―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
◆コレクション目線で見た中古パソコンの世界
腕時計投資家の斉藤由貴生です。私は腕時計など、モノをコレクションするのが好きなのですが、今回は「コレクション目線で見た古いパソコン」についてお伝えしたいと思います。
まず、中古パソコンが腕時計のように「値上がりすることがあるのか?」というと、そういったことは“無い”といえます。パソコンは、「使ってなんぼ」のモノであるため、かつて「歴史に残る名機」と呼ばれていた機種でも、現在の中古市場では1万円未満といった額で取引されているのが現状です。
とはいえ、そういった価格だからこそ、かつて憧れた「名機」を手にできるチャンスともいえます。ということで、ここからはコレクション目線で魅力ある機種をいくつか紹介したいと思います。
◆Apple製品
Appleといえば、現在でも魅力ある製品を作っているといえますが、特にスティーブ・ジョブズが復帰した1997年頃から発表されたモデルは「尖ったモデル」が多いといえます。スティーブ・ジョブズがAppleに復帰して、初期の段階で行ったのは「広告代理店をシャイアットデイに変えた」ことでしょう。そして、そこで生まれたのが「Think differentキャンペーン」であります。また、1997年に登場したMacOSは、「Mac OS8」と名付けられ、大々的にアピール。さらに、新しいCPUの名前も「PowerPC G3」としたわけで、なにかと当時のApple製品が「未来になっていく」という印象があったのです。
ちなみに、OS8より前のOS名は、『漢字talk7.5(英語圏:system7.5)』といった具合で、特に「OS7」として大々的に打ち出されていた形跡はありません。これはCPUも同様で、G3以前のCPU名は「603e」といった地味な名称だったのです。
そして、「G3」が発表された1997年、最初にG3が搭載されたのは当時の最高級機種のみ。とくに、ノートパソコンではG3の高級感が顕著で、当時の実勢価格が80万円といった価格帯でした。
その頃のパソコン価格は、そこそこの性能を有する売れ筋モデルが25万円程度といったところだったため、80万円といった価格帯のパソコンは高嶺の花だったわけです。
◆初代PowerBook G3
それが、初代のPowerBook G3であるわけですが、これは当時の3400シリーズと見た目がほぼ同じのモデル。PowerBook G3といえば、流線型ボディの印象がありますが、初代は3400ベースだったのです。
そんな初代PowerBook G3は、わずか半年で流線型ボディのモデル(Wallstreet)に変更されたため、希少価値が高め。ちなみに、このモデルは「G3搭載機種であるにもかかわらず、Mac OS X未対応」。そのため、2000年代前半頃のネットオークション相場は安めで「OS X未対応」という注意書きが大きく書かれていました。
しかし、今となっては、レア機種ということもあって中古相場は、当時のパソコンとしてはかなり高く、ネットオークションでは5万円以上という金額で取引されています。
◆Twentieth Anniversary Macintosh
次に紹介するのは「20周年記念マッキントッシュ(通称:TAM、もしくはスパルタカス)」でありますが、これもまた、1997年登場の機種。先程のPowerBook G3と同じ時期に、家電量販店では88万円という価格で販売されていました。私は、当時家電量販店で、この20周年記念マックを見た際、「なんて格好いいのだ!」と思った記憶があります。
“バング&オルフセンが作ったパソコン”といった感じのスタイリッシュさが魅力的なのですが、実はこれ、スティーブ・ジョブズ復帰よりも前に企画された製品。有名な話として、「スティーブ・ジョブズが窓から投げ捨てた」という逸話があります。どうやら、スティーブ・ジョブズは気に入ってないようですが、私を含め、この20周年記念マックを好きという人は多い模様。
もちろん、今の20周年記念マックを買ってもオーディオぐらいにしか使い道はないといえるわけですが、それでも需要が結構あり、私が見ている限りこの10年以上にわたって20万円程度といった相場を維持しています。
なお、近頃はやや高くなっているのか、現在売られている20周年記念マックは30万円台といった価格帯になっています。
