京急電鉄が鉄道業界で初めて、鉄道車両の部品を使用したリノベーション分譲マンションを販売しています。鉄道ファン向けかと思いきや、必ずしもそうではないようです。

初めて鉄道車両の部品を使用した分譲マンション

京急電鉄は2024年3月15日、鉄道業界で初めて鉄道車両の部品を使用したリノベーション分譲マンション「プライムフィット横浜富岡」を報道関係者に公開しました。

「プライムフィット横浜富岡」は、京急富岡駅金沢区)から徒歩17分の立地。もともとは三菱重工の社宅だった6階建ての建物をリノベーションした物件です。2024年2月から販売が開始されており、全64戸、間取りは1LDK~3LDKとなっています。

マンションの入口付近は一見、普通に見えますが、よく見ると線路や架線柱をモチーフにした設えになっています。鉄道部品は共用部に使用されています。使われているのは1500形電車の部品で、現役時代の最終時には大師線で活躍。2023年3月15日に引退し、翌月に解体された車両だそうです。

部屋番号プレートのフォントは、実際に京急の車両に記されている車両番号と同じとのこと。また、各階のエレベーター入口付近に設置されている階数を示す表記は、1500形の側面に取り付けられていた車両銘版が再利用されています。

1階のワークスペースには、京急線の利用者にはお馴染みの赤い座席が網棚ごと設置されています。もちろん座り心地も実車と同じで、ベッドのようなスプリングが入ったフカフカの座席そのままです。さらに、ワークスペースの入室表示には、車両のドアの開閉状況を示す「車側灯」を再利用。使用中の場合は赤く点灯します。ワークスペース内にも、製造年を示す車両銘版が設置されています。

分譲マンションで鉄道部品を使った背景は

分譲マンションで鉄道部品を再利用する理由について、京急電鉄の生活事業創造本部 住まい事業部の担当者は「近年、SGDGなど環境に配慮したものづくりに注目が集まっており、我々の不動産事業でも何かできないか考えていました」と話します。また、「鉄道会社の不動産事業として、個性のあるものづくりができないかということも考えてきました」といいます。

「分譲マンションのため、凝ったものづくりをすると、好みが分散してしまいます。『さりげなく』鉄道の色を出すことを主体に置いて検討を進めてきました 」

鉄道ファン、特に京急ファンにとっては垂涎の住まいかもしれませんが、特にファミリー層からの引き合いが多いそう。物件のすぐ近くに小田小学校・小田中学校があり、そうした点も評価されているそうです。

1500形電車(画像:京急電鉄)。