どうすれば長生きできるのか? それは100歳でも元気でいられるような習慣を選択することです。内科専門医・秋津壽男氏の著書『100歳でも元気なのはどっち?  長生きする人・しない人の習慣』にはその習慣がまとめられているなかで、生きるうえで大切な睡眠について紹介します。

睡眠時間は長過ぎても短過ぎてもダメ

近年、質の良い睡眠のとり方についての関心が高まっています。あなたは自分に必要な睡眠時間を知っていますか?

必要な睡眠時間には個人差があり、一概に何時間が正しいとは言えません。

一般的な人の最低限の睡眠時間は、6時間から7時間半と言われています。それ以上寝ると、今度は認知機能が落ちたり、寿命が短くなったりする傾向があるという研究結果が出ています。

睡眠時間が長過ぎるのも短過ぎるのも良くないということです。

自分に合った睡眠時間がどのくらいかは、1日の「すっきり感」で判断することができます。1日の体調や感覚と睡眠時間とをメモしておくことで、自分に合った睡眠時間が分かり調整できるようになります。

質の良い睡眠とは?

いくら寝てもすっきりしないという人もいます。その場合は、睡眠の質を見直してみましょう。

ポイントは、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」です。私たちは寝ている間に、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しています。

レム睡眠とは「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」の頭文字をとった言葉で浅い眠りの状態です。よく観察すると眼球が動いていることが分かります

汗をかいたり、血圧が乱れて呼吸が速くなったり、夢を見るのもこのときで、昼間に見たり聞いたりしたことを脳に定着させる働きも、レム睡眠のときに行われるとされます。

一方、ノンレム睡眠は、入眠時の「うつらうつら」から「すやすや」「ぐっすり」と、熟睡へ進む眠りを指し、心身ともに深い眠りに入ります。睡眠中はこのノンレム睡眠とレム睡眠の1セットがほぼ90分周期で推移し、一晩に4~5回繰り返されます。

質の良い眠りとは、ノンレム睡眠とレム睡眠のセットがしっかりと一定のリズムで現れることなのです。

夜10時に寝なくてもいい

かつては、夜10時から2時までの間が睡眠のゴールデンタイムで、その時間帯に寝るべきと言われていました。しかし、今ではそれは否定されています。

質の良い眠りには、最初の3時間が重要で、この間に2度訪れるノンレム睡眠で、成長ホルモンが分泌され、同時に免疫機能も回復すると言われます。

つまり、何時に寝るかよりも、最初の2つのレム睡眠とノンレム睡眠のセット、眠り始めの3時間を邪魔されずにしっかり確保することが大切なのです。

平日は睡眠不足だったので週末に思いっきり寝て、睡眠不足を取り戻そうとする人も多いですが、これには一定の効果があります。

しかし、数日後の睡眠不足に備えて前もって「寝だめ」するということはできないので気を付けましょう。

いくら寝ても熟睡感がないのは病気のサイン

いくら寝てもまだ眠たいという人は、病気の可能性があります。

そのひとつが「睡眠時無呼吸症候群」です。10秒以上、気道を通る空気の流れが止まった状態を無呼吸といい、一晩に30回以上、あるいは、1時間に平均5回以上の無呼吸状態があると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

睡眠時無呼吸症候群を患っている人は、深い睡眠であるノンレム睡眠をほとんどとれなくなってしまい、強い眠気や倦怠感を覚えて集中力が低下してしまいます。

もしも、いくら寝ても熟睡感がないという人は、この病気を疑いましょう。

【ポイント】 必要な睡眠時間はその人によって違う。質の良い眠りとは、ノンレム睡眠とレム睡眠のセットが一定のリズムで現れるもの。特に眠り始めの最初の2セット、3時間を邪魔されずに眠ることが重要。 前もって寝だめすることはできない。

秋津 壽男

医師

(※写真はイメージです/PIXTA)