【元記事で読む】
舞台ミュージカルなど多方面に活動する俳優・廣野凌大のアーティストプロジェクト・Bimi。「Bimi=美味」というアーティスト名のとおり、彼の音楽ルーツであるパンク・ラウド・ヒップホップに加え、和モノ・エレクトロ・R&B・歌謡など様々なジャンルを雑食的にミクスチャーした独自のスタイルは、音楽業界の中でも異彩を放ち続けている。

Bimiアーティスト写真

2021年から音楽活動を続けてきたBimiは、昨年10月にEVIL LINE RECORDSからメジャーデビュー。4ヶ月連続でのデジタルシングルリリース、12月と1月のWarp Shinjukuでのワンマンライブ開催など、デビューしてから一刻も立ち止まることなく精力的に活動を続け、今回待望の1st EP「心色相環(しんしきそうかん)」を3月13日にリリースした。

今回のEPにはデジタルシングル4曲に加え、書き下ろしの新曲とインディーズ時代の楽曲のリミックスver.の計6曲を収録。公式オンラインショップ・ELR StoreとKING e-SHOPのみで購入可能な限定盤には、昨年10月16日Spotify O-EASTで開催された音楽イベント「Bimi Fes turn 1」の模様を収録したBlu-rayが付属される。これまでにBimiのライブを見たことがない人も、Bimi初のライブ映像化となる今作をきっかけに本能の赴くままに感情をぶつける彼のパフォーマンスを味わってもらいたい。

ここからはEPに収録される6曲のレビューをお届けする。今作のテーマは“喜怒哀楽“。Bimiらしいユニークな切り口から紡がれる感情とは、いったいどういったものなのだろうか?

M1「博徒街道」
「Life is ギャンブル」という彼の座右の銘に違わぬ、賭博に興じる人間の生き様を描いた変幻自在のラップナンバー。賭場の空気に身を任せるような浮遊感のあるトラックに日本古来の伝統的な賭博文化を連想させる和楽器のサウンドを掛け合わせることで、ただの遊び人ではない、ある種の矜持と誇りを感じられるドープな1曲へと昇華させている。賽の目のようにコロコロと転がる鍵盤打楽器の音色も、勝負の行方がどちらに転ぶかわからないギャンブルの楽しさを表すのに一役買っていると言っていいだろう。
麻雀ポーカー・パチンコ・丁半といったありとあらゆる賭博を網羅したリリックからは、傍から見ればぶっ飛んでいるギャンブラーのイルな思考回路の一端を垣間見ることができる。特に確変が始まったと思われる後半部分のバースは、撥音多めの言葉をフックと緩急をつけながら隙間なく詰め込み、遊び心満載なフロウによって次々と韻を踏む様が聴いていてとても気持ちがいい。ギャンブラーの心理状態をこの曲でたっぷりと味わえるはずだ。

M2「怒鈍器」
ストレスと破壊衝動をテーマに綴られた、ヒップホップとロックをミクスチャーした“静”と“動“の配分が絶妙な1曲。理性を放棄したことを宣言する序盤のパートを経て1番後半の「爆音は止まねえが」を境に歌声に乗せた感情が一気に爆発する様は、ストレスが臨界点を突破した合図であり、その破壊衝動は聴く人の心に爪痕を刻み付けるかのように苛烈だ。この曲は歌声や歌詞だけでなく楽器の音でもそういった衝動がしっかりと表現されており、ハードロックテイストなギターの音色、荒々しく重たいドラムの音など、聴こえてくる音がとにかく分厚いのも特徴である。
言葉と戯れるかのように短い単語を次々と投入していく中盤の高速ラップパートのリリックには、「稚内」「お相撲さん」「美味いアワビ 海老やカニ」といった一見脈絡がなさそうな単語が次々と登場するが、序盤の理性放棄宣言を加味すると、「欲求のままにやりたいことをやる」というのがこのラップパートの本質なのだろう。

M3「インベーダーインバイト」
濃度の高いヒップホップナンバーが立ち並ぶEPの中での小休止的な立ち位置となっている、浮遊感あふれるエフェクト多めの4つ打ちダンスナンバー。疲弊した現代人の手を取りどこかへ誘うような無垢な優しさを感じられる楽曲で、Bimiの寄り添うような優しい歌声はもちろん、きらめく夜の都会を連想させるシティポップ風味なトラックもすさんだ心にときめきを与えてくれることだろう。この楽曲は「コンビニバイトをしている宇宙人」という、現代社会の内と外のどちらにも属している独特なキャラクターの視点で描かれている。喜怒哀楽の「哀」にあたる部分としては「悲しみ」よりも「可哀想」「哀(あわ)れ」といった感情の方が近いのかもしれないが、この歌詞が書けたのも宇宙人というフィルターを通したからこそなのだろう。

