文字通り世界の頂点に君臨する井上。その強さは彼の存在感を強め、ライバルたちを刺激する。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 群雄割拠のボクシング界で異彩を放つ日本人は、野心を滾らせるライバルたちの“ターゲット”となる。スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)だ。

 バンタム級で4団体統一を果たした昨年1月に、スーパーバンタム級に階級を上げた井上だが、その強さに陰りは微塵も見えない。同7月の初陣でスティーブン・フルトン(米国)を8回TKOで撃破してWBC&WBO世界統一王者に君臨すると、約5か月後に迎えたWBA&IBFの統一王者マーロン・タパレスフィリピン)戦で10回KOで勝利。瞬く間に史上2人目の2階級での4団体統一という偉業を成し遂げた。

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 世界でも有数と言える強さを、目に見える“結果”で示してきた。そんな存在感は強める井上を、己を試したいと言わんばかりの猛者が虎視眈々と狙っている。

「大きな夢を持って、一生懸命働き、それを達成するまで立ち止まるつもりはない。何でも可能だ」

 母国紙『Daily Mail』で、そう力説するのは、WBC同級ランキングで5位に位置し、プロキャリア16戦無敗のリアム・デービス(英国)だ。

 もっとも、井上に対してリスペクトがないわけではない。デービスは昨年10月に「挑戦状を叩きつけるような真似はしない。それは彼がやってきたことに対して失礼だ。彼は偉大なボクサーなんだ」と語っていた。

 それでも自身の望む世界タイトルを保持する男を“目標”にしないわけにはいかない。去る3月16日(現地時間)にエリック・ロブレス・アヤラ(メキシコ)との「IBOスーパーバンタム級タイトルマッチ」を制していたデービスは、井上戦に対する願望を赤裸々に明かしている。

「(井上戦のオファーがきたら)俺は間違いなく戦うよ。日本であっても100%向かうよ。最高な選手になるためには、最高を倒さなければいけないからね。俺はこの階級で自分が一番だと言いたい。

 イノウエとの試合は大きな仕事になるだろうけど、チャンスがあれば戦いたい。彼を挑発したり、呼び捨てにして刺激してまでってことはやらない。でも、俺自身の位置を確認するためのチャンスが欲しい。間違いなくそれに近づけていると思うんだ」

 新型コロナウイルスパンデミック下には、地元サルフォードでゴミ処理の作業員として働きながら、ボクサーとして戦い続けてきた。そんなデービスにとって井上との一戦は成り上がり人生の集大成にもなり得る。ゆえに「チャンスが欲しい」というのは、心の底からの切実な叫びと言えよう。

 昨年12月のタパレス戦後に「来年1年間はスーパーバンタム級にとどまる」と公言した井上。年内は5月6日に決まった元世界2階級制覇王者ルイス・ネリメキシコ)との一戦を含め3戦を予定している。すでに巷では9月にWBAの挑戦権を持つムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、そして12月にIBF&WBO同級1位、17戦無敗のサム・グッドマン(豪州)との対戦構想が囁かれているが、成長著しいデービスはそこに割って入れるか。今後のタイトル戦線に注目だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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