NASA/JPL-Caltech
2024年10月10日ごろ、木星の衛星、エウロパに向けてNASAの探査機「エウロパ・クリッパー」が打ち上げられる予定だ。その目的は外部環境や、内部に存在するであろう海を調査し、生命存在の可能性を探ることだ。
そのため、エウロパ・クリッパーには最新鋭の科学観測機器が搭載されているが、もう1つ、存在するかもしれない知的生命体、もしくは未来人に宛てたメッセージプレートが搭載されているのだ。
【画像】 木星衛星エウロパに打ち上げ予定の探査機、エウロパ・クリッパー
これまでの調査で、木星の第二衛星エウロパの地表は分厚い氷の殻で覆われており、その下には、液体のの海が存在していることが明らかとなった。
さらにジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡により、内部の海には地球上の生命のベースとなっているのは「炭素」があることも判明した。
もしかしたら地球外生命体が存在するかもしれない。そこでNASAは探査機「エウロパ・クリッパー」を打ち上げ、最新鋭の科学観測機器を使い、その可能性を徹底調査することにしたのだ。
2024年10月10日に打ち上げ予定のNASAの探査機、エウロパ・クリッパー / image credit:NASA
[もっと知りたい!→]ここにいるかも?木星の衛星エウロパに水蒸気があることを示す証拠を発見(NASA)
宇宙人に宛てた地球からのメッセージも搭載
エウロパ・クリッパー には更に重要なものが搭載されている。観測機器の表面を覆う、プラチナよりも高い融点のタンタル製のプレートには、宇宙人、あるいは未来人に宛てたメッセージがぎっしりと刻み込まれているのだ。
エウロパ・クリッパーの観測機器の表面に設置されたメッセージ付きのプレート / image credit:NASA/JPL-Caltech
プレートに刻まれた内容は?
エウロパ・クリッパーに刻まれたメッセージは水をテーマにしたもので、私たち地球の生命にとって不可欠な水を通じて、地球とエウロパとのつながりが表現されている。
18×28cmのプレートはタンタルという丈夫な金属製で、片面には103ヶ国語(日本語も含まれている)で「水」を発音したときの波形が刻まれている。その真ん中にあるシンボルは、アメリカ式の手話で水を表すものだ。
このデザインは、私たちにとっての水の重要性や普遍性を表したもので、それと同時に氷の地殻の下に海があると考えられるエウロパと地球とのつながりを示している。
・合わせて読みたい→NASAが地球外生命体の存在が期待されるエウロパとエンケラドゥスの海を探査するためのロボット研究に出資
103カ国の言語で水ウロパ・クリッパーの観測機器の表面に設置されたメッセージ付きのプレート / image credit:NASA/JPL-Caltech
その反対側の面には、アメリカの詩人エイダ・リモンの詩「In Praise of Mystery(”神秘を讃えて”の意)」や、「ドレイクの方程式」(天の川銀河に存在する地球外文明の数を推定するための方程式)など、人類の科学技術や芸術性を伝えるメッセージが刻まれる。
それらの真ん中に描かれているのが、瓶の周囲を木星の4つの衛星が軌道する姿だ。これら衛星には、世界中から招かれた260万人以上の名前が登録されたマイクロチップが取り付けられる。
NASA惑星科学部門のディレクターであるロリ・グレイズ氏は、このプレートについて次のようなメッセージを寄せている。
このプレートには、科学・技術・教育・芸術・数学など、人類が宇宙に提供できる最高のものが集められました。
私たちが知るあらゆる生命体にとって不可欠である水を通して伝えられるメッセージは、これから探検することになる神秘的な海洋世界と地球との結びつきを完璧に表現しています
このプレートはまさしく「地球人がエウロパへ水を求めて探査にやってきた」という証拠でもあり、宇宙人、もしくは未来人がこれを手にする可能性もあるかもしれない。
NASA’s Design for Message Heading to Jupiter’s Moon Europa
ボイジャー1号と2号にも託されたメッセージ
なお、宇宙のどこかにいるかもしれない知的生命体へ向けてメッセージが送られるのは、これが初めてではない。
1977年に打ち上げられたボイジャー1号と2号には、「ゴールデンレコード」と呼ばれるメッセージが搭載されている(ちなみに1号は今、太陽系の外で大ピンチに陥っている)。
それは銅製のディスクに金メッキを施したもので、地球やそこで暮らす我々について紹介する情報が収録されている。
収録内容は、116枚の画像、各種の自然音(海の波、風、雷、動物の鳴き声など)、さまざまな文化や時代から選曲された音楽、55ヶ国語の音声による挨拶といったもの。
こうした情報は、これを手にした宇宙人が、地球の様子や私たちの文明レベルなどを理解できるよう、入念に選ばれたものだ。
ボイジャー1号と2号に搭載されたゴールデンレコード / image credit:NASA
エウロパ・クリッパーの今後
今年、エウロパ・クリッパーの打ち上げが無事成功したら、約6年半かけて宇宙を旅し、2030年4月に木星周回軌道に入る予定だという。
数十回のフライバイを繰り返しながら観測活動を行い、4年後の2034年には、エウロパの大気圏に突入し燃え尽きる予定だという。だがこの頑丈なプレートは燃えずに宇宙空間に残される可能性もあるかもしれない。
最近ネットフリックスでSF系の映画ばかり見ている私としては胸熱なプロジェクトだ。
ここで少しばかりおすすめさせてもらうと「スペースマン」という映画は、これまでの宇宙SF系とはまた別の切り口で面白い。
たった1人で木星付近へ向かった男性宇宙飛行士が、巨大化したハエトリグモのような宇宙人と出会い、親睦を深めていき、自分の足りないところに気が付かされ、真実の愛に目覚めていくという話なんだけど、まあとにかく見て欲しい。
References:Vault Plate | Spacecraft – NASA's Europa Clipper / NASA sends "message in a bottle" onboard spacecraft headed for ocean world / written by hiroching / edited by / parumo
コメント