この20周年記念マック、当時の定価は88万8000円で、家電量販店でも同じ金額で売られていたのですが、最後には投げ売りされて24万円程度で新品が売られていました。仮に、その金額で買ったならば、「新品で買っても値上がり」となるわけですが、こういったことが起こるのは中古パソコンの世界ではかなり稀だといえます。
◆初代 iMac
スティーブ・ジョブズが復帰して、『1』から関わったといえる製品が、おそらく1998年に登場した初代iMacだとえいます。初代iMacは、当時のパソコンの常識では考えられない半透明ボディ(通称:スケルトン)で登場したわけですが、これは当時の工業製品に大きな影響を与えたといえます。
iMac効果で、半透明ボディの電卓が登場したり、ゲーム機も半透明使用の製品が出るなど、当時のiMacの影響は凄まじかったといえます。
ですから、初代iMacは当時から「歴史に残る製品」といわれていたわけで、そう思った私(当時中学1年生)も、親に「iMac買ったほうがいいよ!」とアドバイスをし、実際に買わせていました。
しかし、そんな初代iMacの中古相場は、「歴史に残る」といった期待とは裏腹に、2024年現在1万円程度といった状況。
ちなみに、1998年当時「アップルを応援したい」といって初代iMacを買っていた人を見かけましたが、応援したいのであれば株を買っておけばものすごいリターンとなったことだと思います。
なお、初代iMacはどれを初代とするか意見が分かれるところ。初代iMacは、当初ボンダイブルー1色のみでしたが、1999年1月に5色のカラーバリエーションに変更。それを1.5世代とするか否かが意見が分かれるところだと思います。
いずれにしても、現在1万円程度といった価格で購入可能であるため、5色全部集めても5万円。当時の有名な広告でアピールされているiMacすべてを家にコレクションできるため、初代iMac5色全部揃えるというのが乙だといえるでしょう。
◆Power Mac G4 Cube
スティーブ・ジョブズが中心となって開発されたとされる「G4 Cube」。当時のデスクトップ型Macは、安価なiMacかプロフェッショナルなタワー型といった展開だったのですが、タワー型の高級版(亜種)といった感じで出たのがCubeであります。
Cubeのデザインは高く評価され、MoMAにも所蔵されているのですが、売れ行きは乏しく発表から1年で生産終了が決定。
その後、私は「G4 Cubeはコレクション価値がある!」と思って20年程前に、約20万円で購入したのですが、現在の相場は2万円程度といったところ。MoMAにコレクションされているという点や、スティーブ・ジョブズの肝いり作品といった要素があるにも関わらず、あまり評価されていないといえます。
◆PC98やthinkpadも
以上、尖ったキャラクターを持つ中古パソコンを紹介したわけですが、アップル製品の他にもNECのPC98シリーズやIBM時代のThinPadなどもコレクション価値があるモデルがあると私は個人的に思います。
特に、20周年マックが80万円台で売っていた頃、同じような価格帯で売られていたNECの98noteなどは、私は今でも憧れの1台。また、1998年に最新型として登場したIBMのThinkPad60もマニアには“名機”として有名であります。
しかしながら、PC98はコレクションというよりも、PC-9800ベースで作られたシステムの保守といった用途のほうが需要がある様子。また、ThinkPad600に至っては、オークションサイトの相場が2000円程度といった状況であります。
そのため、今回はApple製品を中心に紹介したわけですが、他にも90年代後半には「VAIO NOTE505」などファンが多い製品があるといえます。
中古パソコンは、今の時代に「使える代物」ではありません。そのため、クルマや腕時計のような“実用できるモノ”とは異なり「古いモノの価値が上がる」という現象が起こらないのでしょう。
しかし、使えないからこそ安く買える製品が多いため、気軽にできる「コレクション」という魅力があるといえます。ですから、往年の名機や、昔憧れた製品などを気軽にコレクションしてみてはいかがでしょうか。
【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある
―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
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