M4「ミツ蜂」
「Bimiの音楽以外は何もいらない」と思わせてくれる、一聴しただけで惹き込まれる“聴くドラッグ”。ハイテンポなテクノポップを軸とした中毒性の高いギンギンなトラック、息継ぎする間もなく畳み掛けてくるBimiのボーカル、刺激的な言葉が並ぶリリック、随所に登場するオーディエンスと一緒に叫ぶパートなど、登場するすべての要素がこれほどまでに強すぎる楽曲もなかなかないだろう。シャウト・しゃくり・高速ラップなど、ジェットコースターのように乱高下の激しいBimiの歌声はライブでさらに映えること間違いなし。群れの数が増えることでミツバチの巣が大きくなっていくように、Bimiとファンの作る音楽空間もどんどん拡大していくことだろう。

M5「babel

シリアスなイントロから始まり、苦悩・挫折・喪失・絶望といった苦しい過去を吐露するように振り返る前半パートから、すべての物事を受け入れもがきながらも人と関わることで前に進む後半パートを経て、最後に「俺はまだ死んじゃいない」と心の内を叫ぶ。メジャーリリース1曲目を飾ったナンバーという背景も相まって、この楽曲からはBimiの今後の活動に対する並々ならぬ決意が伝わってくる。特に「Take it all」から始まる英詞のシャウトは、聴いている者の心を揺さぶるのはもちろんのこと、彼自身の心をも奮い立たせているに違いない。タイトルのモチーフとなったバベルの塔は、その逸話からネガティブな意味で使われることも多い単語であるが、「人間の多様性の象徴」と捉えるBimiの解釈はなかなかに興味深く映る。

M6「輪 -味変-」
インディーズ時代の2022年にリリースされたライブ定番楽曲「輪」のリミックスバージョン。Bimiのフロウや言葉尻のニュアンスは原曲よりもかなりメリハリの付いたものへと変化している。最もわかりやすいのは「切腹切腹切腹かます」から始まる後半以降で、気だるげに淡々と紡いでいた原曲のフロウと比べると、今回の「味変」は現在のBimiの遊び心あふれる歌い方を踏襲して、感情や抑揚の付け方をよりダイナミックなものに底上げしている。それはライブを通じて楽曲が育った証であり、ファンと共に作り上げたBimiの音楽の一片でもあるのだ。

改めて全6曲を振り返ってみると、枠に囚われない型破りな楽曲、リスナーとともに熱狂するための楽曲など、切り口は楽曲ごとに様々。共通点を挙げるとすれば、ヒップホップを軸としたミクスチャーな音楽であること、そしてBimi本人の「心に正直なリリック」が綴られていることではないだろうか。結果として“型破り””エキセントリック“と評されるだけで、「既存の枠からはみ出した人間のために頑張る」と過去のインタビューでも話しているように、彼の音楽表現はいつだって心の赴くままなのだ。

4月に東京と名古屋で1st EPのリリースパーティーが行われたあとは、5月4日東京ガーデンシアターで開催される音楽フェスEVIL LINE RECORDS 10th Anniversary FES.“EVIL A LIVE” 2024」にも出演予定。このフェスではODDLORE(KOYA・JOSH)&サイプレス上野ロベルト吉野とのコラボパフォーマンスも決定しており、彼らと交わることでどんな美味が生まれ、どんな後味を残してくれるのか、期待が高まって仕方がない。ほかにも、4月1日から始まるドラマ「Solliev0」のEDテーマとして新曲「Safe Haven」を書き下ろすなど、1st EPの発売以降もBimiの活動は積極的に展開されていく。2024年はBimiの可能性をさらに広げる飛躍の年となるだろう。今後の活動にも注目だ。

Bimi Major 1st EP 「心色相環」


心色相環通常盤

通常盤CD Only
品番:KICS-4135
価格:¥2,750 (税込)
CD封入特典:ロゴステッカー通常ver.(初回製造分のみ)

M1. 博徒街道
M2. 怒鈍器
M3. インベーダーインバイト
M4. ミツ蜂
M5. babel
M6. 輪 -味変-

心色相環ELR Store限定盤

 

ELR Store限定盤CD+Blu-ray
品番:NKZC-52~3
価格:¥8,250 (税込)
CD封入特典:ロゴステッカー限定ver.(初回製造分のみ)

Disc1(CD)
通常盤と同内容

[Disc2(Blu-ray)]
・Bimi Fes turn 1本編より9曲
M1. Question (feat. ARIMATSU)
M2. LOVE
M3. Die young
M4. weapons
M5. inner child
M6. beast
M7. selfy
M8. babel
M9. 輪
・Behind the ScenebabelMusic Video #03

Listen Now: https://elr.lnk.to/Bimi1DGTW
Buy: 
https://elr.lnk.to/Bimi1stTW
Bimi 独自の切り口で“喜怒哀楽”を描いた1st EP「心色相環」全曲レビュー