現在放送中のアニメのなかで、毎エピソードごとに関連ワードがトレンド入りするほど爆発的な人気を見せている作品がある。それが“グルメ×ファンタジー”アニメ「ダンジョン飯」だ。本作は九井諒子による同名漫画が原作。ファンタジーの定番である“ダンジョン”を探索しながら、そこにはびこる魔物を調理して“食べる”ことをテーマにしている。それもただ食べるだけでなく、魔物の生態や体内構造を詳細に描き、そこから導かれる下処理、調理法にいたるまでの工程を丁寧に活写。そのリアルで美味しそうな料理の数々が物語の軸となっている。これまでに放送されたエピソードを振り返り、印象的な魔物料理を紹介したい。

【写真を見る】干しスライムが入った「大サソリと歩き茸の水炊き」を恐る恐る口へ運ぼうとするマルシル

■食費を浮かすため、魔物を食べてダンジョンを進む冒険者たち

冒険者のライオス(声:熊谷健太郎)と仲間たちがダンジョン内で強大な魔物、レッドドラゴンに遭遇し、パーティーが壊滅するところから本作は幕を開ける。ライオスの妹、ファリン(声:早見沙織)の魔法で外へ脱出した一行だが、ファリンはレッドドラゴンに食われてしまった。消化されてしまう前に妹を救いだそうとするライオスは、食糧も金銭も迷宮内に置いたままであることから、食糧をダンジョン内で確保することを思いつく。実は彼は、以前から密かに魔物料理に憧れていたのだ。

ライオスが魔物を食べることに意欲的なのに対し、パーティーのメンバーであるハーフエルフ魔術師マルシル(声:千本木彩花)は露骨に嫌悪感を示すなど否定的。もう一人の仲間で、罠や宝箱の専門家でもあるハーフフットのチルチャック(声:泊明日菜)もどこか不安げ。そんな3人の前に、ダンジョン内で自給自足しながら生活し、魔物の調理にも精通しているセンシ(声:中博史)が現れる。レッドドラゴンを食べることに興味を持った彼が一行に加わり、かくして新たなパーティーが結成される。ライオスたちは再びダンジョンの奥底へと突き進み、魔物料理という未知の世界にも挑んでいく。

■高級食材!干しスライムを投入した大サソリと歩き茸の水炊き

第1話で食材になったのが、大サソリ、歩き茸といった本作ならではの魔物に加え、ファンタジー定番の魔物、スライムだ。ゼリー状のスライムをどう調理するのか?そこで光るのがセンシの豊富な知識。いくつかの工程を経たうえで天日干しすることで、高級食材、干しスライムになるのだ。調理に際し、スライムの構造がどうなっているのかが図解を使いながら語られていたのも興味深い。乾燥には時間がかかるため、今回はセンシが持っていた干しスライムを料理に使い、大サソリや歩き茸をふんだんに使った「大サソリと歩き茸の水炊き」へ投入。食材の出汁をしっかり吸った干しスライムを頬張るライオスたちが羨ましくなる一品だった。

■一見食べられそうにない…動く鎧を調理したフルコース

第3話は衝撃のエピソード。どう考えても可食部のない魔物“動く鎧”が食材だ。どうすれば鎧を食べられるのか…。そんな不可能に挑むのが「ダンジョン飯」の神髄。ライオス動く鎧と戦うなかでその正体を突き止める。実は貝のような軟体生物が鎧の中に群棲し、動かしていたのだ。

それがわかれば、あとは倒して調理するのみ。美味しそうな貝料理にしか見えない「動く鎧のフルコース」に、視聴者の口内を涎の洪水が襲った。一方で、料理のなかにとある失敗作が混ざっていたのも、未知の食材を取り扱う状況ではしかたない。「こんな魔物食べられないだろう!」を覆していく展開に、思わず引き込まれてしまう名エピソードだ。

■生で食べると危険なジャイアント寄生虫

全視聴者を震撼させたのは第7話。この時の食材はジャイアントクラーケンという超巨大なタコやイカに似た魔物…に、寄生していたジャイアント寄生虫だ。どこからどう見てもグロテスクで美味しそうには見えない寄生虫も、ライオスセンシにとってはただの食材。鰻のようにきれいにさばき、元が寄生虫とは思えない見事な蒲焼き&白焼きを完成させた。

完成した魔物料理を美味しく食べる一行だったが、調理中にこっそり、巨大寄生虫を生でかじっていたライオス…。なんと巨大寄生虫にさらに寄生していた、アニサキスのような寄生虫に当たってしまう。痛みで悶絶するライオスの姿に、視聴者も思わずXで感想を投稿しまくり。「アニサキス」がトレンド入りする事態となった。生食や寄生虫の危険性も(主人公が体を張って)伝えてくれる前代未聞の作品。これぞ「ダンジョン飯」、ああ「ダンジョン飯」。

魔物という存在のリアリティを実在の生物になぞらえ、料理を通じて高めている「ダンジョン飯」。今回紹介したメニュー以外にも多種多様な魔物料理が登場し、観る者を楽しませてくれる。冒険ファンタジーに一風変わったグルメ要素を絡めた本作をぜひチェックしてみてほしい。

文/リワークス(加藤雄斗)

ダンジョンで遭遇する魔物を倒し、調理し、食べる(!)冒険者たちの姿を描く「ダンジョン飯」/[c]九井諒子・KADOKAWA 刊/「ダンジョン飯」製作委員会