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単なるレグノの進化に留まらないモデルチェンジとは

執筆:Satoshi Saito(斎藤聡)

ブリヂストンのレグノがモデルチェンジしてGR-XIIIとして新たに登場した。

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じつはこのモデルチェンジは、単にレグノが進化したというだけにとどまらない、ブリヂストンのタイヤづくりを根本から変える大きな変革となるモデルチェンジとなった。

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ブリヂストンのレグノがモデルチェンジ    ブリヂストン

キーテクノロジーとなるのはENLITEN(エンライトン)と呼ばれるブリシストン独自のタイヤ設計基盤技術にある。これを駆使することによって新構造、新形状、新トップゴムを開発。静粛性と快適性に優れたレグノの特徴を継承しながら、進化させている。

ブリヂストンにとって新しいタイヤづくりのアプローチを行っているのがわかる端的な例はタイヤの構造だろう。従来はケース(骨格)やタイヤを構成するゴムによって剛性を作り出し、空気圧による張力で剛性を補強するという考え方で作られていたが、GR-XIIIは、ぜい肉をそぎ落とすかのようにゴム量を少なくし軽量化したうえで、充てんする空気の張力で剛性が高められるように内部の形状を設計しているのだ。

つまり、例えば乗り心地一つとっても従来とは異なる機能を使って作り出しているのだ。ちなみに、タイヤの重量は従来比で10%前後の軽量化を実現しているという。

またノイズの要因となる路面からの振動も、ゴムボリュームで減衰するのではなく、新コンパウンドに振動(≒ノイズ)を吸収する働きも持たせることで、ノイズ低減を図っている。

つまり全く違ったタイヤの作り方で静粛性や快適性を先代よりも進化させ、さらに時代のニーズに合った性能を盛り込んでいるというわけなのだ。

さっそく試乗、まずはテストコースへ

試乗にあたって興味をそそられたのはタイヤの作り方が180度といっていいほど変わったこと。果たしてレグノの強みである静粛性、乗り心地はどう変化しているのか。また操縦性はよくなっているのか。

まずはテストコース内で、静粛性と乗り心地を中心にテストしてみた。走り出してまず感じたのはその滑らかなタイヤの転動感だった。転がり抵抗の少ないタイヤならではのスムーズな走り出し、そして滑らかな走り味が心地よい。

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ブリヂストンのレグノがモデルチェンジ    ブリヂストン

うんと意地悪くタイヤの乗り心地を観察してみると、タイヤが軽いことによる振動の出方に従来のレグノとの違いがみられるのだが、ゴム量が多く重い従来モデルよりも、主にサイドウオール(≒タイヤ側面)がしなやかに変形している感触があって、よりしっとりしてマイルドな乗り味になっている。特にそれを感じたのは直径10mmほどのロープの上を新旧タイヤで通過したときの振動の違い。

GR-XIIIの方が軽くゴム量が少ないため振動の抜けが素早くすっきりした乗り味になっている。これも新旧の違いとして挙げられると思う。

乗り味がマイルドだと操縦性はあまり期待できないのでは? と思われるかもしれないが、これもしっかりよくなっていた。基本スタンスはプレミアムコンフォートタイヤなので、切れ味のいいスポーツ性を期待してはいけないが、タイヤのトレッド面の変形や歪み、ねじれ、サイドウオール部のたわみが、たぶんものすごくバランスよく整っている。

120km/hのレーンチェンジでの落ち着き、無駄な修正舵の少なさも確認でき、運動性能の向上も認められた。

公道ではどうか? これが刷新されたレグノの評価だ

そんなテストコースでの印象だったが、それではリアルワールド、一般道での印象はどうだろう。BMW i4で試乗した。

まず感心したのがその静かさと滑らかさだった。パワーユニットからノイズと振動が発生しないEVの良さをそのまま生かされている。また従来はタイヤダンピングがソフトで足回りの引き締まったクルマとの相性はイマひとつだったが、車重が重く足回りが引き締まったi4と組み合わせても不協和音はなく快適だった。

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オリジナルのi4と比べると全体にややマイルドで穏やかな印象になっている。操縦性についても、タイヤのヨレからくる応答遅れは感じられなかった。

一般道では、路面の細かなうねりや目地、段差を上手にいなして快適な乗り心地を見せてくれた。興味深かったのは、テストコースのところでも少し触れたが、タイヤが軽いゆえの振動の入り方の違いだ。

低速で路面のそれほど大きくないひび割れを踏んだ時、もちろんノイズショックも大きくないのだが、それと判るような感触が伝わって来るのだ。タイヤの軽さからくるもの、またサイドウォールが全体的に変形することで起こる独特の振動の伝わり方といったものが、煩わしくない範囲で乗り手に路面の様子を伝えてくれる。そんなインフォメーション性の良さがある。

またタイヤの軽さは、発進停止、段差の厭離声、レーンチェンジでの足元の軽さ感としても感じられた。これもGR-XIIIの美点に挙げていいと思う。

あえて言えば、直進から指半本分以下の領域の応答性が気になった。たぶん、この部分の応答のダルさは多くのドライバーにとって穏やかで落ち着きがあると感じるのだろうと思うが、その一方でこのダルさをもう少し詰めてもらえると、さらにドライブフィールがよくなるのでは…と思えなくもない。

いやじつはGR-XIIIに乗っていると、軸足にコンフォート性能があることをつい忘れてしまうくらい全体に整った操縦性のいいタイヤに仕上がっているのだ。

静粛性、乗り心地を進化させたうえで、操縦性を大幅に向上させたレグノGR-XIIIは、より広いユーザーのニーズを満足させることができるタイヤであるといっていいと思う。同時にこれからのブリヂストンのタイヤ作りの方向性を示唆する新世代のタイヤであり、これから登場するタイヤがより楽しみになった。


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