賃貸マンションを開発する明豊エンタープライズ <8927> の業績成長が続いている。今7月期の第2四半期累計の連結営業利益は上期が13.7億円(前年同期は0.9億円)に大きく拡大。通期は16.6億円(前期比27%増)を見通す。外国人客の取り込みや、工事の内製化による収益改善を進める同社の矢吹満会長に今後の戦略を聞いた。

 ――足元の業績が好調に推移している。

 「主力の賃貸マンション事業は、投資用賃貸物件『エルファーロ』シリーズの引き渡しが順調なことに加え、開発事業用地の売却なども上期の収益を押し上げた」

 「従来は下期に売上が偏重する傾向があったが、仕入れ時期の平準化や販路拡大といった施策を通して物件を前倒しで提供できる体制を構築した。資金繰りの安定化につながっており、今後も特定の時期に偏らないように売上を計上していければと考えている」

 ――不動産分譲と賃貸の事業環境をどう見通すか。

 「主戦場である首都圏では、特に東京23区への人口流入が復調している。このため賃貸の需要は今後も強いだろう。その旺盛なニーズが収益用不動産の運用者にハイリターンをもたらすことで、当社の不動産販売が拡大する好循環を生み出している」

 「中でも注力している東京の城南(港区など)・城西(新宿区など)エリアは生活や交通の利便性が高く、人がより集まりやすい。マンション賃料も相応に上昇しており、売価への転嫁が可能だ。新築分譲の事業は安定して伸びていくことが予想される」

 ――外国人も日本の不動産投資への関心を高めている。

 「前期には、不動産分譲のうち外国人向けの販売比率が販売金額ベースで40%を占めた。さらに、3月にはシンガポールに初進出し、アジア圏の販売ルート拡大にも取り組んでいる。機関投資家や個人投資家に対して、個別商談会を実施し、具体的な商談に進むケースも出ている。今後もアジアを中心に海外の顧客開拓を強化する。同国のほか、台湾など日本への投資意欲が強い地域で不動産仲介業者とのつながりを深め、中国語をはじめとする多言語対応も広げていく」

 「外国人にとっては、低金利の日本での調達コストは小さく、円安も相まって賃貸物件への投資魅力は高い。日銀が金融政策を見直す可能性はあるが、多少の利上げがあっても相対的にみて金利が十分に低い状況が続くだろう。城南・城西エリアは外国人投資家の間でも人気があり、事業環境に左右されにくい底堅い成長が期待できる」

 ――2022年には建設会社の協栄組、明豊エンジニアリングを傘下に加え、グループの業容が拡大した。

 「分譲マンションの建設や大規模工事の実績が豊富な協栄組を買収したことで、グループ内で工事を請け負えるようになった。工事の内製化により柔軟に不動産事業を展開できる上、開発から施工までを垂直統合にすることでコストダウンが見込まれる」

 ――IoT(モノのインターネット)機器や顔認証プラットフォームなど、デジタルの導入にも積極的だ。

 「IT設備を充実させることは、賃料アップを通じてオーナーの収益向上に寄与する。また、物件の差別化にもつながる。エルファーロブランドではスマートホーム機器を試験導入し、4月竣工(しゅんこう)予定の『エルファーロ用賀』に顔認証システムを完備する。また、社内業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)にも着手している」

 ――いわゆる建設業界の「24年問題」の対策は?

 「4月からの建設業・運送業の労働時間の上限規制が強化されることで、人件費が上昇し、工期も長くなるだろう。ただ、こうした影響は事業計画に織り込んである。売価への転嫁で対応する予定だ」