スタジオジブリ作品の世界観が楽しめるジブリパーク(愛知県長久手市)の新エリア「魔女の谷」が3月16日に開園。それに先立ち、スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーが開園前日の3月15日、囲み取材に応じた。レストラン「空飛ぶオーブン」に登場した鈴木は、魔女の谷で一番感動した点や魅力的な場所を語ったほか、第96回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞した宮崎駿監督作『君たちはどう生きるか』(公開中)に関する秘話も明かした。

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鈴木は「天気も良く、魔女の谷を歩いていて、気持ちが良かった。今日、初めて魔女の谷を見ました。(ジブリパークの制作現場を指揮した宮崎吾朗監督は)中学生のころから知っているが、まさか一緒に仕事をずっとやるとは思っていなかった。三鷹の森ジブリ美術館を作り、映画を作り、そしてジブリパークを作る。吾朗くんの仕事はもともと公園に関する仕事で、立体物を扱ってきた。映画もさることながら、立体物を作らせたら、本領発揮なんだなと改めて思った。吾朗くんが本当に満足したんじゃないか。そんな気がしたし、それが魔女の谷を見て回った一番大きな感想。ちょっとうれしかった」と感想を述べた。

また、魔女の谷で一番感動した点については「建物がみんな本物なんですよね。本物っていうのは本当の建物のこと。今回、吾朗くんが手掛けたものはすべて本物だった」としみじみ語った。魔女の谷で魅力的に感じた場所については「宮崎吾朗監督が手掛けた『アーヤと魔女』の『魔女の家』。さすが自分の映画。細部に至るまで手の内がわかっている。宮崎吾朗監督のガイドで魔女の谷を見て回ったけど、やっぱり力が入っていました。自分で手掛けた作品に関して、なにをどうしたって自分のものだという考えがあるんじゃないですかね。宮崎駿監督作品のもの(『魔女の宅急便』の「オキノ邸」や『ハウルの動く城』の「ハウルの城」ほか)はどうしてもその考え方を理解したうえで作らないといけない。『アーヤと魔女』関連はのびのびと作れたんじゃないかと思いました」と感想を述べた。

続いて、こだわりを感じた点については「汚い部屋(ベラ・ヤーガの作業部屋)はちゃんと映画と同じように再現されていて、僕はとても楽しかった」とコメント。鈴木の出身地である愛知県ジブリパークができたことについては「うれしいですよ。うれしいですけど、辛いこともありますよね。自分の生まれ育った所に、まさか自分がこういった形で戻ってくるとは思ってもみなかったです。そのときのエピソードを1つだけ話します。ジブリパークをやるにあたって日本中、いろんなところからお誘いがあったんです。『愛知でジブリパークをやろう』と言ったのは吾朗くんなんですよね。それを聞いた瞬間、ちょっと嫌なことなんですけど、取材対応が大変になるなと(笑)。取材からどうやって逃げるか、頭に浮かびました。結果として、本当に良かったと思いますね。特に吾朗くんはいろんな諸条件を考えたうえで、この万博(愛・地球博)の跡地が良いと決めたんでしょうけど、なにが良かったかというと、(事業主体が愛知県、企画監修がスタジオジブリなど)民と官が一緒にやる面白さ。上手くいった例なんじゃないかと思います」と延べた。

ジブリパークの今後については「1つ目は(魔女の谷の開園で)当初の目的である5つのエリアが完成。そこに満足するのか、あるいはそこへ付け加えていくのかを考えないといけない。もう1つは(ジブリパークは)来たお客さんのものじゃないかと思うんです。お客さんがどういうふうに面白いのものにしていくのか。それを見ていきたい」と語った。

さらに宮崎駿監督が手掛ける「パノラマボックス」(映画のワンシーンを奥行きのある絵で表現した展示物)をジブリパークでも観るチャンスはありますか?と尋ねると「チャンスはあるんじゃないですかね。宮崎駿は1作品ごとに『パノラマボックス』というものを作っている。『パノラマボックス』は作品ごとにある設定を立体化したもの。もしかしたら、ジブリパークにやってくるかもしれません」と答えた。

また、『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞長編アニメーション映画賞を受賞した後、宮崎駿監督と直接お会いしてどのような会話を交わしましたか?と聞かれると「(3月11日の)記者会見後すぐに会って、とりとめのない話をした。まさか一度、引退を発表して、それを撤回して、もう一回映画作りに取り組んだわけでしょう。アカデミー賞がどうのとか、考えていなかった。それどころか歳が歳でしょう。作っているうちに死んじゃうんじゃないかと(笑)。(宮崎監督は)とにかく最後までたどり着けたことが一番うれしいと強く言っていた。後に冗談で『僕が言っているのはお金のことだ。鈴木さんがお金を出してくれたから映画が作れた』と言っていましたが。アカデミー賞の話は直接会ってしていない。恥ずかしいじゃないですか。顔を突き合わせてね、『お互い良かったですよね』というのはこの年齢になってもうやりたくないんで(笑)。だからそういったやり取りは電話で話した」と語った。

文/山崎伸子

ジブリパークの新エリア「魔女の谷」が3月16日(土)に開園/[c]Studio Ghibli