『悪なき殺人』(21)のドミニク・モル監督最新作『12日の殺人』(公開中)。このたび、本作が実在する事件をもとにしたフィクションであることが明かされた。

【写真を見る】2013年フランスで起きた未解決事件を元に製作された『12日の殺人』

本作は、第75回カンヌ国際映画祭プレミア部門出品、第48回セザール賞で作品賞、監督賞、助演男優賞、有望若手男優賞、脚色賞、音響賞と最多6部門を受賞し、第28回リュミエール賞など各映画賞で高い評価を得たサスペンス。10月12日の夜に、21歳の女性クララがなに者かによって火をつけられ、翌朝焼死体として発見された。地元警察はヨアン(バスティアン・ブイヨン)を班長とする捜査班を結成。彼らの聞き込みによって次々と容疑者が浮上するも、事件はいつしか迷宮入りとなってしまう。

今回、本作が実際にフランスで起きた事件を元にしていることが明らかに。原作は、ポーリーヌ・ゲナが1年にわたるベルサイユ司法警察での取材をもとにした「18.3: Une annee a la PJ(刑事訴訟法18.3条:司法警察での1年)」。実在の事件は、2013年5月にフランスのセーヌエマルヌ県ラニー・シュル・マルヌで、モード・マレシャルという当時21歳の女性の焼かれた遺体が発見されたことで明るみとなった。彼女は亡くなった夜、近所のパーティーに出席し、午前2時30分ごろに会場をあとにする。その1時間後、彼女の焼けた遺体は警察の巡回によって道路脇で発見された。検視結果によって、ガソリンをかけられて火をつけられたという証拠があり、彼女は生きたまま焼かれたことが確認される。広範囲での捜査にもかかわらず、容疑者を特定する監視映像や電話記録を発見できず、目撃者からの情報も乏しかった。関係者への取り調べや監視も行われたが、捜査は発展せず、有力な手がかりや容疑者は見つかっていない。この事件は地域社会に大きな衝撃を与え、当時彼女を追悼するための無言の行進に500人が集った。事件から10年経過した現在でも未解決のままで、手がかりを求め続けている。

さらに、本作を鑑賞した元刑事らから「リアリティ性が高い」、「刑事の心理状態の変化や仲間内でのやり取りなど、現実を見せられているのかと錯覚する」、「警察官が感情移入して繊細に揺れる心の動きが見事に描かれいて」といったリアルに描かれた内容を評価する多くの感想コメントも届いた。

事件解決のため奔走する刑事たちの姿を繊細に描きだす『12日の殺人』。はたしてクララの命を奪った真犯人を捉えることができるのか?元刑事たちからもそのリアルな描写を評価された本作をぜひ劇場で見届けよう。

■<オピニオンコメント>

●秋山博康(元徳島県警捜査第一課警部、犯罪コメンテーター)

「捜査とは、犯人と証拠を発見することです。事件は生き物と言われ、捜査中に多種多様のアクシデントが付きものです。必検を誓い捜査を展開しますが、捜査が長期化すると捜査士気が低迷化します。この映画で地道な捜査官の執念を観てほしいです」

●佐々木成三(犯罪評論家)

「刑事の私生活、被害者感情、生じるバイアス。負のスパイラルが連鎖し、起こる未解決事件。刑事の異動時期に、何故か発生する大きな事件。場面一つのリアリティ性が高い!cold caseの原因になりえる要素が詰まった映画だと感じました」

●西村虎男(元石川県警特捜刑事)

「なんともリアルな映画だ!冒頭の焼死体の生々しさにドキッとしながら、殺人事件捜査に従事する刑事の心理状態の変化や仲間内でのやり取りなど、現実を見せられているのかと錯覚するほどの見事な描写。ぜひともお勧めしたい作品だ」

一青窈(歌手)

「『12日の殺人』

まるで捜査官と一緒に未解決事件を調査しているような気分になる作品。

たしかに世の中にたくさんの事件あるのに

それらの殆どが男の人たちによって捜査されることの違和感に着目させられた。

毎日接してる家族の本音を知らないことだってあるし

大好きな恋人の気持ちがうまく分かんなくて悶絶するし

ましてや犯罪者の言動なんてそう簡単に理解できる訳がない。

人生とは自転車でコースを周っているだけのようにも思える時もあるし

突然そこからOUTだってもちろんありうる

その世界に無理やり関わらざるを得なかった

人々の戸惑いや葛藤、悲しみ

警察官が感情移入して繊細に揺れる心の動きが見事に描かれい

人間の行動心理の謎について考えさせられた。

じわじわとクる」

●吉川祐二(元警視庁刑事、警察監修)

「刑事のプライベートや葛藤を、とてもよく映しだしている映画。本作を通して、刑事や警察官たちも、実はこうやって悩みながら仕事に従事しているんだという点について見ていただけたらうれしいです。本作に出てくる刑事たちの姿には、いい意味で飾りっ気がない。そういった姿を知ってもらえたら、刑事を見る目が変わってくるかもしれません」

文/サンクレイオ翼

※「18.3. Une annee passee a la PJ」の「e」はアキュート・アクセント付きが、「a」はグレイヴ・アクセント付きが正式表記

『12日の殺人』で描かれる“未解決事件“は実在していた!さらに元刑事たちからオピニオンコメントが到着/[c] 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma