売春の一大スポットとして知られる大久保公園に異変が起きている。昨年秋から警察が取り締まりを強化し、それに伴うように立ちんぼが激減。ピーク時(’23年9月)は50人弱の女性が並び、その倍ほどの買春客や見物人が群がっていた。かつてこの地で春を売っていた街娼たちはどこへ消えたのか——。

◆風俗店やSNSに主戦場を移行「やめた人は1割以下だね」

 2月のある日曜日、21時すぎ。大久保公園は、それまでの賑わいが噓だったかのように一掃されていた。警視庁の発表によれば、昨年は前年比3倍近い女性140人を売春防止法違反で逮捕したという。

「昨年11月には建物側に、立ち入りできないようバリケードが設置されて、現実に引き戻される思いでした。当然のように女性を買っていてマヒしてましたが、本来いけないことなんだと」

 そう語るのは、界隈の事情に精通する交縁ハンター氏。立ちんぼの女性たちはいったいどこへ消えたのか。

立ちんぼをやめたコは、約5割は風俗店に籍を置き、2~3割はSNSや出会い喫茶に主戦場を移し、2~3割は定期の人(リピーター)だけに限定。おそらく売春自体をやめたコは1割もいないんじゃないかと思います」

◆春になれば戻ってくる?

 ただ、女性がいなくなったことで、買春男も次第に寄りつかなくなっていった。

「買春者は新しいコと遊びたがるのでワクワク感を求め、SNSでのパパ活や風俗に移行。立ちんぼとの値段交渉で習得したコミュ力と図太さで、ガールズバーの若いコを口説き落とそうとしている話も聞きました」

 平静を取り戻したように見える大久保公園前だが、交縁ハンター氏の見立てはこうだ。

「毎年冬は寒さで女のコが少なく、買春側も女のコが厚着してて体形が見えづらいので足が遠のくんです。春になれば多少戻ってくるかもしれませんが、今の様子を見ていると例年並みとはいかないかもしれません」

 大久保公園が“立ちんぼスポット”という呼び名を捨てられる日は来るのだろうか。

◆逮捕されても今なお立ち続ける理由

 取り締まり強化を受け、姿を消した立ちんぼたちだが、どうやら最近は大久保公園の周辺に移動して分散しているようだ。前出の交縁ハンター氏が解説する。

「現在は大久保公園の裏手側に、ピーク時で10~15人の立ちんぼがいます。さらに周辺のホテル街やコンビニ、呼び込みのコンカフェ嬢が密集する花道通りで、警察の目をかいくぐるように客待ちする立ちんぼも増加。買春の常連は“調査”と呼んで、周辺の立ちんぼを探しています」

 一方で、こんな弊害も。

立ちんぼに間違われやすくなった。今日も新宿駅からの途中で3人に交渉を持ちかけられて怖かった」(16歳女子)

◆「ホテルに入ろうとしたら私服(警察)だった」

 取材班は、逮捕のリスクを顧みず、現在も歌舞伎町で売春する立ちんぼに接触。17歳のカナさん(仮名)は昨年8月から立つようになった。

「家出をきっかけに公園に来て、初日で4人とヤって6万円も稼げたから面白くなって。未成年だからアプリも風俗もできないし、手っ取り早く生活費を稼げるから」

 ネカフェやホテルを転々として生活をするが、カナさんは11月に逮捕されてしまった。

「ネックレスをかけたチャラい男に声かけられて、そのままホテルに入ろうとしたら私服(警察)だった。ホテル前で手錠されて、亀有署まで連れてかれて、夕方から深夜まで取り調べ。もうダルいし眠いしでイライラした」

 取り調べでは、家族構成や立ちんぼを始めた経緯、家出の理由、裏で手を引く共謀者がいないかなどを詰問された。そのあとは少年鑑別所に10日間入り、家庭裁判所での調停にまで発展する。

◆「家に戻る予定ですか?あるわけないじゃん」

「面会に来た両親は『元気にしてる?』って心配してて、怒られると思ってたから安心した。調停では、両親も『今後は娘と何でも相談するようにします』って宣言してたけど、多分そんなことないだろうって思いながら聞いてた」

 悲しいことに予感は的中し、裁判の1週間後に、カナさんは再び公園に戻ってくる。

「親からはたまに生存確認の連絡が来るぐらいで、捜索届を出されないよう適当に返信してる。今は立ちんぼで稼いでるけど、18歳になったらデリヘルとかけ持ちして、お金貯めて一人暮らししたい。家に戻る予定ですか?あるわけないじゃん」

◆月300万円稼ぐ懲りないホス狂い

 20歳のアミさん(仮名)は’23年夏から立ちんぼを始め、月300万円を稼ぐ強者だ。

「もともと風俗やってたんだけど、去年の夏にホスト通いの友達から教えてもらったの。やってみたらピーク時は一日10万円以上いけたし、風俗は写メ日記が嫌だったから立ちんぼに移行した。毎日ホストに行って、担当のバースデーには1200万円使ったわ。あ、私は売掛はしてないよ。稼いだ分を使っただけ」

 実はアミさんも、9月に私服警官に逮捕されていたが、懲りることはなかった。

「一回捕まってから、警察対策を念入りにするようになった。長時間同じ場所に立たないようにしているし、外国人なら絶対警察じゃない。あと冷やかしで来てるおじさんが『アイツ私服っぽいよ』って教えてくれたりする。もう捕まる気はしないよ。仮に捕まっても再開すると思う」

 現在もホストに通うが月100万円以内に節制。貯金は2か月で500万円増えたという。現在はホスト以外に新しく稼ぐ目標ができた。

「女の賞味期限が切れる前に荒稼ぎして、30歳までに2億円貯金して人生あがりたい」

 警察の圧力を嘲笑うかのように、立ちんぼたちは刹那的に春を売り続ける。

【交縁界隈事情通・交縁ハンター氏】
’22年春から週2~3回大久保公園に通い、買春を続ける。界隈ではキングとも呼ばれる。現在は風俗やSNS経由での援交と併用

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部

―[消えた[繁華街立ちんぼ]]―


カナさん(仮名)・17歳