FAカップ準々決勝、マンチェスター・ユナイテッドvsリバプールが17日にオールド・トラッフォードで行われ、120分の激闘を4-3で制したユナイテッドが準決勝進出を決めた。なお、リバプールのMF遠藤航はフル出場した。

逆転でのトップ4フィニッシュと共に今シーズン唯一獲得可能なタイトルとなる今大会制覇を目指すユナイテッド。直近のリーグ戦でエバートンに2-0で勝利し、ダービー完敗の嫌な流れを払しょくしたテン・ハグのチームはベスト4進出を懸けた難敵との大一番へ先発2人を変更。エバンスに代えて負傷明けのワン=ビサカ、負傷のカゼミロに代えてホイルンドを1トップに置いてマクトミネイとメイヌーで2セントラルMFを組んだ。

一方、シーズン4冠に向けて力強い歩みを続けるリバプールリーグ前節ではマンチェスター・シティとの首位攻防戦をドローで終えて2位転落となったが、直近のヨーロッパリーグ(EL)ではスパルタプラハに6-1の圧勝を収め、危なげなくベスト8進出を決めた。クロップ監督はその一戦から先発3人を変更。ブラッドリー、クラーク、ガクポに代えてファン・ダイクマク・アリスター、ルイス・ディアスら主力を復帰させた。

サラー対策のワン=ビサカの左サイドバック起用など変化を示したユナイテッドが良い入りを見せる。開始4分に左サイドのラッシュフォードが得意の角度から右足シュートでGKケレハーにいきなりのファインセーブを強いると、その勢いのままに先制点を奪い切る。

10分、相手陣内左サイドブルーノ・フェルナンデス、ラッシュフォードガルナチョと細かく繋いでポケットを取ったガルナチョが右足シュート。これはGKに弾かれるが、浮いたこぼれにいち早く詰めたマクトミネイが押し込んだ。

相手の時間帯で耐え切れずにいきなりビハインドを負ったリバプールは、時間の経過と共に押し返していく。その中で自慢の3トップにはなかなか良い形でボールが入らないものの、中盤のソボスライらがフィニッシュに絡む。

一進一退の攻防が繰り広げられる中、前半半ばを過ぎてゴール前での攻防が目立ち始める。そして、序盤から存在感を示してきたメイヌーの見事な仕掛けからユナイテッドに追加点のチャンスが訪れる。

35分、相手陣内中央左で複数のDFを個で剥がす圧巻の突破を見せたメイヌーから左サイド深くでパスを受けたラッシュフォードが丁寧なマイナスの折り返しを供給。ボックス中央にフリーで走り込んできたマクトミネイがこれを右足ダイレクトで合わすが、ややコースが甘くなったシュートはGKケレハーのビッグセーブに阻まれた。

ケレハーのこの試合2本目の決定機阻止に救われたアウェイチームは、ここから一気に攻勢を強めていく。37分には遠藤が高い位置でのボール奪取からボックス右のサラーに預けてゴール前に侵入。リターンパスを右足ダイレクトでゴール左隅に流し込む、絶好調の日本代表MFの値千金の同点ゴールかに思われたが、このプレーサラーの抜け出しの場面での微妙なオフサイドを取られて幻に。

それでも、この決定機をきっかけに完全に勢いに乗ったクロップのチームは前半終了間際に鮮やかな連続攻撃から一気に試合を引っくり返した。

まずは44分、相手陣内中央右でクアンサーが勇敢な持ち上がりでボックス右まで運んで中央のヌニェスに繋ぐと、ヌニェスがワンタッチで叩いたボールにボックス右で反応したマク・アリスターが右足を一閃。相手DFの出した足に当たってコースが変わったシュートがゴール右隅に突き刺さる。

さらに、前半アディショナルタイム2分には前線からの連動したプレスで相手陣内右サイド深くでB・フェルナンデスを潰してショートカウンターを発動。ボックス左でルイス・ディアスのパスを受けたヌニェスの右足シュートはGKオナナのビッグセーブに阻まれたが、こぼれに反応したサラーがワントラップから利き足とは逆の右足シュートを突き刺した。

