現在と過去が交錯しながら、愛する人を探し求める純愛映画「四月になれば彼女は」が3月22日(金)に公開される。川村元気の同名の恋愛小説が原作でウユニ、プラハアイスランド、東京と美しい風景を届けながら、ラブストーリー史上最高峰のスケールで紡がれる。物語は、精神科医の主人公・藤代俊(佐藤健)のもとに、10年前に交際していた恋人・伊予田春(森七菜)からウユニ塩湖からの写真と手紙が送られてくることから始まるストーリー。初恋の相手に異国の地から手紙を送り続ける春を演じた森七菜は、今作で海外ロケ撮影も敢行。旅先での思い出や共演者とのエピソードなど、映画の魅力を交えながら、語ってもらった。

【撮りおろし13枚】瞳に吸い込まれそう...上目遣いで照れているような表情がかわいい森七菜

■かつての恋人から手紙が届いたら、むずがゆい気持ちになるかも

――森さんが演じるのは、主人公の藤代の初恋の相手・伊予田春です。カメラを手に海外を駆け回る春をどんなキャラクターと捉えましたか。

春は恋愛に対して、ずっと夢を抱いているような、どこかお姫様みたいな女性だと思いました。写真を撮りながら世界中を旅していて、旅先から大学時代に写真部で時間を共に過ごした元恋人の藤代に手紙を送り続けているんです。

どんな想いで春が手紙を綴っていたのかは、劇中で明かされますが、藤代には、結婚を控える坂本弥生(長澤まさみ)さんという存在がいますからね。私だったら、かつての恋人から手紙が届いたら、ちょっぴり複雑で、むずがゆい気持ちになるかもしれないなと思いました(笑)。

――ウユニ、プラハアイスランドへ旅をする春の姿が描かれますが、実際に現地に行ったことで春の気持ちを理解できる部分もあったのでは?

そうですね。元恋人の藤代のことを想いながら、1人で旅をしているんですけど、寂しい気持ちではなくて。世界中の朝陽を見た時に、春は、自分がかつてやりたかったことを昇華させて、ずっと夢を叶えながら旅しているんだろうなと思いました。

私なら絶対、誰かに頼ってしまいますけど、1人で踏ん切りをつけようとしているのがすごい。それに旅で訪れたボリビアのウユニは、治安のいい国ではないので、よく1人で行こうって決心がついたなって。か弱そうな女性に見えて、ものすごく強い女の子だと思います。

――映画に登場する景色は、本当に美しい絶景ばかりで、人生で1度は訪れてみたくなる場所ばかりでした。初めての海外ロケで印象に残っている出来事はありますか。

撮影予定日より早くウユニ塩湖に到着したんですけど、翌日お天気が良さそうだから、早まって撮影したんです。そしたら、虹のオーロラが出たり、太陽の周りに虹が2個も出て、∞(無限大)みたいなマークになったり…。そんな恵まれた光景に、ボリビアの神様に歓迎されている気持ちになりました。うれしくて、その日は、たくさん写真を撮りました。

■「健さんは、フィルムカメラのピント合わせだけ下手っぴ(笑)」

――この作品をきっかけにカメラを始めたそうですね。

劇中で使用したものと同じフィルムカメラを買ったので、最近はロケ先に持って行っています。風景も人物もどちらも撮りますね。ちなみに先行公開している“恋するビジュアル”の藤代のビジュアルは、私が撮ったもの。

まさかポスターに起用されるなんて、ビックリ…。晴れて写真家デビューしました! 健さんが被写体なので撮影中は、シャッターを切る手がもう止まらず。カメラマンさんの気持ちが分かった気がします(笑)。

――大学時代、写真部で街に出かけて写真を撮り歩く藤代と春のキラキラした時間は、とてもすてきで眩しい時間に映りました。佐藤さんの役者としてすばらしい所を発見できる現場でしたか。

それはもちろんです。健さんのお芝居を盗んで帰ろうと思って現場にいたんですけど、頭の回転の速さをお芝居にフル活用されていて。真似できるものではなかったです(笑)。私がお芝居をしやすいように藤代として優しく接して下さいますし、スタッフさんとたくさんコミュニケーションを取られていて、本当に見習いたい所ばかり。そんな健さんですけど、唯一、フィルムカメラのピント合わせだけは、下手っぴで(笑)。私がピント合わせを手伝いました。

