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 もしも地球の空気の濃さが2倍になったらどうなるだろうか? 私たちが息をしている酸素はもちろん、二酸化炭素や窒素だって2倍に増量したとしたら?

 地球の大気は生物が生きるためには欠かせないものだ。息をするために必要だし、気候を調節したり、宇宙からの飛来物から私たちを守ってくれてもいる。

 そんな大切な空気が2倍に濃くなるのなら、きっといいこと尽くめに違いない?どうやらそうでもないらしい。想像を絶する変化が起こることが科学研究で示されている。

 巨大昆虫が出没し、いたるところで山火事が発生、他にもいろいろあるので詳しく見ていこう。

【画像】 大気密度が2倍になると地球はどうなる?

 地球の大気密度はその歴史を通じて大きく変動してきた。2020年に『Science Advances』で発表された研究によると、数十億年前の地球は、現在の金星のように厚く有毒な温室効果ガスに覆われた世界だったという。

 地球表面は溶岩の海であり、初期の大気は微量の窒素と大量の二酸化炭素で構成されており、文字通りの地獄だった。

 しかし、幸いなことに地球は太陽から遠いため、惑星形成時の残りの熱が放出され、水の海が発達することができた。

 地球の大気は、78%が窒素、21%が酸素、残り1%が二酸化炭素などの気体で占められている。大気密度が2倍になるということは、これらすべてが2倍になるということだ。

・合わせて読みたい→鳥は地球温暖化に適応するために体の大きさを変化させている(オーストラリア研究)

二酸化炭素の濃度が上がり気温上昇

 その時まず気づく影響の1つは、気温がかなり高くなることだろう。二酸化炭素のような温室効果ガスもまた2倍になるからだ。

 普段私たちは空気の中身について深く考えることはないが、それは当たり前のものではない。過去を振り返れば、時代によって空気の中身は大きく変化してきた。

 たとえばおよそ5500万年前、「暁新世-始新世温暖化極大(ぎょうしんせい-ししんせいおんだんかきょくだい)」という極端な温暖化が進んだ時代があった。

 その時代、二酸化炭素の濃度は現在の約420ppmの2倍で、2022年の『PNAS』に掲載された研究によれば、この時代の平均気温は32度を超えたという。これは現在の平均気温14度よりもはるかに高い。

 暁新世-始新世温暖化極大が起きた原因としては、地球の軌道の変化など、さまざまな要因が指摘されている。

 だが原因が何であれ、それによる影響は、海面上昇・異常気象・生物(とりわけ海の生物)の大量絶滅など悪夢のシナリオだ。

 海洋の炭酸塩の溶解による海洋酸性化も発生し、霊長類の進化史にも大きく影響したと考えられている。

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この時代に生息していたるウマ科動物の最古の祖先と考えられているヒラコテリウム photo by iStock

酸素の濃度が上がり昆虫が巨大化、火災が多発

 もちろん、酸素だって2倍になる。酸素は私たちの呼吸に欠かせない。ならば酸素たっぷりの空気はさぞやイイものに違いない。

 が、話はそう単純ではない。それを説明するために、やはりかつてあって似たような時代を紹介しよう。

 それは3億6000万~2億9900万年前の石炭紀のことだ。現在の酸素が空気に占める割合は21%ほどだが、その当時は35%もあった。

 酸素が多ければ、それだけ燃えやすくなる。その結果、大規模な森林火災が頻発することになった。

 そして、よく燃える森で繁栄していたのが、体長2m以上のヤスデアースロプレウラ」や30cm以上の長い翅をもつ巨大トンボメガネウラ」だ。

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メガネウラ / photo by iStock

 酸素は生物の代謝にとても重要だ。そして酸素が2倍なら、呼吸をするたびに2倍のエネルギーが得られるということなのだ。

 巨大な昆虫が生息できたのは、そのおかげだと考えられる。

 ただし理由はそれだけでないかもしれない。たとえば、その時代の昆虫は、脊椎動物とそれほど激しく競争しなくてすんだ。おかげで大きく成長できたのかもしれない。

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アースロプレウラの原寸大復元模型(体長2m、横幅45cm) / image credit:Werner Kraus / WIKI commons

窒素が濃くなることで酔った気分になるかもしれない

 ついでに面白い副作用もあるようだ。少し酔ったような気分になるかもしれないのだ。というのも、窒素も2倍になるからだ。

 窒素酔いはダイバーたちにはよく知られており、これを「マティーニ効果」という。

 水中に潜ると窒素の圧力が高まり、体内の窒素濃度が高まる。これによって、まるでマティーニを飲んで酔っ払ったかのような感覚になるのだ。

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photo by Pixabay

大気が重いと飛行機が空を飛びやすい

 空気そのものが重くなることも、大きな影響を与えるだろう。

 たとえば液体を沸騰させるには、その圧力を気圧と同じにしなければならない。しかし空気の厚さが2倍になれば、沸騰させるために必要な圧力も増加する。

 すると普段は100度で沸騰していたはずの水は、120度まで加熱しなければならなくなる。

 さらに、水などが蒸発しにくくなるために、天気にも大きな影響を与えるかもしれない。

 空気は乾燥するだけでなく、風の流れはゆっくりになる。ただし風についてはより強力になる可能性が高く、嵐の日には覚悟が必要かもしれない。

 このように、飛行環境は厳しくなるが、飛行自体は楽になるだろう。

 アルキメデスの浮力の原理によれば、大気密度が2倍になると気球の揚力能力もおよそ2倍になると言われている。

 高度が上がると空気の密度が下がり、その分、飛行機の性能も下がることが知られている。大気が薄くなると抵抗や乱気流が弱くなるが、揚力や推力も下がるので、全体としては機体の運動性能が悪くなるのだ。

 だから反対に空気が濃くなれば、飛行機は楽に離着陸したり、低速で飛行したりできるかもしれない。

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photo by Pixabay

 そんなわけで、大切な空気が2倍になった世界は、困ったことがたくさん起きるが、まったくメリットがないわけでもないようだ。

References:Giant Bugs and Scorching Wildfires Would Appear if Earth's Atmosphere Doubled in Mass | Discover Magazine / written by hiroching / edited by / parumo

 
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地球の大気密度が2倍になったら何が起きるのか?巨大昆虫が現れるかもしれない