BEVはパソコンのようなものと語る販売現場も! 日本でBEVが普及しないのは「現金でクルマを買う習慣」が残ることも理由のひとつだった

この記事をまとめると

■日本でBEVの普及が遅れている要因のひとつとに販売面での問題がある

■新車を現金で一括購入する人が日本にはまだ多い

■再販価値が厳しいBEVは従来とは違う売り方・買い方を考える必要がある

新興国で新車を現金一括購入する人はほとんどいない

「なぜ日本ではBEV(バッテリー電気自動車)の普及スピードが遅く見えるのか?」 そもそも「BEVは普及しない」とか、「ブームが終わった」といったニュアンスの報道も目立つが、先進国だけではなく発展著しい新興国首都圏と比べても、日本でBEVを見かける機会は、東京でさえ少ないように感じている。

 日本メーカーにおけるBEVのラインアップが少ないことも大きいのだが、その理由はさまざまなものが挙げられている。そのなかで、筆者が興味深く聞いた話では、依然として新車を「現金一括購入」する人が少なくないというのもあるのではないかとの話である。

最近のクルマを庶民が一発購入するのは至難の業だ

 先進国新興国問わず、新車を購入して保有する際には、ローンやリースを活用するのがほとんどとなっている。確かに日本でもBEVは高いが、タイやインドネシアなどの新興国では、そもそもBEVではないICE(内燃機関)車でも、日本よりもかなり割高な価格設定となっている。そのようなこともあり、一部の富裕層を除けば、現金での新車購入というのは、筆者が聞いた限りではほとんど存在しないようである。

 購入面での話でいくと、再販価値の低さというものもBEVのネガティブ面として指摘されている。確かに日本でも、BEVを扱うドイツ系新車ディーラーに行ったときには、「再販価値は期待しないでください」といわれた。

 また、補助金の関係もあるようだが(初度登録後4年間は名義変更できない)、初回車検ぐらいのタイミング(初度登録から3年目)で、「補助金の一部を返還して乗り換えるのがベストタイミングかもしれません」ともアドバイスしてくれた。

最近のクルマを庶民が一発購入するのは至難の業だ

 この再販価値については、残価設定ローンを組めば、金利負担はあるものの、それぞれのブランド系ファイナンス会社が再販価値維持などのために負担することもあり、ある程度のリスクヘッジは可能となっている。

新車販売方法の根本的な傾向の変化が求められている

「販売現場で聞くのは、『パソコンの購入をイメージしてください』とよく説明するそうです。BEVの技術進歩のスピードは、現状パソコンのそれを超えているようにも見え、また状況も似ているともいえます。中古パソコンの様子を見れば、再販価値を期待することはできないでしょう。可能な限り短期間で車両の入れ換えを続けるには、残価設定ローンやリースによって手に入れることを勧めているようです」とは事情通。

最近のクルマを庶民が一発購入するのは至難の業だ

 支払総額では見ずに、月々でいくらの支払いで乗ることができるか、まさに「サブスクリプション」的な感覚で買い得感を検討する流れが普及しないと、BEVの普及にはなかなか弾みがつかないだろう(日本ではそもそもそこまでしてBEVは必要なのかという論議もあるが……)。

 日系メーカーがBEVに乗り遅れているといったことが話題となるが、日本国内でのBEVの普及に限っていえば、「新車保有のありかた」から見直す必要もあるように思える。

 BEVだけではなく、ICE(内燃機関)車でも、軽自動車でさえ支払総額で250万円を超えることも珍しくなくなった。現金一括払いで乗り継ぐには、購入予算をためながら長い間乗り続ければよいともいえるのだが、現状の日本経済を見ると、長い年月をかけても300万円ほどの新車購入のための資金を貯めるのは、一般庶民の間では至難の業のようにも見える。

最近のクルマを庶民が一発購入するのは至難の業だ

 BEVだからというわけでもなく、日本という国の置かれる状況が変化するなか、新車販売の根本的な「傾向の変化」が求められているのかもしれない。残価設定ローンの利用が目立っている現状は、まさに変化しつつある状況を表しているともいえよう。

最近のクルマを庶民が一発購入するのは至難の業だ

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BEVはパソコンのようなものと語る販売現場も! 日本でBEVが普及しないのは「現金でクルマを買う習慣」が残ることも理由のひとつだった