――何でもスマートにできそうなのに…意外ですね(笑)。

そうなんですよ。でも、もしかしたら、わざとだったのかも…。写真を始めたばかりの私のためにわざとピントをズラしてくれた可能性もありますよね?  健さん、苦手なことなんて、なさそうですから(笑)。

――確かに(笑)。藤代の婚約者・弥生を演じた長澤まさみさんの印象はいかがでしたか。

お会いできるタイミングがあった時、長澤さんから「七菜ちゃん、これあげる」って大量の酵素玄米をいただいて。もう毎日、それで健康を維持していました。それは、糖質を摂取せずに食物繊維は摂取できる飲むタイプのもの。体を気遣って下さるなんて、細かい気配りがすごい方だなと思いました。

長澤さんと健さんという尊敬するおふたりと同じ作品に出演できる日が来るなんて思ってもいなかったので、本当に気が引き締まりました。

■“永遠”について考えて眠れなくなることが時々ある

――この作品の登場人物たちは、恋に悩み、永遠だと思っていた愛をいつか失うことを恐れているようにも見えました。恋でなくても、「こんな幸せな瞬間が永遠に続くのかな」と思う気持ちは、理解できますか?

その気持ち、ものすごく共感できます。お仕事で「今日すごく楽しかったな」と思えることもありますけど、寝る前に「これはいつまで続くんだろう」って考えて眠れなくなることが時々あるんです。最終的には「地球は一体なぜ…」とか、いろんな考えがとめどなくグルグルしてしまうことも(笑)。

今作の原作者でもある川村元気さんの作品に、「ペンを買ったその日から、そのペンのインクがなくなることを想像しながら書く」というような一節があって。私は、まさにその性格だなって(笑)。

――物事の終わりを迎える瞬間を想像するなんて、想像力が豊かすぎます(笑)。

そうですか? いつかこのペンでは、書けなくなるんだなって。それを勝手に想像して、ちょっと寂しくなったりして…(笑)。その考え方は、この作品の登場人物たちとも共通するような気がして、ふと思い出したんです。

みんなが真剣に恋愛とはどのようなものか考える姿が描かれるので、自分はどう思ったのか、映画を観た後にものすごく語り合える作品だと思います。愛を終わらせない方法を探して、答えは見つかったのか…。レビューが今から楽しみです(笑)。

■“伊予田春”という役の感覚や心情が自分のものだという手応えがあった

――劇中では1人旅をする役でしたが、森さんは1人旅の経験は?

1人で近場のラーメン屋さんや焼肉さんに行ったり、1人カラオケに行ったりとか。1人行動は、好きなんですけど、遠方への1人旅はないかもしれません。今度、1人で仙台に行ってみたいです。1度行った時、ご飯がものすごく美味しかったので、美味しいものを食べる旅をしたいです。

海外だったら、砂漠の神秘的な光景が見たいです。それこそカメラに納めたいですね。でも、1人で行くのは、ハードルが高いので、お友達としっかり計画して行ったほうがよさそうかも。

――旅って、リセットして癒されたいとか、目的は人それぞれですよね。旅の目的は?

私にとって旅とは、新しい風景や体験との出会いが楽しみ。移動中は眠っちゃうかもしれないですけど、初めて訪れる場所って、街並みを歩いていても、飽きちゃったなと思うことがないじゃないですか。旅には刺激や、ワクワクを求めるかもしれないです。

――今回、カメラでいろんな風景を切り取る役を演じましたが、森さんが役者として、これから見たい景色は、どんなものですか?

今作で海外ロケに行って、本物の景色を見て思ったんです。そこにいる自分が、本物の春になれていて。役の感覚や心情が自分のものだという手応えがあって、リアルだったんですよね。

その場所に思い入れがある春として見たあの壮大な風景の数々は、本当に特別なものでした。全部本物のようなお芝居ができるように、そんな景色をこれからいっぱい見て行きたいです。

◆取材・文/福田恵子

森七菜/撮影/梁瀬玉実