ammo「reALITY」2024.03.03(sun)Zepp DiverCity

東大阪発スリーピースロックバンドammoが3月3日、Zepp DiverCity(Tokyo)でワンマンライブ「reALITY」を開催した。彼らは今年1月17日メジャー第1弾作品「re: 想 -EP」と、インディーズ時代の曲の再録に新曲を加えた「re: 奏 -EP」を同時リリースしたばかり。本公演はメジャーデビュー後、最初の単独公演となる。

会場暗転とともにSEが流れ始めると、岡本優星(Vo, Gt)、川原創馬(Ba, Cho)、北出大洋(Dr)が次々にステージに登場。3人は向かい合って気合い入れをすると、岡本が自身の奏でるアルペジオに乗せて「大阪、ammo、始めます!」と叫び、「やまない愛はある」から軽やかにライブをスタートさせた。無駄の一切感じられない鉄壁のバンドアンサンブルと、素朴ながらも聴き手にストレートに響く岡本の歌声、随所で心地よいハーモニーを重ねる川原のコーラス。これらが一丸となってオーディエンスのもとへと飛び交っていき、フロアは早くも興奮のるつぼと化す。

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ammoはオープニングナンバーから間髪入れず、「未開封」や「深爪」「突風」といったアップチューンを連発。バンドの演奏が勢いを増すと同時に、フロアには多数のクラウドサーファーが発生し、さらに熱を帯びていく。「歯形」で少しテンポダウンするも、フロアの盛り上がりはさらに増すばかり。そんな観客を前に、岡本が「みんな苦しそうだね。大丈夫? ライブハウスの基本なんですけど、苦しいほうが楽しいです!」と呼びかける一幕も。さらに、「Chill散る満ちる」「おもしろい方へ」といった彼ららしいメロディやフレーズが凝縮された楽曲で、会場の一体感は早くもピークを迎えた。

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客席が静まり返る中、岡本はギターを爪弾きながら鼻歌を歌い、そのまま「紫春」へと続ける。繊細さが際立つ岡本の歌とギターに、川原&北出のリズム隊が加わることで楽曲の持つパワーがどんどん増幅。かと思えば、ミディアムスローの「おやすみ」、グルーヴィーな「ジュブナイル」、「不気味ちゃん」、彼らの代表曲のひとつである「寝た振りの君へ」など、バラエティに富んだ楽曲群で緩急を付けていく。

チケットがソールドアウトした本公演。ライブ中盤では満員のフロアを前に、岡本が「これ全部人ですもんね。みんなこっちに来て見てほしい」と呟く。そして「みんなが目の前にいてくれるから、このライブを実現できています。今日もライブハウスで精一杯ammoをやらせていただきます!」と力強く告げると、北出のカウントから「わかってる」へ突入。メリハリの効いたアンサンブルで楽曲の持つダイナミックさを伝えると、曲中に突然「さっき『こっちに来てほしい』って言ったけど、やっぱ違うわ。この景色が見られるのは、ライブを続けてきたからこその特権!」と岡本が口にし、「ライブハウスやろうか!」を合図に演奏はさらに激しさを増し、この日何度目かのクライマックスに到達した。

岡本優星(Vo/Gt)

岡本優星(Vo/Gt)

その後も岡本はギターのアルペジオに乗せて、「“ここ”まで来たんだ……いや違う、まだ“ここ”じゃない。まだゴールじゃない。この景色を見て思ったよ。これが現実、これがリアリティ」と再び今の思いを吐露。そして「ライブハウスやろうぜ!」「ここは通過点だ!」と叫び、激しい2ビートの「風とオレンジ」でフロアはカオスと化す。刺激的な照明演出を用いた「これっきり」、アッパーな「包まれる」「フロントライン」で聴き手を高揚させると、バンドは当初予定になかった「後日談」を繰り出し、観客のシンガロングととも強固な一体感を作り上げた。

北出大洋(Dr)

北出大洋(Dr)

オーディエンスとの緩やかなやり取りを経て、岡本は「この日を選んでくれて、マジでありがとうございます」と挨拶。そして「今日をしっかり終わらせる」という思いを込めて、パワフルで生命力に満ち溢れた「CAUTION」、観客との大合唱が印象的な「歌種」を連発し、聴き手を優しい気持ちで包み込む「ハニートースト」にてライブ本編を終了させた。

川原創馬(Ba/Cho)

川原創馬(Ba/Cho)

その後アンコールで再登場した3人は、観客とコミュニケーションを図りながら、改めて来場者に感謝の気持ちを伝える。そんな中、岡本が「最近、胸張って『音楽でメシ食えます』と言えるようになりました。新幹線とかで移動してるし。Zeppでやれるようになったら、グリーン(車に)乗れます」と話すと、横から川原が「全然車移動やん!」とツッコミを入れ、観客の笑いを誘う。さらに続けて、岡本は「こうやって若手バンドに夢を見させて、いざその立場になったら全然そんなことないよっていう。これがイベントタイトル名の“リアリティ”」と言い放ち、その場にいる者たちを爆笑させる。そんな、演奏とのギャップある光景を前に、改めて「こういう冗談も含めて、ライブハウスで彼らと過ごす何気ない日常こそが、ammoの言う“リアリティ”なのかもしれない」と強く実感したオーディエンスも少なくないのではないだろうか。

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ほっこりしたやりとりを経て、バンドはメジャーデビューに際して用意した新曲「何°Cでも」でアンコールを開始。最新曲ながらもすでにアンセム級の輝きを放つこの「何°Cでも」に、フロアからは無数もの拳が突き上がる。そして、小気味良いリズム感の「賭け愛」とダイナミックな歌と演奏で聴き手を圧倒させる「初恋病」にて、約2時間におよぶ単独ライブを締め括った。

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ライブハウスシーンやインディーズ界隈ではすでに絶大な人気を誇る存在だったammoにとって、過去最大キャパとなった今回のZepp公演はひとつのターニングポイントであると同時に、メジャーデビューを経て踏み出した新たな第一歩と言えるもの。その重要な公演に「reALITY」というタイトルを付け、かつ大成功を収めたことは、今後彼らにとってどんな意味を持つのか……その答えは、3月23日からは全国9公演にわたる最新ツアー「THIS IS MODERN OLD STYLE TOUR」含め、ここからの活動を通して示してくれるはずだ。


取材・文=西廣智一 撮影=MASANORI FUJIKAWA

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