この記事をまとめると
■雪のなかでバイクに乗る人は少ないが「スタッドレスタイヤ」は二輪用にも存在する
■郵便や宅配バイク向けのスノータイヤが一般的に販売されている
■バイクの世界ではスパイクタイヤも存在している
クルマは雪道ではスタッドレス! ではバイクは?
SUVムーブメントの以前から、日本ではウィンタースポーツファンの多くが、愛車でスノードライブを楽しんできた。パジェロやハイラックスサーフが大人気だった1990年代のRVブーム、レガシィツーリングワゴンなどステーションワゴンのブームは、スキー人気に支えられていた面もあった。
さらに言えば、ランエボやインプレッサWRXなどのWRC直系マシンで雪煙を巻き上げて疾走する……というのもファン・トゥ・ドライブを実感できる時間としてファンには認められているところだろう。つまり、四輪ファンにとってスノードライブはそれ自体がひとつの楽しみ方として捉えられている。
一方、二輪の世界ではスノーライディングというのは、ごくごく一部の好事家が楽しんでいるという印象が強い。そもそも冬季になると非降雪地域においても冬眠状態になるライダーも少なくない。冬は二輪にとってオフシーズンといえるのだ。
そのため、四輪では冬が近づくとスタッドレスタイヤに履き替えたり、降雪対応を考慮してオールシーズンタイヤを選んだりするが、二輪の世界では一般ユーザーがスタッドレスタイヤに履き替えるという印象は薄い。
そもそも二輪ではスタッドレスタイヤではなく「スノータイヤ」と呼ぶことが多い印象だ。二輪用タイヤのビッグネームであるIRC(井上ゴム工業)のホームページを見ても、タイヤの種類としてオンロードやオフロード、スタンダードといったラインアップのなかに「スノー」というカテゴリーで分類されていたりする。
たとえばIRCにはSN12という圧雪路向けのスノータイヤがある。こちらのイチオシサイズは70/100-14と80/100-14になっている。二輪に詳しい人であれば、14インチタイヤということで、郵政カブ向けのサイズであることが想像できるだろう。
そのほか、IRCの定番スノータイヤといえる「SN22/SN22S」でも、フード系の宅配でおなじみの3輪スクーターに適応したサイズを中心としたラインアップとなっている。
同じようなサイズを使えるモデルに乗っている二輪ユーザーであれば履くこともできるだろうが、バイク用スノータイヤは、基本的に「働くバイク」に向けた商品企画といえる。いわゆるフルカウルのスポーツモデルにスノータイヤを履かせて、雪道を走るための商品企画というのは日本では成立しないといえる。
二輪の世界ではスパイクタイヤOK!?
ただ、二輪での雪道走行においては、チェーンを巻くという手法もある。とはいえ、こちらも、ホンダ・スーパーカブやジャイロ系、ヤマハ・ギアなどのビジネスバイクのサイズがメインターゲットとなっている。
もっとも、趣味のスノーライディングという楽しみが存在しないわけではない。前述したように一部の好事家においては日本最北端の宗谷岬に元旦に集合するという年越しツーリングが定番イベントとなっている。
さすがに北海道で長距離のツーリングを楽しむとなるとチェーンでは耐久性の面で厳しく、スノータイヤでは雪上グリップが心もとない。
そのため、タイヤのトレッド面に金属ピンを打ったスパイクタイヤを使うライダーが多いというウワサだ。スパイクタイヤは海外から輸入されたものだったり、国内で自作したものだったりするという。
なぜなら、平成2年(1990年)7月に公布された『スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律』によって国内大手タイヤメーカーは、1990年以降スパイクタイヤの製造を中止しているからだ。
金属製のピンが圧雪や氷に食い込むことで雪上では圧倒的なパフォーマンスを示すスパイクタイヤだが、ピンが舗装路を削り取ってしまい粉じんを発生させるという大きな欠点がある。
この法律では『何人も、指定地域内の舗装道路の積雪又は凍結の状態にない部分において、スパイクタイヤを使用してはならないとし、これに違反した者は10万円以下の罰金に処する』としている。
なお、同法律において『重量が小さいこと及びスパイクタイヤの普及状況からみて、原動機付自転車に係る粉じん問題は小さいと考えられることから対象から除外』されている。つまり、原付バイクであれば、スパイクタイヤの走りを味わうのは、ただちに違法というわけではなかったりするのだ。
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