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 生涯同じ伴侶と共に暮らすハクトウワシは、年に1度卵を産み、夫婦が力を合わせながら卵を孵化させ子育てを行っていく。厳しい自然の状況下にあっても温め続けることをやめず、我が子が生まれてくることをひたすら待ち望む姿はとても尊い。

 だがその努力が報われないことが起こるのが自然界である。

 カリフォルニア州の高地「ビッグ・ベアバレー」でにはハクトウワシの巣があり、自然保護団体の設置したカメラが巣の様子をリアルタイムで撮影しているのだが、残念ながら今年産んだ3個の卵が孵化することは絶望的だそうだ。

 それでも夫婦はあきらめず、まだ見ぬ我が子に思いを寄せながら巣作りを補強したり、卵を温め続けている。

【画像】 ハクトウワシ夫婦が産んだ3個の卵

 ビッグ・ベアバレーの自然保護団体「フレンズ・オブ・ビッグ・ベアバレー」が運営するYouTubeのライブ・カムに映し出されるハクトウワシの巣の様子を、大勢の人が固唾をのんで見守っている。

 ハクトウワシ夫婦、ジャッキーとシャドウが3個の卵を孵化させようと必死に温め続けているのだ。

 ハクトウワシは通常、2月から3月にかけて年に1度だけ卵を産む。通常は2個だが、今年12歳になるジャッキーは今回、3個も卵を産んだ。

 それ故、全部の卵が無事孵化するよう、多くのハクトウワシファンが、祈るような気持ちで見守っているのだ。

・合わせて読みたい→今度こそきっと!孵らぬヒナの卵をあたため続ける健気なハクトウワシのカップルの姿に涙(アメリカ)

ハクトウワシジャッキーとシャドウの巣に設置されたライブカメラ

Big Bear Bald Eagle Live Nest - Cam 1

残念ながら孵化は絶望的、それでも温めつづける夫婦

 ハクトウワシの卵は約35日間の抱卵期間を経て、孵化の1~2日前になると、卵の中の雛が殻を内側から突く「ピッピング」と呼ばれる行動が見られる。それにより卵にヒビが入り、ヒナのくちばしが見えてくる。

 2月29日に卵を温め始めてから35日目を迎えたが、その後17日たった今でも、卵の殻にヒビが入らないのだ。

 どうやらヒナは卵の中で死んでしまっている可能性が高いという。

 それでもハクトウワシの夫婦はあきらめなかった。現在も夫婦で交代しながら卵を温め続けている。

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 巣に問題があるのかと思ったのか、巣に必要な枝を持ち運び補強する姿も見られた。夫婦は諦めたくはなかったのだ。

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孵化の可能性は低いと判明

 ライブカメラを運営する団体「ビッグ・ベアバレー友の会」の事務局長サンディスティアーズさんは、Facebookの投稿で卵が孵化する可能性は今のところ低いと綴った。

今日の時点では、どの卵にも孵化する様子はありません。

ジャッキーが過去に孵化させた卵よりもかなり遅いので、現時点では孵化の可能性は低いでしょう。奇跡が起きることを願いたいのですが...

 スティアーズさんは、常に現実的な視点を維持するよう心がけていると言う。

結局のところこれが自然なのです。ジャッキーとシャドウがそうであるように、目的に向かって前向きに行動することだけなのです

 スティアーズさんは、「2羽に親しみを感じているので、この事実は悲しい気持ちになりますが、ジャッキーとシャドウの旅はまだこれからも続きます」と付け加えた。

彼らは自分たちが一番得意とすることを続けている。それは我が子に愛情を注ぐということで、それぞれの瞬間に目の前にあるものを大切にしているのです。

この時点で2羽は卵の世話をし、入れ替わり立ち替わり、卵にもお互いにも優しく穏やかに接しています。

 スティアーズさんたち観察チームは、ジャッキーが最初の卵を産んでから35日後にピッピングが始まり、その3、4日後に孵化が始まると予想していたという。

 しかしその様子は見られず、2週間近くが経ったところで卵が生存不可能であると結論づけた。

孵化しない明確な理由は不明

 Facebookへの投稿で、スティアーズさんは卵が孵化しない理由を "知る術はない "としながらも、複数の説を示した。

巣は高地の中でも最も標高が高い場所にあります。高地での酸素濃度など、環境的なものかもしれません。また、最近の嵐が非常に寒い気温をもたらしたという事実もあります。

ジャッキーは最近、卵を温め続けようと62時間も巣の上で過ごし、時には雪の下に埋もれてしまっていました。

湿度レベルも要因のひとつになり得ます。卵の殻は多孔質なので、環境で起こっていることは何でも卵の中に入り込んでしまうのです。

卵が作られた時点で何かがずれていたとか、生物学的なものかもしれません。いろいろな理由があり、悲しいかな、それが何であるかは私たちにもわからないのです

 実際に気温や湿度が低すぎたり、嵐などの悪天候が孵化率の低下につながることは知られている。ちなみにハクトウワシの卵の孵化率は50%程度だという。

 だが、ジャッキーとシャドウのどちらかが不妊症である可能性は非常に低いそうだ。

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今もずっと巣を温め続けている2羽

 スティアーズさんはジャッキーとシャドウが巣を放棄するまで、見守り続けるという。

 ジャッキーとシャドウの卵が孵化しづらいことは長年の観察で明らかにされてきた。2015年にウェブカメラが設置されて以来、羽化したヒナはわずか3羽だそうだ。

 スティアーズさんは、12歳のジャッキーと10歳のシャドウにはこれからもチャンスがたくさん残されているという。

ワシは野生で39年間生きることが知られています。ワシは死ぬまで産卵をやめません。彼らは最後まで繁殖力を保ち、卵を産み続けるのです
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 現時点でも3つの卵は卵のままだが、夫婦は献身的に卵のお世話を続けている。

 卵がこのまま孵化しない可能性は非常に高いが、ジャッキーシャドーの我が子に対する無償の愛に感動した視聴者は、2羽の夫婦から学ぶことができるとスティアーズさんは言う。

前年もこの夫婦の卵が孵化せず、カラスにさらわれました。そのときのシャドウの反応を思い出しましたが、彼はじっとそこにいました。

2、3日の間シャドウの行動は変わり、おとなしくしているように見えました。その後、彼は立ち直り、いつものやんちゃな姿を見せてくれました。

鳥には強い回復力があります。私は鳥たちが人々に回復力を教え、困難な物事でも受け入れることができるということを教えてくれていると思いたいです

References:Big Bear bald eagles’ three eggs probably won’t hatch: ‘Makes my heart hurt’/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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我が子に会いたくて。孵化が絶望的な3つの卵を温め続けるハクトウワシの夫婦