ホームチームが善戦を見せたものの、勝負強いアウェイチームが逆転して折り返した試合は、後半も立ち上がりから攻め合うオープンな展開に。リバプールはソボスライ、ユナイテッドはホイルンドやB・フェルナンデスとボックス付近で足を振っていく。

ただ、時間の経過と共に試合は徐々に膠着。この展開を受け、両ベンチは70分を過ぎて大きく動く。

ゴールが必要なテン・ハグ監督は負傷明けのホイルンド、ワン=ビサカを下げてマグワイア、アントニーを同時投入。さらに、ヴァラン、メイヌーと守備的な選手を下げてアマド、エリクセンの投入でリスクを冒す。

対するクロップ監督はソボスライ、ロバートソン、サラーを下げてエリオットブラッドリー、ガクポとフレッシュな選手をピッチに送り込んだ。

一連の交代後もリバプールがうまくゲームをコントロールして時計を進めていたが、後半終盤にマグワイアを前線に上げるなど一発勝負特有の力業に出た赤い悪魔が土壇場で意地を見せる。

87分、相手陣内中央でルーズボールを回収したアントニーが左のガルナチョに展開。そのままボックス内に持ち込んでカットインから右足を振る。ボックス中央でこのシュートのこぼれに反応したアントニーが遠藤を背負いながら利き足とは逆の右足の反転シュートをゴール右隅の完璧なコースに流し込んだ。

加入以降、批判を浴び続ける伏兵の価千金の一撃によって追いついたユナイテッドは、このまま逆転まで持ち込むべく攻勢を継続。すると、後半ラストプレーとなった94分にはエリクセンからの絶妙なスルーパスで完璧にディフェンスラインの背後を取ったラッシュフォードにGKと一対一のビッグチャンスが舞い込むが、右隅を狙ったシュートはわずかに枠を外れて90分間での決着とはならず。

消耗戦となった延長戦ではコンディション面で圧倒的に優位なユナイテッドが押し込む状況が続く。その流れでアントニーやラッシュフォード、リンデロフと幾度か際どいシュートを放っていくが、リバプール守備陣の粘りでわずかに精度を乱されてゴールをこじ開けることができない。

すると、延長戦ではほとんどフィニッシュまで持ち込めずにいたリバプールが延長前半終了間際に一瞬の隙を突いてゴールをこじ開ける。105分、相手陣内右サイドでのスローインの流れからブラッドリーがドリブルで内側に切り込んでフリーのエリオットに繋ぐと、背番号19はすかさず得意の左足を一閃。エリクセンが出した足に当たってコースが変わると、これがゴール左下隅の完璧なコースに決まった。

これで厳しくなったホームチームは、延長後半開始と同時にリンデロフを下げて負傷明けのマウントを投入。なりふり構わぬ姿勢でゴールを目指すと、ここまで期待を裏切り続けたエースストライカーがようやく仕事を果たす。

112分、ヌニェスの不用意な横パスをボックス手前中央でカットしたマクトミネイがすかさずボックス内に走り込むラッシュフォードに繋ぐと、イングランド代表FWは丁寧な右足シュートをゴール右隅に流し込んだ。

これで3-3のイーブンに戻った激闘は最終盤の攻防に突入。PK戦も視野に入り始めたが、最後の最後に赤い悪魔が劇的過ぎるドラマを演じる。121分、リバプールの左CKの流れからクリアボールに反応したアマドが、遠藤とエリオットがややお見合いの形となったところでボールにアタックしてエリオットからボール奪取。このボールをガルナチョが引き取って2対1の数的優位のロングカウンターに持ち込むと、最後はボックス手前でラストパスを受けたアマドがゴール右隅へ左足の正確なシュートを流し込んだ。

その殊勲のアマドは興奮してユニフォームを脱いでしまい2枚目のカードで最後までピッチに立つことは叶わぬも、残りの10人がしっかりとアウェイチームの反撃を凌ぎ切った。

この結果、夢の劇場で極上のエンターテインメントを披露したユナイテッドが劇的にベスト4進出。一方、宿敵に衝撃的な敗戦を喫したリバプールは今季4冠の夢が潰えることになった。