ここまで疑心暗鬼が常態化するドラマもめずらしい。しかもそれが不倫関係のしがらみの中なのだから、なおさらだ。



『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』8話より©テレビ朝日



 毎週土曜日よる11時30分から放送されている『離婚しない男-サレ夫と悪嫁の騙し愛-』(テレビ朝日)の文字通り、騙し合いが最終話へ向けて暴走している。


 イケメン研究をライフワークとする“イケメンサーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作第8話を解説する。


◆人間関係が灯台下暗し状態



 もう誰を信用してよいのやら。妻・岡谷綾香(篠田麻里子)の不倫の証拠をつかむため奔走する岡谷渉(伊藤淳史)だが、綾香の不倫相手である司馬マサト(小池徹平)に翻弄されてばかりいる。


 第5話ラスト、マンションの隣室に越してきた竹場ナオミ(藤原紀香)がマサトが仕掛けたハニートラップかと思いきや、違った。逆に心を通わせたかと思った高校生の梅比良梓(浅川梨奈)が、とんだ食わせ物だったり。


 まだまだいるはず。裏切り者は必ず近くにいる。最初こそ、綾香とマサトは渉の目を盗んで灯台下暗し的に不倫を楽しんでいたが、今や疑心暗鬼の渉の人間関係が灯台下暗し状態。


◆マサトと同類のヤバさ



 するとやっぱり裏切り者がいた。綾香とマサトの不貞行為を録音、撮影することを促したり、気持ちが沈んだ渉のことを親身になって励ましていた探偵・三砂裕(佐藤大樹)だったとは。


 渉が親権獲得を相談した弁護士・財田トキコ(水野美紀)と業務提携関係にある裕だが、それ以外はまるで素性が知れない。謎オブ謎の人物。すこし考えたら、怪しいに決まっている。


 渉が決死の覚悟で撮影に臨む間、遠隔で指示を出したり、そのあと、渉の頭を優しくぽんぽんしてあげるときでも、裕の目は完全にヤバい。このヤバさ、なるほどなぁ、マサトと同類なのだと気づく。


◆決定的証拠となる響き
 裕が裏切り者であることにいち早く気づいたのは、財田だった。渉が梅比にハニートラップにあったホテル前で待機していた裕につめよる。マサトから脅されて仕方なく……。とその場を切り抜けようとするが、怪しい。


 裕は脅されてなんかいない。むしろ率先して協力している。渉と財田が弁護士事務所で話し込む隙をついて、オフィス外で電話をかける裕。相手は、もちろんマサトだ。


 電話口のマサトに対して「先輩」と呼びかける。先輩? 意外な響きが、ふたりを同類、あるいは同じ穴のムジナ確定の決定的証拠となる。裕のあの異常な目は、悪魔的に目を血走らせるマサト譲りということ。


◆マサトを「カメムシ」と命名



 ここまで目まぐるしい勢いで、次から次へとドラマが二転三転し、展開してきた。最終章に突入した第8話ともなると、さらなる展開へ加速の勢いはとまらない。同類のふたりが、暴走機関車と化すのか。


 マサトの子を妊娠したことを告げるため、綾香が久しぶりにマサトのいる事務所を訪ねる。すると、またまた新キャラ登場。事務所社長・大洗美子(観月ありさ)が、シンガポールから帰ってきた。触れた相手に電撃を走らせるびりびりラケットを手にマサトを尋問する。


 尋問しながら、大洗はマサトを「ドすけべなカメムシが!!」と罵る。なんでカメムシなのかは、よくわからないが、所かまわずに悪の香りを撒き散らしてきた害虫的存在感に対して、「カメムシ」とはうまく命名してくれたものだ。


◆そこに真実はあるのだろうか?



 と思ったら、とんだ茶番。大洗は、例に漏れず、鈴つきの首輪をつけられてマサトに飼いならされている。本作はいつでもどうも油断ならない。ドラマ展開の中で、これは真実だなと思ったら、全然大嘘。


 今度は大丈夫だなと安心して見ていると、次の展開でまた裏切られる。義理と人情ってものがないのか。視聴者は頭を抱えるしかない。でもそこへ、マサトと同類の裕が、実は財田の息子であるという事実が。


 どうやらこれはほんとうらしい。財田は夫の計略によるハニートラップで親権を取られてしまった過去がある。業務提携を結ぶ探偵の裕が息子である事実に気づいているのか、どうか。渉が愛娘を思う気持ち同様に、そこに真実はあるのだろうか?


<文/加賀谷健>


【加賀谷健】音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu