第88回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した感動作『インサイド・ヘッド』の続編『インサイド・ヘッド2』が8月1日に公開される。それを記念し、劇場未公開だった『私ときどきレッサーパンダ』が15日から公開。この2つの作品はちょっぴり大人に成長する物語を描いた傑作だ。しかしなぜ『インサイド・ヘッド』と『私ときどきレッサーパンダ』はこんなにも共感できるのか。今回は両作の共感性の高さについてひも解いていく。

【写真】新しい感情のキャラが登場! 楽しみすぎる『インサイド・ヘッド2』

 『私ときどきレッサーパンダ』はドミー・シー監督が、自らの成長過程で経験した感情の変化を基に制作された。当時シー監督は、母親にとっていい子であろうと頑張っていたけれど、ちょっぴり大人になっていくにつれて気持ちの浮き沈みが激しくなったり、小さなことを気にするようになったり、突然やってきた自身の“感情の変化”に戸惑ったそう。そうした誰にでもある経験が、主人公メイの母親の前では“真面目で頑張り屋ないい子の自分”と、友達の前では“好きなことに夢中な等身大の自分”の間で〈自分らしさ〉に葛藤するというキャラクター設定に反映されている。

 一方、『インサイド・ヘッド』は、『私ときどきレッサーパンダ』の製作総指揮も務め、現在はチーフ・クリエイティブ・オフィサーとしてピクサー作品を世に送り出しているピート・ドクターが、自身の娘が成長する姿を見て、娘の頭の中では何が起きているんだ?と思い制作した感動作。ドクターは物語の着想について「僕の娘はとても活発でエネルギーにあふれていたのに、12歳になった途端、子供の頃の楽しさがなくなってしまったんです。彼女に何が起きたのか? 娘が成長していくのを見ていて、いろいろ考えさせられたのが始まりでした」と語っており、誰もが子どもの頃に経験したうれしい気持ちや切ない気持ち、家族にまつわる温かいメッセージを描いた『インサイド・ヘッド』は、多くの人の共感を呼んだ。

 両作とも大人になる過程で経験する“感情の変化”を見事に描いた作品だが、実はシー監督は『インサイド・ヘッド』のストーリーボードアーティストとして絵コンテを担当していた。感情たちの世界を舞台に、どうしたら誰もが共感できるストーリーになるのかを考えた経験があるからこそ、『私ときどきレッサーパンダ』でも大人になっていく女の子の感情を繊細かつ丁寧に描けたのだ。

 ドクターは『私ときどきレッサーパンダ』について「映画を見る時に、人々は“こんな映画は見たことがない”と感情を刺激する体験がしたいんじゃないかと思うんだ。『私ときどきレッサーパンダ』を手掛けたドミー・シー監督の頭の中は、すごく不思議で独特。唯一無二の独特な彼女の才能が、ひねりを利かせつつも誰もが共感できるピクサーらしい映画を生んだと思う」と自信を見せている。

 3月は出会いと別れの季節であり、親子や友達との関係にも変化が訪れる季節。そんな時だからこそ、〈本当の自分らしさとは?〉と悩みながらも自分と向き合おうとするメイの姿に、きっと勇気と元気をもらえるはずだ。

 映画『私ときどきレッサーパンダ』は3月15日より全国劇場公開。『インサイド・ヘッド2』は8月1日より全国劇場公開。

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