25年以上経った今でも、サッカーファンなら忘れることができない事件がある。W杯フランス大会直前の、日本代表メンバー選考だ。岡田武史監督は直前合宿に参加した選手の中から、三浦知良北澤豪、市川大祐を外した。

 その後、マスコミが何度も取り上げたが、カズと岡田監督の間にわだかまりはないという。しかし、北澤氏はそうではないようだ。鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルに出演した北澤氏は、落選した時のことを振り返った。

 北澤氏は自身が外されるとは思っていなかったそうで、

「外れるメンバーと個人的に話をするから、全員、部屋で待機していてくれと言われ、みんな午前中は部屋にいた。12時近くに電話がきたので、俺に決まったというよりは、誰に決まったという報告の電話かと思った。それぐらい、遅いタイミング。岡田さんの部屋のドアを開けて顔を見た瞬間、目を合わせないので俺だなって思った」

 その後、なぜ外すのかの説明を受け、チームを去ることを決めたという。その時の心境を北澤氏は、

「悔しさはあるし、整理はつかない。アジア予選の途中で呼んだの岡田さんじゃん、と思うのもあった。加茂さんの時は入ってなくて、岡田さんになってから呼ばれた。『岡田さん、呼んだよね』みたいなのはあった。『また外すのか』という感じもあった。『言っちゃ悪いけど、岡田さんのことを少し救ったよね』って」

 どうにも納得がいかなかったのである。

 だがその後、面白いと思えたエピソードがあるという。北澤氏が日本に帰国し、タクシーに乗った時のこと。タクシーの運転手から「北澤君、あれはしょうがないよね。監督が決めることだから。外されることがあるのも、スポーツの世界でしょ」と、声をかけられたのだ。

「それが面白くなっちゃって。おじさんまで関心を持ってくれて、当事者に意見を言ってくるって海外みたいだな、と思ったよね。たかがスポーツに社会が動いて関心を持ってくれるのが嬉しかった」

 W杯に出場することはできなかったが、北澤氏が日本サッカーに与えた影響は、計り知れない。

(鈴木誠)

アサ芸プラス