今年で12年目となる『文房具屋さん大賞2024』。人気の文房具屋さん13社が集結し、この1年に発売された新作文房具から約1800点をノミネートし、一品ひと品を吟味して審査。「機能」「デザイン」「アイデア」という観点から、各ジャンルで優れた商品が選ばれた。

 日刊SPA!では、【手帳部門】のBEST3を公開。スマホでのスケジュール管理をしている人も多いなか、あえて“アナログ回帰”したくなる逸品を紹介しよう(本記事は『文房具屋さん大賞2024』より、一部抜粋、編集したものです)。

◆第1位:キャンパス ダイアリー2024 マンスリー・スタンダードタイプ ハーフサイズ

開発元:コクヨ/価格:495円/サイズ:W 179×H126㎜/重さ:67g/カラー:ブルー、限定柄/ページ数:64ページ

 キャンパスシリーズの書きやすさはそのままに、コンパクトで書きやすいマンスリータイプのダイアリーが新登場。

 狭いスペースでもしっかり広げて記入できるハーフサイズがうれしい。タブレット端末やパソコンの前の省スペースでも見開きでしっかり使いやすい。

「狭いスペースでも使いやすく、リモートワークや出先での仕事にぴったり!」(福島槙子氏)、「PCのキーボードの手前のスペースで書けるスケジュールが便利すぎる!」(石津 大氏)。

◆第2位:ジブン手帳Lite 2024

開発元:コクヨ/価格:3080円/サイズ:W130×H210㎜/重さ:172g/カラー:ネイビー、ライトピンク、ベージュ/枚数:96枚

「ライフログをもっと手軽に」のコンセプトから生まれた「ジブン手帳Lite」。

 24時間軸はそのままに、必要な項目に絞って書き込める。「24時間軸でジブンの睡眠時間までも週単位で見渡せます。ジブンのためのジブン手帳です」(猪口フミヒロ氏)。

◆第3位:ノルティ ティオシリーズ

開発元:日本能率協会マネジメントセンター/価格:605円~1980円/サイズ:W148175×D3~9×H210~218㎜(A5サイズ)/重さ:109.5g~216g/カラー:全2色(手帳・ノート)/全2種6色(カバー)/ページ数:80~128ページ(手帳)/80~176ページ(ノート)/種類:カバー2種、手帳3種、ノート6種

 カバー・手帳・ノートの3つをそれぞれ自由に組み合わせてカスタマイズできる3in1手帳。シーンや使い方で組み合わせを楽しめる。

「行動や目的で編集する、自分だけのカスタマイズ手帳。1年後の自分があきらかに変化する」(宇田川一美氏)

◆手帳部門第1位「キャンパス ダイアリー2024」の商品開発秘話

 今年の手帳部門を制したのはコクヨの「キャンパスダイアリー2024 ハーフサイズ」。日本手帖の会代表の折比嘉育郎氏が、商品開発に携わったコクヨの清田広太郎氏に話を聞いた。

手帳が好きな人

【折比嘉 育郎(おりひかいくお)】
日本手帖の会代表。全国で手帳総選挙を開催し、自身も新しい手帳との出合いに常にワクワクしながら、オリジナルの使い方などを研究している。

手帳を作る人

【清田 広太郎】
開発本部 開発第1部 企画開発第1G。入社以来、営業、販売企画、商品企画、事業戦略を歴任。現在はダイアリーとグローバルノート戦略に従事。

アフターコロナに求められる手帳のニーズをしっかり抑える

折比嘉:手帳部門の1位受賞、おめでとうございます。

清田:ありがとうございます。ハーフサイズの手帳は各社から発売されているので、その中で弊社の商品を1位に選んでいただいたのは非常に光栄です。受賞をきっかけにして多くの人に商品を知っていただき、手に取ってほしいです。

折比嘉:2024年版の限定表紙デザインもおしゃれですね。

清田:ナチュラルガーデン柄はサイズ違いも含めて、文房具屋さんで人気商品にランクインするなど、とても好評です。毎年、限定デザインにはかなり力を入れているので社員一同喜んでいます。

