◆迷走と低迷が続くスマパチ

 2022年の1月に5号機が完全撤去、6号機だけの市場になってからパチスロはかなり厳しい状況に追い込まれました。しかし、同年11月に導入されたスマスロから人気が再燃し、復活を遂げたように見えています。

 それに対し、パチンコはパチスロが落ち込んでいた時期にこそ盛り上がったものの「客が付くのは一部機種だけ、ほかは最初だけは客付きがよくても数週間もすれば空き台だらけだよ」とは、都内某店長の嘆き。

 こんな嘆きがそこかしこから聞こえるくらい、パチンコは元気がありません。そうなってしまう最大の要因はホールの使い方があまりにも悪く、抜けるだけ抜こうとして、とてもじゃないけど打つに耐えないくらいにしか回せないから……と、筆者は思ったりします。そういう意味では自業自得だなと思わざるを得ませんが、ただ機械的、スペック的にも迷走している面も否定できません。

◆スマスロとくらべて地味な改変

 スマート遊技機として好調のスマスロと同時に発表されたスマパチは、ホール導入はスマスロから半年ほど遅れはしましたが、2023年のゴールデンウィーク直前という絶好のタイミングで登場しました。その遊技性やスペックに期待していたホールもファンも多かったはず。

 スペック的な改変点としては、ラッシュの引き戻しチャンスであるCタイムを搭載し、ラッシュの爆発力はパワーアップしており、「地味ながらもツボにはまったときの爆発力は期待できるのでは……」と期待されていました。とはいえ、有利区間のゲーム数が撤廃という目玉があったスマスロと比べると、どうしても地味感は否めませんでしたが……。

 そして、これが業界関係者の誰もが口を揃えるほどの大コケに。スマート遊技機導入当初は専用ユニットが足らないという問題があったものの、これでスマパチ用のユニットがだぶ付き、結果としてスマスロの導入を加速させたという皮肉な結果にもなったわけです。

◆スマパチの普及を願うホール事情

 ファンにとっては引き戻しが期待できるといっても、そこまで期待できるほどではない。それなのに初当りだけが重くなったという印象になってしまい、スマパチとP機で同時に導入されたタイトルなどは、P機ばかりに人気が集中するほど。

 では、ホール関係者はスマパチの普及にNOを突きつけているかというと、そうでもないようです。あるホールの店長は「スペック面など問題は多いが、本音を言えばスマパチも普及してほしい。なぜなら玉の補給や回収などにおけるトラブルがなくなり、人件費も削減できるから」と、スマパチのメリットもあると話します。

 パチンコ島はその裏側に玉を下から上へと運んだり、その途中で玉を磨いたりなどの補給や循環の設備があり、経年劣化でトラブルが多発。玉が出なくなって店員さんを呼んだら、上の幕板を開けてガサゴソするのを見たことは誰にでも経験があると思いますが、スマパチではそんなトラブルが一層されます。しかもトラブル対応に割く人員も不要となり、客が付かないこと以外はスマパチの利点は大。しかしながらホールにとって客が付くかどうかが一番大事ですから、現時点ではP機を優先せざるを得ないということです。

◆尻すぼみな新スペック

 思えば実質的な天井である遊タイム、また通常時にいきなり時短に突入するC時短と、2018年の規則改正、CR機からP機への過渡期前後から相次いでメーカー団体は内規を改めてきました。

 しかし、現在の主力機種のほとんどには、それらの機能は搭載されていません。スペックの変化や進化は続いているものの、目玉として出された新機能が尻すぼみになっているというのは、まるで今のスマパチを見ているようです……。

◆ラッキートリガー搭載機が満を持して登場

 それでも低迷するパチンコをなんとかするべく、この3月からはラッキートリガー(LT)搭載機がデビューしました。特定の条件を満たせば今まで以上に玉を出せるというLTは、スペック面の自由度も高まっており、かつてのマックス機のような機種も登場しています。ただ現時点では射幸性の高さに寄せすぎているような印象で、それは果たしてファン側が求めていることなのかどうか。

 もちろんたくさん玉が出る方がいいにきまってはいますが、それを目くらましとしてホールが厳しい運用を加速させるのではないかという危惧もあったりします。回さなくてもヒキ次第でたくさん出ちゃうことが客寄せになるとしたら、ホールはとことん回さないのは言わずもがな

◆多様なスペックを搭載した機種の登場を願う

 それでまた「使えない」とホール側が言うのは勘弁してほしいものですが、せっかくLTで自由度が高い機種開発が可能になるのだから、多様性のある機種の登場に期待しておきたいものです。個人的にはダラダラと遊べるようなものを期待したいのですが、そういうのって「とっとと負けて帰ってくれ」と考えているホール側が一番嫌いますからね。

 とにもかくにもまだ導入して数週間である試行錯誤の段階。今後の方向性は市場の反応を見ながらにはなると思いますが、LTがパチンコ復活の起爆剤になっていただければと願います。

文/キム・ラモー

【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。

パチンコ店に掲示されていたラッキートリガーの告知(筆者撮影)