鹿児島県鹿児島市での整備が計画されている鹿児島ユナイテッドFCの新スタジアムに関する情報をまとめています。

「鹿児島 新スタジアム」概要

今季、明治安田J2リーグを戦っている鹿児島ユナイテッドFCは、2016年にJリーグへ参入。当時から現在のホームである白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)を使用している。

同スタジアムは2017年から2018年にかけて改修工事を実施。ただ、これはあくまで2020年に開催が予定されていた国民体育大会に向けたものであり(※コロナ禍で延期、2023年に特別国民体育大会として開催された)、Jリーグのスタジアム基準「新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと」を満たさないものだった。

当時から鹿児島ユナイテッドのホームタウン内に新たなスタジアムを整備する構想も存在しており、鹿児島県および鹿児島市Jリーグに対して整備実現に向けて取り組んでいく意向を文書にて表明。二重投資を避けるという趣旨をJリーグが汲み取り、鹿児島ユナイテッドは2017年、前年は不交付だったJ2クラブライセンスを交付を受けた。

また、2019年には「例外規定」を基づく形で2020シーズンのJ1クラブライセンスを交付されている。

鹿児島市においては近年、2020年に初当選した下鶴隆央市長のもと、多機能複合型サッカースタジアムの整備に向けて検討が進められてきた。しかし、有力な候補地の多くで地権者となっている鹿児島県との調整不足が目立ち、整備計画は停滞。

2023年、Jリーグからの通達を受け、鹿児島市鹿児島県は改めて前向きに取り組む意向表明書をリーグへ提出。市と県の“距離”は以前に比べると多少縮まっているが、候補地の選定からして難航しており、J2クラブライセンスの交付から7年が経ちながら基本計画の策定にも至っていないのが実情だ。

なお、鹿児島ユナイテッドによれば「白波スタジアムの改修が選択肢の一つとして考えられるのではないか」という話が一部から出ている点についてもJリーグは懸念しているとのこと。これまでの経緯および現状を踏まえ、今後のクラブライセンス判定において不交付と判断される可能性があるという。

これまで検討された4つの建設候補地

本港区エリア ドルフィンポート(DP)跡地

真正面に鹿児島シンボル桜島が見える市内の一等地。複合商業施設「ドルフィンポート」が2020年3月に15年間の営業を終えて解体され、現在はウォーターフロントパーク直近の駐車場となっている。

前任の森博幸市長時代から有力な建設候補地だったが、この場所では地権者である県のもと老朽化した総合体育館の新設を含む「スポーツ・コンベンションセンター」の整備計画が進んでいる。

民間資金を活用した社会資本整備(PFI)手法の導入が想定されており、事業費は現状最大313億円。県は2029年9月の開業を計画しているが、事業費のさらなる高騰が見込まれ、コンベンション機能の有用性などを疑問視する声も根強い。

本港区エリア 住吉町15番街区

DP跡地から種子・屋久高速船旅客ターミナルを挟んだ場所に広がる県有地。現在は一部が駐車場として使用されており、上記のスポーツ・コンベンションセンター基本構想でも体育館の駐車場として位置づけられている。

こちらもDP跡地と同じタイミング(2023年6月)で鹿児島市は整備計画を断念。ただ、利活用の方向性自体については議論の途上にあり、鹿児島商工会議所は国際会議や展示会など「MICE」施設の整備を提言しているとのことだ。

ちなみに、スタジアム用地としては、海側に開けた低層のバックスタンドで知られるミクニワールドスタジアム北九州と比べても細長。そのため鹿児島市の計画では桟橋構造での敷地拡幅が想定されていた。

浜町バス車庫

DP跡地、住吉町15番街区とともに2019年に絞り込まれた候補地の1つ。前2つが県有地だったのに対し、こちらは民有地で本港区エリアからは北へ700mほど、JR鹿児島駅にほど近い場所だ。

しかし2023年1月、土地を所有するいわさきコーポレーションが市に整備候補地からの取り下げを申し立てて除外されることとなった。

同社の岩崎芳太郎社長は「本港区エリアの利活用に係る委員会」に鹿児島商工会議所の会頭の立場で出席しており、その活動が利益誘導ではないかとの風評があるための判断だったという。

本港区エリア 北埠頭

2023年6月、DP跡地と住吉町15番街区での整備断念を表明した鹿児島市が、新たに候補地として挙げたのが同じ本港区エリアにある北埠頭。DP跡地同様、桜島を正面に望む一等地にありながら当初予定していたような“にぎわいエリア”としての利活用がなかなか進まないまま、2023年に開港30周年を迎えていた。

しかしながら北埠頭は港湾施設として重要な役割を担っており、物流との住み分けや交通渋滞など課題が頻出。港湾関係者にとっては降ってわいたスタジアム構想で調整不足が否めず、港湾計画の見直しも必要となるため検討を進めていくうえで様々な困難が伴うことは当初より明らかだった。

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今年2月、地権者である鹿児島県の塩田康一知事との面会を経て、下鶴市長は北埠頭での整備断念を表明。8ヵ月で議論は振り出しに戻り、現状新たな候補地として具体的な名前は出ていない。

鹿児島、新スタジアム情報・建設候補地まとめ(鹿児島ユナイテッドFC ホームスタジアム)