折比嘉:ハーフサイズは、コロナ禍でワークスタイルに変化が生じて注目されたサイズですよね。テレワークで仕事をする人が、パソコン前の省スペースでノートや手帳を開きたいというニーズが高まって。

清田:その通りです。ただ、今年はコロナが5類に移行して、以前の働き方と新しい働き方の二極化が顕著になりました。そういう意味では、ハーフサイズに新しい価値を付加してスタンダードサイズとして広めていけたらいいなと思っています。

折比嘉:スタンダードサイズとしてとはどういうことですか。

清田:パソコンとセットで使いやすいサイズ感はもちろんですが、携帯性に優れている点や見開きのよさなども含めてアピールし、定番化できればと思っています。

◆どのようにしてハーフサイズが生まれたのか?

折比嘉:ハーフサイズを開発されたきっかけは?

清田:ハーフサイズに関しては先行してキャンパスノートを発売していましたが、仕事をするうえではスケジュール管理が必須ということで今回のダイアリータイプの企画に至りました。

折比嘉:ということは、ターゲットはビジネスユーザーなんですか。

清田:メインターゲットは30~40代の女性に定めています。ただ、純粋なビジネス手帳とはジャンルが異なりますし、シンプルで手に取りやすい価格帯なので、ビジネスユーザーだけでなく、学生さんにも使っていただけたらと思っています。初めて手帳を使う方のエントリーモデルとしてもおすすめですね。

◆商品のこだわりはサイズ感

折比嘉:キャンパスノートは学生さんに馴染みがありますからね。薄くて軽量なうえ、書き味のよさに定評があるので、そこは強みかなと。商品開発にはどういった点にこだわりましたか。

清田:もちろん、パソコン前に置いて記入するのにちょうどいいサイズ感というのが第一です。各社から発売されているハーフサイズはどれも微妙にサイズが違うので、本当に使いやすいのがどのサイズかについては悩みました。

折比嘉:コクヨさんのハーフサイズはちょうどB5ノートの半分サイズになっていますよね。普段キャンパスノートを使っている人にとっては、横幅が揃っているので持ち歩くのに相性がいいと思います。

清田:ふたつ目のポイントは、見開きで見られるマンスリーです。卓上カレンダーのように1ページに1ヵ月分をまとめる案もあったのですが、いくつかのパターンでヒアリングした結果、見開きで1ヵ月が書きやすいという声が多かったので採用しました。

折比嘉:私は個人的に、見開きマンスリーとハーフサイズという合わせ技が効いているように思います。見開きのマンスリー自体は普通の手帳でもよくあるんですが、横長のハーフサイズでこれを採用するとひとつひとつの欄がワイドな感じになるんですよね。正寸の見開きマンスリーよりもたっぷり書けるという印象です。

◆パーソナル向けの手帳を推していきたい

清田:仕事だけでなく、プライベートの予定もたっぷり書き込んでもらえるとうれしいですね。現在ビジネス手帳の市場は下火傾向にあるため、我々はパーソナル向けの手帳を強く推していこうとしており、その方針ともマッチします。

折比嘉:同じく年度計画表も、横長効果で使いやすさが増していると感じます。年度計画表の最適解ではないかと思うほどです。私は長期スケジュールこそアナログで管理すべきだと思っているんですよ。

清田:それは予想外の反応ですね。そんなに年度計画表を使っていただいていると思わなかったので、参考にさせていただきます。

折比嘉:清田さんが考える手帳の未来や今後の商品展開についてお聞かせください。

清田:ビジネス分野ではデジタル化が進んでいて、社内のグループウェアでスケジュールを共有することが一般的になりました。

 私たちは手帳の使い方の多様化にも注目し、スケジュール管理だけではない用途として、今後はますますパーソナルに重きを置いていきたいです。

 ノート型ダイアリーという入口の簡易さや、アナログで管理することのメリット、ライフログの価値などにフォーカスてしっかり提案していければと思っています。より個人に寄り添った形での商品開発を目指したいですね。

<構成/日刊SPA!編集部>