フランチャイズ経営を行うなかで、多店舗展開や収入を上げる方法を考えている人もいるのではないでしょうか。多店舗展開には、いったいどのようなメリットとデメリットがあるのか見ていきましょう。コンビニ7店舗を経営するフランチャイズオーナー、長瀬環氏著『儲かるコンビニのフランチャイズの教科書』(自由国民社)より一部抜粋し、フランチャイズビジネス全般における加盟店側の考え方を紹介します。

多店舗展開することの「デメリット」

フランチャイズ経営をしていくと業態にもよりますが1店舗で50〜60万円の月収になる方もいます。

当然、ビジネスパーソンの時よりも給料が良くなるケースが多いため、そこで満足してしまう方もいます。

私は7店舗のコンビニ経営を行っています。

もし1店舗当たり50万円の月収とすると、私の月収は7倍の350万円ということになります。

しかし、実際はそんなにもらっていません。

店舗が増えれば増えたなりの出費が増えます。

1店舗では自分だけでできていたことでも、店舗が増えるにつれ、人の手を借りないとできなくなることも多くなるのです。

店舗の安定した運営をするために、正社員を雇用しなければなりませんし、従業員の教育費用も発生します。

正社員となるとパート・アルバイトよりもちろん高給です。

長時間労働者も増えますので、当然社会保険加入者も増えます。

このように人件費比率が高くなっていきます。

人件費以外にも店舗が増えるにつれ、余分にかかってくる費用も増えていくので、収入も倍々で増えていくかというとそういうものではないのです。

お金があれば「選択肢」が増えるという事実

店舗が増えれば、売り上げも増えますが、手間も増えます。

店舗が増えればリスクも増えます。借入金額も増えていきます。

万が一の時には借入金の返済ができないかもしれない、倒産するかもしれない。

高いリスクには高いリターンがあって当然ですから、月収も1店舗経営の時と同じかと言えばそうではありません。

1店舗の時よりもはるかに高い月収です。

こういう話をすると「お金が全てじゃない」と言う方がいます。

確かにその通りで、お金で買えないものも多いです。

しかし、お金があれば選択する幅が広がるという事実があります。

「お金があったら〇〇できるのに…」よく聞く言葉です。

お金があれば選択できることをお金がないために諦めているという方は非常に多い。

選択の幅を広くできるお金というものは、人生を豊かにできる道具ということです。

そう考えると、お金はないよりあったほうがいい。

では、社長だけが満足できる収入があれば良いのかと言ったら、そうではありません。

せっかく縁あって自分の会社で働いてくれている従業員にも満足いく給料を払うことは当然です。

しかし、店舗のクオリティを上げ、売り上げが高くなったとしても、ある一定の売り上げ以上を1つの店舗で稼ぎ出すことは簡単なことではありません。

従業員の給料を上げようと思っても1〜2店舗を経営しているだけでは、思ったような給料を支給することは難しいことです。

ですから、1店とか2店とか店舗数が少ないお店では、収入が増えていかないため、従業員の給与も上げていくことはできない可能性が高いのです。

そのために多店舗展開するべきなのです。

多店舗展開しなければ、自らの収入も一定金額以上にはなりませんし、従業員にも満足いく待遇をしてあげられないでしょう。

店舗を増やし自らの収入を上げ、従業員にも満足してもらえる給料を支給したい。

フランチャイズは本部のフォローをもらいながら、経営していく多店舗展開しやすいビジネスです。

店舗を増やすリスクを考え躊躇するのではなく、「えいや!」と一歩踏み出す勇気を持ちましょう。

多店舗展開の「メリット」立地分散によるリスクヘッジ

多店舗展開すれば売り上げが増えます。

「店舗を多く持つことによるメリットをそれだけ?」と思われる方がいらっしゃいます。

ところが、その認識だけでは不十分です。

多店舗展開の最大のメリットは、色々な立地に出店することで、リスクの軽減ができることです。

私自身の経験です。

パチンコ店が近くにある店舗を経営しています。

ある時、そのパチンコ店が半年間休業しました。

「パチンコ店が閉まったからってコンビニに影響あるの?」そう思われるかもしれません。

しかし、影響は大きいものです。

パチンコ店は営業時間も長いので、遅い時間まで多くの人が来ます。

そしてパチンコ店に来たお客様がコンビニにも流れます。

パチンコ店では数万円単位の大きい金額が動きます。

ですから、お客様にとっては、ついでに寄っていくコンビニの商品はパチンコ店で動く全額に比べて安いのです。そのため、金額を気にせずに買っていただける可能性が高いのです。

ですから、パチンコ店からのお客様はありがたいお客様なのです。

そのパチンコ店が閉店している半年間、店舗の売上・客数は激減しました。

もし、その店舗しか経営していなかったとしたらゾッとします。

しかし、当社は他にも店舗があることで、1つの店舗の売り上げが下がったダメージを他の店舗で補うことができ、倒産の危機に直面するような事態にはなりませんでした。

このように多くの店舗を持って立地を分散させることは、外部環境の変化による廃業リスクを軽減させることになります。

多店舗展開は収入を最大化させる「給料が増える」ことが注目されがちですが、立地分散によるリスクヘッジで「給料がゼロにならない」ことこそが最大のメリットです。

(※写真はイメージです/PIXTA)