反響の大きかった2023年の記事からジャンル別にトップ10を発表してきた。今回は集計の締切後に、実は大反響だった記事に注目。年間ランキングで忘れられがちな11月12月に公開した仰天ニュースから選ばれた、第2位の記事はこちら!(集計期間は2023年11月~2024年1月。初公開2023年11月14日 記事は取材時の状況)
 *  *  *

女子会を開催するフリースペースとして、あるいは喫茶店代わりにリモートワークを行う……。近年、ラブホテルの利用シーンが多様化していることはご存じのとおりだろう。そのため、かつての淫猥な印象は薄れつつあるものの、当然ながら男女の情念が渦巻く場所。時には想像の斜め上をいく出来事も起こるようだ。ラブホテルで長年、受付の仕事をしている佐川晴子さん(仮名・43歳)は数え切れないぐらいの客を見てきたというが、そのなかでも特に印象に残っているエピソードを語ってくれた。

◆小柄な女性客が暴れている?

「もう10年以上前のことだと思います。受付の仕事をしていると、いろんなクレームが入るんですけど、あるお客さんが来るようになってから、騒音の苦情が多く入るようになったんです。『隣から暴れているようなものすごい音がする』とか『ドスの効いた怒鳴り声が聞こえてきて不快だった』という内容で」

 だが、そのクレームには奇妙に思うことがあった。

「てっきり、ガラの悪い男性客が暴れているのかと思ったんですけど、そのクレームが寄せられる部屋を利用しているのは、30代と思われる小柄な女性でした。折り目のついたきちんとしたスーツ姿で来店していて。うちは1人で利用することもできるんですが、毎週末1人で宿泊していましたし、そんなクレームの原因になるような行動をとるとはとても思えませんでした」

◆不可解な言動を繰り返すその理由は…

「ある時に、その女性が利用した後の部屋を掃除したスタッフから風呂場に血痕がついていたとの報告があったんです。床と壁に血が飛び散っていて、そこまで量は多くなかったそうでしたが、事件現場みたいだったとのことでした」

 自殺でも試みたのではないかと不安になった佐川さんは、女性に尋ねてみることにした。

ストレートに『部屋で何か変なことしてませんか?』と聞いてみることにしました。クレームが上がっていることや、血痕についても聞いてみることにしたんです。そうしたら、女性はうつむいて黙り込んでしまって……土下座しそうな勢いで謝られました。実は普段カード会社で督促業務を担当しているという話をとうとうと話しだしたんです。客に逆ギレされ、怒鳴られるのが日常茶飯事で、そんな仕事のストレス解消のためにこのホテルに通っているとのことでした

◆「肉の塊」をボコボコに…

 客に言えなかった罵詈雑言をホテルの部屋で叫ぶ。そうして日々の鬱憤を晴らしていたが、段々とエスカレートしていった。

「最近では肉屋で大きな肉の塊を購入してから来るそうでした。そして、罵りながら肉を殴ったり蹴ったりしていて、時には傘なども使って、ボコボコに殴打していたそうです。でも、その方法でも飽きたらなくなって、最近は肉にナイフを刺すことでストレスを発散している。先日は肉に刺したナイフを引き抜いた際に、指を切ってしまった。その血痕が残っていたのではないかとのことでした」

 女性から「他のお客様にご迷惑をおかけして申し訳ありません。二度とこのようなことは致しません」と丁寧に謝られた。

「誠実な対応だったのと、大変な仕事だなあと思って同情した部分もありました。人に危害を加えているわけでもないですし。だから、もう少し声を落としてくれればということと、衛生上問題ない範囲でやってほしい旨を伝えました……。今後はしっかり掃除もするとのことだったので、それでまあ良しとしたんです。その後、その女性から話しかけてくれるようになったんですが……。『最近はアイスピックで滅多刺しにしている』とか、『電気を通して痛めつけるとスッキリする』という話をニコニコしながら語るので、流石に怖くなりましたね……」

 その女性はある時からパタリと来なくなった。配置転換の時期ではなかったので、近況が気になっているという。

<TEXT/和泉太郎>

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

画像はイメージです