2024年春の鉄道ダイヤ改正では、減便も多い一方で、増発を行った鉄道会社も。コロナ禍の減便で沿線に衝撃が走った列車本数が戻るところ、戻らないところの明暗が分かれています。

首都圏私鉄で異例? 物議のダイヤ解消へ

2024年3月16日に多くの鉄道事業者でダイヤ改正が行われました。今回もJR山手線などをはじめとして減便を伴う路線が多いものの、コロナ禍で減った本数を戻す動きもあります。そのひとつが西武新宿線です。

西武新宿線では今回、平日日中の時間帯(西武新宿発12時台―15時台)において、急行と各駅停車が毎時1往復ずつ毎時1往復が増便され、「2022年3月ダイヤ改正前の運転本数に戻る」とされています。

これにより、当該時間帯は1時間あたり各駅停車と急行を交互に「12分間隔」で運転するダイヤから、「10分間隔」になります。

この2年続いた「12分間隔」のダイヤは、少なくとも山手線から郊外へ延びる私鉄では、最も本数が少ないものでした。

急行停車駅は1時間に10本の電車が来ますが、当該時間帯に各駅停車のみが停まる高田馬場ー田無間の途中12駅は、1時間に5本。他の私鉄の都心に近い駅では、最低でも1時間に6本(10分間隔)以上の電車が来るダイヤが組まれています。

ちなみに西武池袋線は、本数が少なくなる郊外の小手指ー飯能間でも6本以上です。新宿線の12分間隔ダイヤをめぐっては、西武グループの株主や、沿線自治体の議会などでも、見直しを求める声が上がっていました。

西武鉄道によると、2022年3月の減便は「新型コロナウイルス感染症による生活様式の変化を踏まえ、ご利用状況に応じたダイヤに変更」したということです。

それから2年を経て「(新型コロナの)5類移行にともない、定期外利用はレジャー観光等での利用が進み、コロナ禍前までの利用に戻ってはおりませんが、回復傾向が確認されたことを踏まえ、運転本数を戻すこととしました」といいます。

減便でもたらされた「メリット」、増便でどう変わる?

ただ、減便には所要時間の短縮というメリットもありました。

日中時間帯における西武新宿ー本川越間の最短時分は、2022年3月改正で「61分」から5分短縮され、「56分」になっていました。今回の増便後は、それが「60分」に。本数を戻すことで所要時間は延びるものの、2年前と比べれば1分短縮されるといいます。

「2022年3月改正では本数削減による速達性を考慮した運行形態としましたが、全体では所要時間にバラつきがありました。今回の改正では、10分間隔運転に戻すことで所要時間を平均化し、かつ別線区との均等な接続時間を確保した運行形態に戻しました」(西武鉄道

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他の鉄道事業者でも、このように列車本数を減らして運転体系を見直すことで、所要時間が短縮したり、各駅停車と優等列車の接続を改善したりと、利便性の向上に重点を置いた路線もあります。しかし、本数が減ったまま利用が回復し、ラッシュ時間帯以外も混雑が見られるケースも出てきています。

今回のダイヤ改正では、関西の私鉄でも、たとえば近鉄京都線で日中の急行を3本から4本に増やして普通列車も増便するなど、コロナ禍で減らした便数を戻す動きがあります。

一方、2021年に日中のパターンダイヤが10分間隔から「15分間隔」(1時間あたり4本)になった京阪線では、今のところパターンの変更はアナウンスされていません。インバウンド需要もコロナ前に戻っているとされるなか、今後さらに復便の動きが進むのでしょうか。

西武新宿線・拝島線では「拝島ライナー」も1本増発される(画像:西武鉄道)。