2024年3月8日、衝撃的な訃報が飛び込んできた。人気ゲーム『ドラゴンクエスト』のキャラクターデザインや、漫画『Dr.スランプ』(アニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』)などのヒット作を多数生み出した鳥山明さんがこの世を去ったのだ。なかでも『ドラゴンボール』のシリーズは世界的なヒットとなり、多くの人に愛された作品となった。

同作のキャラクターに扮して活動する“DB芸人”たちの悲しみはひとしおのようだ。彼らにドラゴンボールに関する熱い思いと、訃報に触れた際に湧き上がった思いを語ってもらった。

◆“フリーザ芸人”は何を思うのか

お笑いコンビBANBANBANの山本正剛氏は、フリーザの最終形態に扮するDB芸人漫才で若手のゴングショーを勝ち上がりながらも、売れる気配がなかった。芸人引退を考えていたが、アルバイト先にて披露したフリーザモノマネがウケたことが、DB芸人として活動することのきっかけになったのだ。ある意味人生を変えてくれた鳥山さんの急逝に何を思ったのか。

「お会いした事はありませんが、心にぽっかり穴が空いた感じ。信じられないという気持ちが一番先に来ました」

フリーザ役の声優・中尾隆聖氏とは現在も懇意にしているという山本氏。同時に次のような思いも湧き上がったという。

「直接お会いして『鳥山明先生の作品に出会えてワクワクした少年時代を過ごしたこと、そして芸人になってからもDBで色々やらせて頂きありがとうございます』という思いを伝えられなかったのが無念でなりません」

モノマネ芸は続けていきたい

山本氏はファンに「DB芸人モノマネを見てからドラゴンボールを観ました」と言われたこともあるという。不思議なもので“逆輸入の視聴者”も生んでいたわけだ。今後について次のように話す。

フリーザモノマネ芸は続けていきます、ドラゴンボールを好きな人がもっと増えてくれたら嬉しいです。そして、自分が生きている限り『こんなに素晴らしい作品がある』ということを伝え続けていきたいですね」

今回の訃報に触れ、作品を読み返したくなった人も多いだろう。ドラゴンボールで描かれるキャラクターから「人間の大切なもの」を教えてもらえることも多い。最後に再読する際、注目すべきキャラクターを尋ねてみた。

ミスターサタンが一番分かりやすいのではないでしょうか。逃げ腰とはいえ大きな敵に立ち向かってゆく姿を見たら『僕も頑張ろう!』と思えますよね」

◆修行シーンが刷り込まれている

ラディッツに扮しDB芸人として活動するピン芸人昆布ちゃん。彼に劇中の「好きな戦い」を聞くと、まさにラディッツが活躍する場面だった。

ラディッツとの戦いで、悟空がサイヤ人だと明らかになります。『大猿』や『尻尾部分』などの伏線が回収されていくんですが、『悟空が宇宙人?悪者になるの?』と子供ながらにゾクゾクしていました。それに加えて、ラディッツという強敵に対して、ライバルだったピッコロと悟空が手を組むところは本当にワクワクしましたね」

DB芸人として活動を始めたことが自身の成長にも繋がったと昆布ちゃんは話す。

ラディッツはちょっとマニアックなキャラですよね。情報量が限られた中でアイデアを出し、ネタを作れるようになったのは、芸人として成長させてもらったなと思います」

そんな昆布ちゃん、鳥山さんの逝去が報じられるとX(旧:Twitter)に「何度も何度も助けられた」と感謝とともに冥福を祈った。

「悟空の『修行』が刷り込まれています。どんなに強い敵が現れても、さらに強くなるために修行をするわけです。自分も、できそうもないモノマネを練習したり、お笑いや私生活で辛い事があった際には修行だと思うようにしています。『これを乗り越えると強くなるんだ』とポジティブな気持ちになるのはドラゴンボールのおかげなんです」

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鳥山氏が亡くなっても作品は残り続けるが、ある意味DB芸人もまた“作品”の一部なのかもしれない。改めて、鳥山明さんの逝去に、謹んで哀悼の意を表する。

<取材・文/Mr.tsubaking>

Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

BANBANBANの山本正剛氏