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image credit:Caltech/NASA-JPL

 過去数ヶ月間、意味不明な言葉を呟きだしたNASAの探査機「ボイジャー1号」。何とか正気を取り戻してもらおうと、専門家たちが必死の復旧作業を続けていたが、明るいニュースが舞い込んできた。

 47年もの間孤独に宇宙を旅しているボイジャー1号は、現在、地球から約244億km離れた星間空間にいる。

 あまりにも遠く、古い機器であることから「復活したら奇跡」とさえ言われていたのだが、3月に入ってボイジャー1号が一瞬だけ我に返ったかのような意味のわかるメッセージを送ってよこしたのだという。

 もしかしたらこのメッセージで問題解決の糸口が見つかるかもしれないと、現在、研究チームは異変の原因を究明中だ。

【画像】 ボイジャー1号が一瞬だけ我に返る

 NASAの最新ブログ記事によると、3月1日、担当チームはボイジャー1号に対して、特殊な呼びかけをしたという。

 それは壊れたデータを迂回するために、普段とは違う手順を試すためのコマンドだった。

 するとその2日後、ボイジャー1号からの返事が届いた。これは機体に搭載されている「フライト・データ・システム(FDS)」からの信号で、完全に正常なものではなかった。

・合わせて読みたい→ボイジャー2号からお返事キター!太陽圏を離脱して通信が途絶えていたが7か月ぶりに交信に成功(NASA)

 担当チームは当初、このメッセージに首を傾げたという。

 だがディープ・スペース・ネットワーク(NASAの宇宙通信ネットワーク)のエンジニアが解読してみると、一応意味が通じるもので、FDSのメモリから読み出されたデータが含まれていることが判明したのだ。

 「FDSのメモリには、コード(つまり何をすべきかという指示)のほか、変数(コードに使用される値のうち、コマンドや機体の状態によって変わるもの)が含まれている」と、NASAは説明する。

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1977年に打ち上げられた、NASAの無人宇宙探査機、ボイジャー1号 / image credit:NASA

ボイジャー1号の異変の原因がわかりかけてきた

 FDSの役割は、機体に搭載されている科学機器が検出したデータと、機体の状態を伝えるデータを集め、それらを「遠隔測定変調ユニット(TMU)」に送ることだ。

 TMUは受け取ったデータを、バイナリコードにして地球に送信する。

 そして現在ボイジャー1号の様子がおかしいのは、FDSとTMUとの通信がうまく機能していないことが原因ではないかと考えられている。

[もっと知りたい!→]「ボクはここにいるよぅ」NASAのコマンドミスで再び迷子になったボイジャー2号から信号をキャッチ

 だから、TMUが1と0の意味不明な羅列を地球に送ってよこすのだ。

 一応意味の通じるメッセージを受け取った担当チームは今、これをかつての正常なものと比較して、そこに潜むおかしな点をあぶり出し、ボイジャー1号が正気を失った原因を特定しようとしている。

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地球から244億kmの彼方を時速6万1155kmの猛スピードで移動中のボイジャー1号 / image credit:NASA

 だが、なにしろ太陽系から旅立ったボイジャー1号は現在、地球から244億kmの彼方を時速6万1155kmの猛スピードでぶっ飛んでいる。

 地球からメッセージを送っても、ボイジャー1号からの返事が届くのは2日後のことだ。何をやるにしても、とにかく根気がいる作業になる。

 懸命に救助作業を続けるNASAだが、「その結果から、解決策をひねり出し、実行に移すには時間がかかる」とのことだ。

 2024年2月、ボイジャー計画の研究チームは「復旧できれば奇跡だが、我々はまだ諦めない、やれることをやる」と語っていたが、彼らの熱意がボイジャーに伝わったのかもしれない。

 打ち上げ当初、ボイジャー1号、2号の設計寿命は5年だったが、今年で47年目となる。ボイジャー先輩、君はひとりじゃない。みんなが応援しているのだから、もうすこしがんばっておくれ!

References:NASA Engineers Make Progress Toward Understanding Voyager 1 Issue – The Sun Spot / written by hiroching / edited by / parumo

 
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うれしいニュース。ボイジャー1号が一時的に意識を取り戻す。奇跡は起きるのか?