい時代に社会と共生し持続的な成長を実現するための方法論として、SDGsソーシャルビジネスへの関心も急速に高まっています。SIGNINGは、多くの企業が直面するこうした社会背景をふまえた(1)社会課題を解決しソーシャルグッドを推進していく「Social Design」、(2)事業の新たな成長機会を発見し新市場を創造していく「New Market Design」、という2つの領域に特化しています。コミュニケーション領域にとどまらず、事業・商品・サービス開発領域まで融合した「Social Business Studio」をコンセプトに掲げ、統合的なソリューションを提供してまいります。

・所在地:〒108-0073東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル16F

・代表:牧 貴洋

・URL:https://signing.co.jp/

配信元企業:株式会社SIGNING

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